Dark blueの絵日記

ハロプロ関連の記事が主。後は将棋と猫を少々

りんご 八

りんご 面会


イベントの休憩でりんごは皆より遅れて楽屋に入った。
メンバーのゆかりが美加を膝に乗せていちゃついてる。



りんごが前を通りかかった時、ゆかりが言った、
「ごりん、男の人ってどんな感じなの?」


「ゆかり!」
リーダーのとしこがたしなめるように声を上げた。


りんごは立ち止まったが、振り返り、
笑顔でゆかりを見ると、
「とても強くて、でもとても優しい感じ」


ゆかりはうなづいて、
「そうなんだ」


としこは立って、歩いて行くりんごに追いついて
腕を取って一緒に歩くと、
「ちょっとお化粧直しに行こう」
そう言うと、二人で洗面所に入った。


「ゆかりはあういう子だけど、悪気は無いのよ、
後で叱っておくから」
「叱らないで。私が悪いのだから」


りんごと明が付き合ってる事は、他のメンバーには言ってないが、
グループのメンバー同士は家族よりも顔を合わす事が多い。
だから、りんごが九州のライブやイベントが終わると
いそいそと別行動を取るのを何度も見ていれば、
誰か良い人と会ってるのだと勘ぐるだろう。


りんごは鏡を見ながら、
「来週の土日のどちらか、午後からどうしても外せない
用事があるの」

「何かあるの?」


「彼がこちらへ来るの。そして私の実家に二人で
行く事になってるの」
「そう」


としこはすぐにその意味がわかった。

「日曜は撮影があるから、一日中外せないけど、
土曜日のお仕事は、午前中に終わるわ」
りんごはうなづくと、
「ありがとう。じゃあ来週の土曜日ね」


二人が出ていくと、個室のドアが開いて
メンバーのみゆきが出て来た。
水を出して手を洗いながら、
「いよいよご両親とご対面か」
とつぶやく。


雑誌のインタビューが昼過ぎに終わり、
りんごはビルを出て駐車場へまわり、
止まっていた白のレクサスの助手席に乗り込む。


彼が交差点で前車に続いて発進させたので、
りんごは彼の腕に手をやって、
「赤信号よ!」 彼はブレーキを踏んだ。


「ごめん」頭に手をやる。
「緊張してるんだ。いつもは慎重な運転なのに」


レクサスは湾岸道路に入る。


「ねえ、お父さんにあれを言うの?」
「あれって?」
「ドラマみたいに、りんごを、僕にくださいって」


明はりんごを見ると、
「言わない!」

りんごは笑って彼に体を寄せる。
明はりんごの肩に片腕をまわした。


「お父さんって、趣味とか今興味を持ってる事って
あるかな」
りんごはちょっと考えて、
「将棋かな。以前はよくテレビの将棋の番組を観てたわ」
「へぇー、お強いの?」


「強いのかな、有段者って言ってたもん」
「なるほどね。それは使えるな」
「使えるってなに?」
「後で教えるよ」


りんごの実家にレクサスが到着すると、
りんごは声を掛けて手を伸ばし彼のネクタイを直して上げる。
明はパリッとしたフォーマルのスーツを着けている。


車から降りる。
「大丈夫?緊張してない?」
「ここまで来たら緊張なんてしてられないよ。
もし、りんごが俺の大切なひとり娘だとしたら」

「もし明さんが私の、怖いパパだとしたら?」


「そいつが、ニ十歳も年上の野郎で、大事な娘をものにした上で
ドヤ顔で、「お嬢さんを下さい」なんて抜かしたら、
家から叩き出すね」
「怖いのね」


「それが普通の父親の反応だね」


「でも、明さんには秘策がある?」
「その通り」


明は、居住まいを正してりんごの両親の前に正座した。
りんごは後ろで控えている。


しばらくお互い無言が続く。
その内りんごの父親がそわそわ仕出した時、
ふと見ると、父親の後ろの床の間に立派な将棋盤が
置いてあるのが見えた。


そこで明が口を開いた。


「今日は、この重大な局面を打開しに参りました」
父親は、顔を上げて明を見ると、
「ほお〜わしの玉を詰ましに来たと言うのか?」
「そうです。王手をかけに来ました」


「ふ〜ん。少しは指しそうだな」
横に座って居る母親に、将棋盤を持って来なさいと言う。


プロ棋士が使うような豪華な盤を前にして、
「では一局指してみようか」
「お願いいたします」


駒を並べながら、
「将棋を指すと相手の人となりがよく解ると言うからな」
明を見る顔に、
『俺に勝ったならりんごをやる』と書いてある。


それから、30分ほど対局が続いた。
父親の自信ありげな手付きでパチリと指した手に、
明は小考していたが、頭を下げると、
「負けました。いやーお強いですね」


「いやいや、そちらもお強い。危ういところだった」
と、上機嫌で言う。


そこで、
「お願いがあります」
「何だね」


「これからも将棋を教えて頂きたいのですが」


父親は何度もうなづくと、
「うんうん。もちろんいつでもお相手して差し上げる」
「ありがとうございます」


父親はりんごに、
「ほらほら、母さんの心づくしの料理を持ってきてあげなさい」
りんごは満面の笑みでうなづくと立ち上がった。



なごやかな食事が終わり、二人はりんごの部屋に下がった。



「ねえねえ、あれが秘策なの?」

「そうだよ」

「ただ父さんと将棋を指してただけに見えたけど」


「お父さん、結構お強いね。初段は楽にあるね。
でも、僕の方が強い。これでも学生時代に一時はプロを
目指してたからね。アマ5段だから」

「でも、初段のお父さんに負けた?」


「お父さんほどの強い人相手に、気づかれないように
気持ち良く勝たせるように、持って行くのに苦労したけどね」


「へぇええ、上手く負けて上げたんだ。
勝ってあんなにご機嫌なお父さんを久しぶり見たわ」


辺りが暗くなった頃、りんごと一緒に帰る事になり、
玄関先に見送りに来た両親に頭を下げた。
「美味しいをご料理を馳走様でした。ありがとうございました」


母親が、
「本当に泊っていけば良いのに。わざわざ九州から
お越しいただいてお疲れでしょうに」
父親もうんうんとうなづく。


「あのね、明さんはお仕事の関係の人に久しぶり
会うんですって」


レクサスに乗り込みドアを閉めるとエンジンを掛ける。
「お気づかいありがとう」
「どういたしまして」


「本当に母さんの言うように泊っていけばいいのに。
九州からずっと運転して来たのだから大丈夫?」


「いや、北九州から東京までフェリーに乗って来たから
疲れて無いよ。それに・・・」
「それに?」


レクサスを発進して道路に出す。


「それに、ご両親の家でりんごを抱くわけにはいかないし」


「そうね。って!それが目的で来たわけ、もお〜」
明は頭をかいた。


「あのね、メンバーの一人から聞かれたの」
「何て?」
「男の人に抱かれた感じは、どんなのか。って」


「で、何て答えたの?」
「男の人って、すごく強くて、でも優しくて
気持ち良い感じ。って」


「じゃあ早くホテルに帰って、気持ち良い事しよう」

「呆れた。わたし、降ろしてよ」


赤信号で止まると、明は思わずりんごの顔を見た。


りんごは笑って、
「嘘よ、うそうそ」
と言って、明の膝に手をやる。


青になって明はグイッとアクセルを踏んで
レクサスを発進させる。


しばらく走り、湾岸道路から見える夜景が素晴らしいので
助手席のりんごに声を掛けようとしたら、
りんごは首をもたげ眠っていた。


この年末の時期は、アイドルはライブやイベント、
握手会、次の公演のリハーサルなどで毎日のように
スケジュールが詰まり疲れているんだなと思う。


そっと片腕でりんごの肩を支えると
レクサスをゆっくりと走らせる。


終り。





りんご 1




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