Dark blueの絵日記

ハロプロ関連の記事が主。後は将棋と猫を少々

りんご 九

卒業。

 

Candy-Candy春ツアーは千葉県文化会館 大ホールで始まった。
最初のMCで、リーダーのとしこが、
「元宮りんごより大事なお知らせがあります」

会場は静まりかえる。

りんごは少しの間うつむいていたが、
「わたし!元宮りんごは・・・」
全員がりんごに注目した。

「春ツアーをもって卒業します」

大きなどよめきが起こり、
辞めないでー!と悲鳴にも似た叫び声が上がる。

Candy=Candyは卒業しますが、りんごはアイドルは

辞めません。ソロとして再出発をします。ツアーは

始まったばかりです。最終日まで、Candy=Candy

りんごの応援をお願いします」

りんごは深々と頭を下げた。

ファンの拍手と歓声が沸き上がった。

 

春ツアーの前に行われるハロコンの九州公演が終わり、
りんごはいつものように、としこに声をかけ、メンバーにも
軽く頭を下げてからキャリーバックを引いて先に会場を後にした。

近くの噴水がある公園を抜けて、出口付近のパーキングの前で

待っているとすぐに見なれたレクサスが出て来た。
乗り込むと車は夜の博多の街を走り出した。

明のマンション着いて一息入れる。
まだライブの高ぶりが体に残っている。
それでもこの部屋に帰ると、そう。帰って来ると、
落ち着いた気分になれる。

まず温まるために、明と一緒にお風呂に入る。
体を洗い、明といちゃつきながら、ゆったりと湯船に浸かる。
ここのバスは広めの作りで余裕で二人で入れる。

りんごは、お風呂から出ると心身ともにリラックス出来た。
ソファーに腰かけ、今日のライブの様子を話す。
目を閉じると華やかな舞台が浮かび上がってくる。

明が肩に手を掛けたので、りんごは、はっと目を覚ました。
いつの間にか眠ってしまっていた。

明は笑いながら、
「もう休んだ方がいいよ」

いつものように明とベッドに入る。
優しく髪の毛を撫でられているうちに眠りに落ちる。

 

翌朝、ガチャリと玄関のドアを開ける音に明は眼を

覚ました。まだ少し暗い。目をこすりながら起き上がると

窓から外を見てみる。

りんごがマンションから出てきて走って行くのが見えた。

明が朝食を作っていると、玄関のドアを閉める音が聞こえた、
りんごが帰って来たようだ。

朝食が出来上がったが、りんごはダイニングに入って来ない。
廊下の方へ様子を見に行くと、
りんごが廊下に座り込んでまるでヨガみたいにあぐらを

かいている。瞑想に入っているようだ。

 

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Candy=Candyの動画にりんごが朝はランニングをした後に
瞑想をしていると話していた事を思い出した。

しばらくその様子を見ていると、朝の光に、キラリと

光るものがりんごの頬を流れたように見えた。


朝食は、全粒粉のトーストと野菜サラダにスープにした。

りんごが手を止めてじっと下を向いてるの見て、
「瞑想してる時になぜ泣いたのか聞いてもいい?」

りんごは顔を上げて、
「泣いてなんかない」

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それ以上は聞かないでスープを口にしたら、

「春ツアー後に卒業すると決めたの」
ぽつりと言った。

明は立ち上がると、りんごの後ろにまわり、
りんごの首に優しく腕をまきつけると、

「卒業をもっと先に延ばしてもいいんだよ」

りんごは振り返ると、
「じゃあ後五年待ってくれる?」

 

明は口を開けたが、言葉がすぐに出てこない。

「明さんの本当の気持ちを言って」

「・・・五年は、待てない」

アハハハとりんごは声を出して笑った。

りんごは立ち上がると、明の胸に顔をうずめた。
「もう後戻りはしないわ」