Dark blueの絵日記

ハロプロ関連の記事が主。後は将棋と猫を少々

りんご 六

「葉月」


ベッドの中でりんごは明の胸に顔を寄せてつぶやいた。


「この部屋にりんご以外の女の人が泊まった事はあるの?


少し間を置いて明は答えた。

「・・・もちろん、無いよ」

「明さんがこれまでどんな女の人とお付き合いしたか、
りんごは気にしないよ。当然の事だもの」

明はうなずきながら、
「つき合った事のある女の子をこの部屋に泊めた事は無いよ」


明の顔をちらっと覗きながら、
「葉月さんは?」


明は、虚をつかれたようにりんごを見ると、

「葉月は妹だよ。付き合ってきた女の子達とは違う」

「泊ったのね」


「葉月が大学に通ってた頃はよくここに遊びに来てたよ。
あれは葉月が18歳ぐらいの頃かな、葉月はゲームが好きで、
二人で対戦ゲームしてて、葉月は強くてね。つい熱くなって
遅くまでやってる内に電車がなくなって、じゃあ泊まっていけよ。
となってそれから何度か泊まっていたよ」


「そうなんだ」


「その時は私は居間のソファーで寝てたのだけど、ある時、
寒い冬の時期だったかな、
葉月が一人だと怖いから一緒の部屋で休んでくれと頼まれたんだ」

りんごはふんふんと聞いている。


「それで、葉月をベッドに寝かせて自分は下で毛布を被って寝たけど、
ちょっと寒かったな。
夜中に葉月が起き出したので目が覚めたけど、
トイレに行ったみたいだけど、帰って来たらベッドに入らないで、
私の毛布にもぐり込んで来たんだ。その時は寝たふりをしたけどね」



「朝、起きたらもう葉月は先に起きていて朝飯を作ってくれていた。
飯を食いながら、なぜベッドで寝なかったんだと聞いたら、
あの時起きてたのー!?って口をとんがらして、
だって、寒かったんだもん。って」


りんごは笑いながら、

「カワイイー。一緒に寝ると暖かいもんね」


「あの晩はとっても寒かったしね」


「それだけかしら・・・」


明は息をつくと、

「葉月の事を女性として意識しないと言えば、嘘になるかな。
生まれた時から兄妹として過ごしてきたらそんな事は
まったく無いと言えるのだけど、葉月が来たのは12歳の頃だし、
その頃は私は家を出て独立してたし、
葉月と同居する事は無かったしね」

「そうね」


「でも葉月は妹に違いないし、それだけの分別はあるつもりだよ。
ところで、なんでそんな事を聞くの?」


「だって、葉月さんは明さんのたった一人の大切な妹さんだもの、
とても興味があるし。なんだか葉月さんの事を聞けば聞くほど
好きになって来たわ」

「よかった。誰でも葉月の事を好きになるよ」


「わたし、ひとりっ子でしょ。子供の頃はいつも寂しい思いをしてきたの。
頼りになるお兄ちゃんや、可愛い妹を欲しかったの」


明はそっとりんごを抱きしめた。



葉月  終り