Dark blueの絵日記

ハロプロ関連の記事が主。後は将棋と猫を少々

江戸っ子の蕎麦の食べ方。

人生最後の蕎麦。

 

江戸時代の食通が臨終の床で漏らした蕎麦の食べ方。

「あぁ、一度でいいから蕎麦におつゆをたっぷりつけて

食べたかったなあ~」

 

それを聞いた臨終の床の側に控えていたおせっかいな

ある江戸っ子が、よし!と手を打つと、

「わかりやした!あと小半時(30分)ほど三途の川を

渡るのを堪えてくだせーーーー!」

 

とばかり外に飛び出すと近くの蕎麦屋へ息せき切って

飛び込むと、店主にわけを話して特急で蕎麦を作って

貰ったいと頼むと、まわりで蕎麦をたぐっていた客達が

いっせいに振り向いて注目する。

 

店主がどなたの話ですか?と問うと、その江戸っ子が

名前を言うと、それは江戸の粋な蕎麦の食通では

三本の指に入る有名な江戸っ子だと知れる。

 

まわりの蕎麦食いの江戸っ子達も一斉におおおーー!

歓声を上げる。                          

 

それで特急で作られた蕎麦とたっぷりのおつゆを

おかもちに入れて臨終の際の江戸っ子へ所へ

息せき切って戻るとさっそく蕎麦とおつゆを並べて

「さあ!この蕎麦をおつゆをたっぷりつけて食べて

くだせーーーーーーー!」

 

すると、伝説の食通の江戸っ子は閉じていた目を開けて

ちらりと蕎麦に目をやると、しばし瞑目していたが

床からゆるゆると手を出すとその手をゆるやかに振ると

苦しい息の下から、

 

「老人の戯れ言にお心頂き大変有難いのですが、

それはお断り申し上げる。この蕎麦は頂きかねる」

「はあぁー?それは何ゆえですか?」

 

「その蕎麦屋にはお客はたくさん居ましたか、それと

わちきの名前は出しましたか?」

「はい。たくさんの客達はお名前を聞いて手を打って喜んで

頂きました」

 

食通の江戸っ子は無念そうに首を振ると、

「それはいけない。仮に、もしですよ、わちきが大喜びで

この蕎麦をたっぷりのおつゆをつけてむしゃぶるように

食い散らかして満足して息を引き取ったとしたら、

あなたは、それを黙っていられないに違いない。

『あの野郎は、粋な食通と言われていても臨終の床では

意地汚く蕎麦にたっぷりのつゆをつけて食った』と、

言いふらすに違いない。

狂歌にも歌われて後世にも残る笑い者になるに違いない。

そうならればわちきは、死んでも死にきれない」

 

おせっかいな江戸っ子は大慌てで手を大業に振ると、

「とんでも無い!!わっちは江戸っ子ですよ!生涯誓って

口が裂けても黙りとおします!」

 

「いやいや、人と言うものは何事も黙ってはいられない。

特に口さがない江戸っ子は口に戸を立てられない。

違いますか?」

「・・・・・」

 

そうして、食通の江戸っ子は粋を守り通して目を閉じると、

息を引き取って行ったのである。

 

終わり。

 

 

 

(ちなみに、この項の話しは自分のフィクションです。

たぶんこんな事があったかと想像したものです)