Dark blueの絵日記

ハロプロ関連の記事が主。後は将棋と猫を少々

たんぽぽ

暖かくなったある春の日、さゆと愛の姉妹は、
二人だけでハイキングに行くことになった。
二人は朝早くからお弁当を作る、
さゆみは、ゆでたスパゲティを炒めながら、


「お姉ちゃん、そこの明太子取って〜」
美味しそうな明太子スパゲティが出来上がる。
「これで良しと。お姉ちゃん、オニギリは出来たの〜」


さゆは、タッパーにスパゲティーを詰め込む、
他のタッパーにも、カラアゲや卵焼きを詰める。
さゆと愛は、少し遠出だが電車に乗って山に向かう。


休日の暖かい日で賑わうハイキングコースを、
二人は山の上へと登って行った。
二人はしっかりと手を握り合って歩いて行く。
やがて、心地よい汗をかきながら山の頂上へ
たどり着いた。


お昼になり二人は山を下りながらお弁当を
食べる場所を探す。
少し林に入った誰もいない静かな場所に
腰を降ろして、さっそくお弁当にする。


「お姉ちゃん〜明太子スパゲティ美味しいよ!」


緑に囲まれた自然の中で食べるお弁当の美味しさを
十分に堪能して満足した二人は、体をぴったりと
寄せ合いながら食後のお茶を飲んだ。


さゆは愛の肩に頭を持たせかける。
愛はそんなさゆの肩に優しく腕をまわした。
しばらくひと休みした後、二人は辺りを散策する
ことにして、ゆっくりと歩き回る。
辺りには色んな花が咲き始め、蝶や虫も飛んでいる。


「あっお姉ちゃん〜綺麗な蝶々が飛んでるよ〜」
「さゆ、遠くへ行っちゃいけんよ」
「うん」


愛は、足元の可憐な白い花に目を奪われた。
しゃがみ込んで少しの間見つめていて、顔を
上げた。
ほんの十数秒ぐらいの間だった。
愛が辺りを見回すと、
さゆの姿が、かき消すように見えなくなっていた。


「さゆ・・・?」


辺りをぐるっと見回しても、さゆの姿は見えない。
不安で動悸が激しくなっていく。


さゆっ〜〜!!


大きな声を上げて妹の名を叫んでも、
返事は無かった。
全身凍りついたようになって、
去年の夏、突然さゆが姿を消した恐怖が
よみがえってくる。
前方に森が広がっている。
他は開けているので、さゆは森の中に入って行ったに
違いない。


さゆ〜〜〜!!!


愛は、大声でさゆを呼びながら、闇雲に森の中へと
駆け出して行った。



森の中をいくら捜してもさゆは見つからなかった。


疲れ果てて愛はその場に腰を落として座り込んだ。
小さい頃の、田舎のお婆ちゃんの話を思い出していた、


『子供たちだけで山に入ると、神隠に合うよ』
神隠って、なに?』
神隠というのは、子供が山で行方知れずになる
ことだよ。もう何人も消えてしまった子供を知ってるよ』


ふと、向こうから光る小さな虫のようなものが
飛んでくるのが見えた。
愛がよく見るとそれは、金色に光り、透明の羽根を
広げている。そしてそれは小さな人間の女の子に
見えた。


それは、絵本で見た妖精の姿に見えた。
それがいくつも辺りを飛んでいる。


「お姉ちゃん」


さゆの声がしてそっちを見ると、
さゆが向こうに見えた、体が金色に光り、背中には
銀色の大きな羽根がはえている。
愛は声を出そうとしたが、なぜかまったく声が出せない、


お姉ちゃん、私は行かなくてはいけないの。
今まで黙っていたけど、私は妖精なの。
お迎えが来て、私は戻らなくてはならないの
お姉ちゃん、さようなら


愛が必死に妹の名を呼ぼうとしても、声が出ない。
さゆは、背中の羽根を広げると宙にふわりと浮かぶと
す〜と飛んでいってしまう。


愛は、絞り出すように声を上げた。


「さゆっー!行かないで!!


愛は、自分の出した声で我にかえった。
辺りには何もいなかった。
夢を見ていたのかもしれない。


愛が立ち上がった時、何処かで声がした、
さゆの声だと思った、


「さゆ〜!!」


すると、返事が返ってきた、


「お姉ちゃん・・・」


さゆの姿が見えた、こちらへ駆けてくる。
愛はさゆが来ると、つかまえて抱きしめた、
思わず涙がこぼれ落ちる。


「さゆ!何処へ行ってたの!お姉ちゃん、
心配で心配でたまらなかったよ!」

「お姉ちゃん、ごめんなさい・・・」


その後、二人に難関が待ち受けていた、
二人は道に迷ってしまっていた。


森の中でどの方向へ行けば帰れるのか、まったく
わからなくなっていた。
そのうち、辺りが暗くなってくる。
もう夕方になっていた、夜になって森の中に
取り残される恐怖に愛は震えた。


「お姉ちゃん、待って!あの光る虫が呼んでる
みたいだよ、後をついて行こうよ」


見ると、確かになにか小さく光る虫のようなものが
飛んでいる。
蛍のようだが、春先に蛍がいるはずが無い。


愛は、半信半疑でさゆとその虫の後をついてしばらく
歩いて行くと、
やがて、見覚えのある道に出た。
山から下りて来た人たちが歩いてくる。


「ほら!あの光る虫が案内してくれたんだよ」
その光る虫は、道から少し外れた所に止まった。
さゆがその場所に行って見ると、そこには、


一輪のタンポポの花がぽつりと咲いていた。


その花を見た愛は、


「あの光る虫は、もしかしたらタンポポの妖精かも
しれないよ・・・」


帰りの電車の中で愛は、


「あれは、本当に妖精だったのかな、
妖精なんて絵本でしか見たことないけど」


するとさゆが、


「私はいつも妖精を見てるよ」
「ええ〜!ウソだよ〜?」
「ホントだよ。毎日、鏡の中に可愛い妖精が
映ってるのを見てるもん」
「・・・はいはい、さゆは可愛い妖精だったね〜」


愛はさゆの手を握りしめた。



        終わり