Dark blueの絵日記

ハロプロ関連の記事が主。後は将棋と猫を少々

ハロパネラ 朋子

吸血鬼ハロパネラ


朋子は紗友希と共に事務所へ向かっていた、遅れたのでタクシーに乗った。
「運転手さん急いでください」タクシーは速度を上げた、
前の車が遅いので運転手は焦り追い越そうと対向車線に入った時、
目の前にトラックが迫って来た。衝突の瞬間 朋子はとっさに
紗友希に覆いかぶさり庇った。


現場に到着した救急隊員が見たのは、トラックと電柱に挟まれ
原型をとどめないほどひしゃげたタクシーの姿だった。
運転手は 人間の形を成してない状態で、後部座席の二人は抱き合ったまま
車体に挟まれていた。隊員は首を振り
「レスキューを呼べ!俺達じゃあどうにもならない」


朋子は車体に挟まれて身動き出来ないが紗友希を見ると、
紗友希は鼻や口だけでなく目や耳からも出血していた。
朋子はなんとか紗友希の首に口を当てるとある事をした。
レスキューが到着して二人を救出するのに長い時間が 掛かった。
ようやく二人は病院に運ばれた。


運ばれて来た二人を診た医師は首を振った。脳挫傷全身骨折
すべての内臓が破裂し心肺停止で、手の施しようが無かった。
このまま遺体安置所に送られても不思議なかった。
翌朝、医者は耳を疑った。看護師が一人の意識が戻ったと 報告したのだ。
「馬鹿な!あんな状態で生きてるはずがない」



見に行くと本当に二人とも生きていた。まだ顔は青黒く腫れていたが
一人は声を掛けると返事をした。もう一人は意識は無いものの、脈があった。
一週間後、看護師が二人が退院したと報告した。
一人はまだ起き上がれないが、一人は歩いていると言う。
医師は信じられなかった。



「それが本当なら、あの二人の女の子は人間じゃない。化け物だ!
来た時はゾンビより酷い状態なのが、たった一週間で回復するなんてありえない」
二人は逃げるように退院して行ったと言う。
医師はある小説を思い出した。狼男の話で瀕死の状態の人間に
狼男は自分の血を輸血して蘇生させるのだ。



中世ならいざ知らずこの現代に、狼男とかドラキュラとかの妖怪が
存在するとは思えない、小説の上での話しでしかないはずだ。
二人の女の子の名前も住所も架空のもので素性はわからない。
ただ看護師はテレビで見た顔だという。 朋子は狼人間ではない。
しいて言えば吸血鬼なのかもしれない。


意識を取り戻した紗友希は側の 朋子に、「 朋子が私を助けてくれたのね」
「そうよ」 「私、死んでたの?」
「そうね。ほとんど死にかけてたわ。たとえ私の正体が知れても
紗友希を死なせない為に息のある内にあれしか方法が無かったの」
「どんな?」「首を触って」触ると傷があった。
「あなたの首を噛んだの」「私の血を吸ったの?」



朋子は首を振った、「逆よ。紗友希に私の血を吹き込んだの」
「その血が私を助けたの?」「そう。詳しくは言えないけど私の血があなたの
体の損傷を急激に回復させたの」 「そうなの。 朋子は一体何なの?」
朋子は微笑むと、 「私はハロパネラよ。言うなれば吸血鬼みたいなものね」


紗友希は首をかしげて、「じゃあ 朋子に噛まれた私も吸血鬼になるの?」
朋子は笑って「ならないわ。あなたをハロパネラにするにはもっと
エナジーを送り込まないといけないの。血だけではだめなの」
「そうか。質問していい?」「どうぞ」
「なぜ、ハロパネラがアイドルになったの」


「それはアイドルになりたい吸血鬼がいてもいいじゃない」
「そうなんだ。私の命を助けてくれて本当にありがとう」 朋子はうなずくと
「お願いだからこの事は誰にも言わないで」
「わかった。死んでも言わない」 朋子は笑って、
「紗友希はもう死なないわ」後に紗友希はその意味を知る事になる




ハロパネラ 朋子 凶器の自転車

朋子と紗友希が歩道を歩いていると、後ろからシャーッと
音を立ててスポーツタイプの自転車が迫って来た、
二人が避けると狭い歩道を自転車はすり抜けて行った、
触れるほどの近さだった、 前方を見ると親子連れが歩いていて、
紗友希が危ないと思った瞬間、自転車が子供に激しく接触した


4、5歳くらいの女の子が飛ばされて転倒した、自転車に乗っていた少年は
ちらっと後ろを見ただけで速度を上げて去って行った。
二人が女の子の側に駆け寄ると、女の子は顔面蒼白で、
すでに白目を剥いていた。頭を強打したに違いなかった。
若い母親は半狂乱であわてふためくだけだった、



朋子は女の子を膝に抱き起こしながら「紗友希!救急車呼んで」
何とか紗友希が携帯で救急に連絡して 朋子に近づくと、
朋子は女の子の額を手でさすっていた、側で母親が子供の名前を 泣き叫んでいた、
「紗友希、うるさいから母親をあっちへやって」
紗友希が母親を抱えて連れて行く


朋子が抱えた子供の額さすり続けているうちに、
遠くでサイレンの音が聞こえてくる、突然子供が泣き出した。
紗友希と母親が近くへ行くと、子供の顔に赤みが戻り泣き声を上げている。
泣き出したという事は元気を取り戻したという事だ。
二人は子供と母親を乗せた救急車を見送った。


紗友希は、また私の時のように 朋子はあの子供に何かをしたのだと思った。
「さて、ではあの逃げた男の子を捜しに行くわ」
「はああ?捜すってどうやって?もうどっかへ逃げて行って 捜しようがないわ」
「大丈夫、私は鼻が利くの。特にあの自転車の匂いを憶えてるわ」



紗友希は「ねえ、そういうのは警察にまかせて会社に行かないと」
「まだ時間はあるわ、私はね子供を轢いたとわかって逃げた人を許せないの。
紗友希は先に行ってて」紗友希は迷ったが、 朋子の後を追った。
「ねえあの子に何をしたの?額をさすってたけど、それで治したの?」


「何もしてないわ。ただ人間の治癒力を少し増幅して上げただけよ」
「そうなんだ」やがて住宅街の大きな屋敷の前で 朋子は止まった。
「あの自転車の匂いが強いわ。あの人はここの家の住人ね」
まるで警察犬並の鼻ねと紗友希はつぶやいた、「何か言った?」
あわてて紗友希は首を振った。



「隠れて!帰って来たわ」そっと見ると、あのスポーツタイプの
自転車に乗った少年がやって来た、しきりに辺りを窺いながら。
りっぱな門の前に止まると降りて中に入ろうとした時、
すうと 朋子は歩いて行った。「待ちなさい」ぎくっと少年は振り返った。
「あなた子供を轢いたでしょ」単刀直入に言う。


最初茫然としていた15歳くらいの少年は、すぐに「知らん!」
首を強く振った。「とぼけても無駄よ。私はちゃんと見てたのよ、
あなたが子供を轢くのを」少年の表情が変わる。
「うるさい!俺は知らない!」「あの子は死んでたかもしれないわ。
あなたは、まずあの親子に謝ることね」


少年はポケットから折りたたみ式のナイフを取り出した。
「うるさい!帰れ!行かないと怪我をするぞ!」
ギラリと光るナイフを振りかざす。その時紗友希は 朋子の瞳もギラリと
光ったような気がした。
「そうやって親や世間に甘え、言う事を聞かせるために暴力を振るって来たのね。
もう止める事ね」




少年が喚き声上げて 朋子にナイフを向けて襲い掛かろうとした瞬間、
紗友希は危ない!と思った。もちろん少年が。
まるで天から雷が落ちたような雷鳴が轟くと、
朋子が片手を前に突き出して、少年が数メートルは吹き飛ばされるのが見えた。
少年は門の前に叩きつけられると口から泡を吹いている。


朋子は近寄ると、その首に顔を寄せてある事をした。
「紗友希、呼び鈴を押して」震えていた紗友希は我に返って
言われるままに呼び鈴を押した。「では帰るわ」
「な、なな、何をしたの!あの人に」「落ち着きなさいよ。
すぐに家の人が出て来てあの人を入れるわ」
「だ、だから何をしたの!」


紗友希は振り返ると、少年がぴくりとも動かないが眼を開けてるのを見た。
足早に歩く 朋子を追いかける。紗友希を見た 朋子は、
「あの人にちょっとした毒を吹き込んでやったの」
「それであの人は死ぬの?」「死なないわ。でも全身が麻痺して
一月ほど まったく動けなくなるの」


「でも眼は見え耳は聞こえるけど、口はきけないわけ。
そうやって一ヶ月間すごせば、あの人もこれまでの自分を反省するのに
ちょうどいい時間よ。あの様子じゃこれまで散々悪い事をやってきたわけだから」
「そこまでしないで警察に言ったほうが」
「警察?そうね、それも方法だけど」


「警察で目撃者の私達は、長い時間調書を取られて、
あの人と親が呼び出され、でも未成年だから、あの女の子が どうなろうとも、
お金を賠償して結局は説諭されただけで 帰されるのよ。
そして反省も無く、また同じ事を繰り返すのよ。
その連鎖を断ち切らないと解決は出来ないわ」


「紗友希だって、宿題もしない、家の手伝いもしないで 遊んでばかりいて、
親に叱られたぐらいで反省して すぐに言う事を聴く様になると思う?」
「ならないと思う」 「でしょう。それと同じよ」
でも、宿題や手伝いをしないくらいで、一ヶ月も 全身が麻痺するのは、
わりに合わないと紗友希は思った。


会社戻り、椅子に腰掛けてレッスンの支度をしている 朋子に、
さっそくあかりがやって来て、 朋子の膝に乗って来る。
あかりは 朋子を振り返り、「ねえ、あかりの事好き?」 と聞いてくる。
朋子が無視してもしつこく何度も「あかりの事 好き?」と聞いてくる



それを見た紗友希は、 朋子はハロパネラなんだからしつこくすると、
あかりは怖いをお仕置きを受けるよと言いそうになったが、
朋子が睨んでるのに気がついてあわてて顔をそらした。
なおもあかりが、「あかりの事好き?」と聞くと、
朋子はあかりの顔をじっと見ると、



「大っ嫌い」と言った。それを聞いたあかりは、 ふぇえ〜ん、と泣き出した。
朋子は笑って、「ウソよ。あかりの 事は大好きよ」と言うと、
あかりはたちまち機嫌を直して わぁあ〜んと 朋子の首にしがみ付いた。
紗友希も 後ろから 「 朋子大好き!」と負けずにしがみ付いた。




ハロパネラの大敵虫歯菌
朋子は機嫌が悪かった。紗友希は恐る恐る「何かあったの?」
「あー!イライラする何もかもめちゃくちゃにしたい!」
「まさかこの大雪は 朋子のせい?」紗友希をじろりと見て
「あのね、私は人を支配出来るけど自然を支配する事は出来ないの!」
「そうよね、何が気に入らないの?」「歯が痛いの!」


「ハロパネラでも虫歯になるの?」
「ローズティー飲むだけの人もいるけど私は甘い物が好きなのよ」
「歯医者へ行けば」「医者は嫌いなの!」
そこへあかりが来て 朋子にじゃれついてくる、 やばいと紗友希が思った瞬間、
むっとした 朋子はあかりの首に、ではなく唇に口を押し当てた。


見ていた佳林がぅわーっと声を上げた。 朋子とあかりはしばらく
チューを続けた後ぶわっと離れた。するとぼーとしてたあかりは頬を押さえ、
「歯が痛い」と言い出す。 朋子はにんまりと笑い紗友希に小声で
「虫歯はうつるようね」「また何かやったの?」「何も」朋子はご機嫌だった。



ハロパネラ 朋子 不死身の紗友希

紗友希は学校に遅刻しそうになってバス停へ走っていた、
バスが見えて路地から道路に飛び出した時、運悪く走ってきた車に衝突した。
紗友希は2、30mは跳ね飛ばされて電柱に激突した。
後頭部がぐしゃりとつぶれ、背骨がボキッと折れる音がした。
紗友希は意識を失って倒れた。運転手が駆け寄る。


見ると紗友希は白目を剥き、ほとんど即死状態で運転手は蒼くなって
携帯で救急を呼ぼうとした、すると数秒後パチッと 紗友希は目を開けた。
「大丈夫です」と言って紗友希はバス停に走った。
運転手はあっけに取られて首をひねった、 死人が生き返ったみたいだった。



学校が終わり、イベントに参加した紗友希は 朋子を呼び、
朝の出来事を話した。頭を激しく打ち、背骨が折れて痛みで
失神したのに数秒でたちまち治ってしまったが不思議だった。
「それはこの前の事故で私の血を紗友希に入れた結果、
紗友希は不死身になったようね」と 朋子。


「どういう事なの?」「私の血が紗友希の怪我を数秒で治して しまうのよ」
それを聞いた紗友希はなんとなく納得した、
「手を出して」
紗友希が手を出すと 朋子は紗友希の小指を
力を込めてグイっと捻じ曲げた、ボキッと小指が折れた。
「ぅぎゃあああああああああ!!」と紗友希は悲鳴を上げた。


朋子は紗友希にかまわず、「1、2、3」と数えた。 すると
「あっ治った!」たちまち小指の骨折は完治した。
「ふ〜ん指が折れたぐらいだと 三秒で治るのね。
じゃあ、首が折れたら何秒で治るのかな」 と首に手を掛けてくる、
「止めて!!怖いわ〜!って、 という事は私はずっと不死身なの?」
「それはわからないわ」



「やがて私の血の効力も失われて紗友希は普通の女の子に 戻るかもしれないわ。
不死身だからって無茶をしない事ね」
「わかった。でもそうすると 朋子も不死身って事になるわね。
いったい 朋子は今何歳なの?」
「そうね。私は西暦で言うと、237年生まれなの」
「237年?」
「そうよ、だから今年2014年だから、私は1777歳って事になるわね」
「はぁあああああああ?!、せん、千七百七十七歳なのお〜〜」


「紗友希は、卑弥呼って知ってるでしょ、日本史で習ったでしょ」
「まさか、 朋子は卑弥呼だなんて言うの?!」
「残念ながら違うわ。でも卑弥呼は私の伯母なの。私は卑弥呼
姪になるの。台模(とも)という名前よ。卑弥呼の後を継いで
邪馬台国の女王になったの」
「へぇえええ、あれ?私は歴史は好きだけど、邪馬台国卑弥呼の後の女王は、
確か、台与(とよ)って言うんじゃなかった?」


「それは1800年近く昔だから、いつのまにか間違って伝わったのよ」
「でも学校で習ったのは・・・」
「はぁあああ、なんか文句があるのぉお?!」
「いやいやいや、無いです!と、台模ですね」
「もちろんよ」



「でも、その邪馬台国の女王の・・」
「台模」
「その台模が、なんで吸血鬼になったわけ?」
「それは、未来からタイムマシーンでやって来た吸血鬼、ハロパネラ達
によってエナジーを吹き込まれて、その時18歳の私は
不老不死のハロパネラとなったわけなの。わかる?」


「う、うん、なんとなくわかるような・・・」
「だから私は、実際の年齢は1777歳だけど体は18歳で止まってしまって、
永久に18歳のままなのよ」
「うらやましい」


「ただ、私は一所に長く居れないの。長くて最大10年ぐらいね」
「どうして?」
「考えてもごらんなさいよ、私は永久に18歳のままなのよ。
同じ18歳の友達が出来たとしても、10年立てばその人は28歳。
20年立ても38歳になってしまうのよ。でも私は18歳ままだとしたら
人間として疑いの目でみられるわ」


「それもそうね」
「だから、5年から10年立てばその土地から何処か遠くへ離れなければ
いけないの。その内当時の日本には居場所が無くなって外国へ行くはめに
なったわ」
「へぇえ、その昔の事だよね?」
「そうよ。15世紀のヨーロッパよ、今から6百年ぐらい前ね」


「へええ、でもどうやって行ったの?飛行機なんて無いし
船で行ったの?」
「当時の船じゃ行けるわけないわ。未来人のハロパネラの
タイムマシーン兼UFOに乗ってけば数時間で着くわ」
「そうなんだぁ」
「色々な所へ行ったな、特にフランスとイングランド
百年戦争の当時のフランスは思い出深いわ」


百年戦争のフランスって、まさか、 朋子は実は
ジャンヌ・ダルクって言わないよね・・・」


「そうよ。私がジャンヌ・ダルクよ」


「へぇええええええええ!?やっぱり!」
「でも、正確に言うとジャンヌが死んだ後、
私がジャンヌになったのよ」
「ジャンヌが死んだ後に!火刑台で死んだ後ね、それなら 朋子は
ジジっていう女の子の事を知ってるでしょう!」


「違うわ。そのジジという子ね。それは後で説明するわね。
誰にも知られてないけど、実はジャンヌは
あのオルレアンの戦いで戦死したの。
その時戦場に偶然通りかかった私がジャンヌの最後を看取ったの」


「その時ジャンヌが、いまわの際に私に後を託したの。
それで私がジャンヌ・T・ダルクとなって、後はフランス軍
先頭に立ってイングランド軍を破ったの」
「そのTっていうのは何?」
「Jehanne ・Tomo・Darcと名乗ったの」
「なるほど・・・でも、最後はジャンヌはイングランド
捕らえられて火あぶりなって死んだ、あっ 朋子は不死身だ」


「もちろん私は、黒こげになったくらいじゃ死なないわ。
後で埋葬されて墓地に埋められて棺の中で復活したけど、
そこから抜け出すのが大変だったのよ」
「そうだったの。それで、ジジの事は?」


「あの女の子、ジジと呼ばれてる子の事は、
私が生き返って、ただのtomoに戻った時に、ある街で
私にとてもよく似た子がいたの。そしてオルレアンで戦死した
ジャンヌの兄弟達も居たのよ。確かに兄弟達とそのジジと言われる
女の子にこの国を託して、私はその街を離れたの」


「やはり! 朋子がジャンヌの亡霊として伝説が残ったのね!」
「そうね。私は死なないから亡霊ではないけど、火刑台でジャンヌを
知っている人から見れば私は亡霊なのかもしれないわ」
「 朋子はやっぱりジャンヌだったのね」
「あのね。言っとくけどあの女の子はジジって名前じゃなかったわ」
「ジジじゃないの?」


「そうよ。あの子はYoukaと名乗ったわ」
「Youka・・・」
「だからあの子はジャンヌに似てるのではなく、私に似てたのよ」
「そしたら、ジジという女の子は何処に行ったの?」
「それはもうひとつのジャンヌの伝説だったかもしれないわ」




ハロパネラ 朋子 ダイエット


遥が紗友希に泣きながら訴えた、
「鈴木さんが辞めさせられるの」
「ええ?!どうしたの」
「マネージャーさんとリーダーの話を聴いてしまったの」



 

「とにかく鈴木をなんとかしろ!」
「なんとかしろっていうのは」
「アイドルとして限度を超えてる。振り付けの先生もあれではとても
踊れる体では無いと言ってる」

「技術的な事では無くて、痩せろと」
「そうだ。端的に言えば減量しない限りはアイドルとしては失格だ」
「そうなんですか・・」
「一ヶ月の猶予を与える。つまり休養するという事だ。
一ヶ月しても成果が出ないなら卒業させる」
「成果とは?」
「十キロの減量だ。それが出来ないならば卒業させる」
「一ヶ月で十キロ痩せろって無茶なの〜!」


工藤遥が、
「私、鈴木さんが好きよ。こんな事で鈴木さんが辞めてしまったら辛いわ」
「わかった。私にまかせてよ。鈴木さんを辞めさせないように出来るから」
「ええ、本当に?」



紗友希は 朋子に相談した。
「あの鈴木香音さんね、確かにポッチャリというには
限度を超えてるわね」
「だから 朋子になんとかして欲しいの。
例の魔法でちょいちょいと痩せさせる事が出来るでしょ」
「魔法って私は生田さんじゃないんだから」
「お願い! 遥のためにも鈴木さんを痩せさせて」


「あのね、若い女の子が急激に肥るのは言うなれば心の病なの、
ただ減量するには2、3日絶食すればいいけど、
それだけじゃ 食事を元に戻せばすぐにリバウンドして
前より体重は増えるばかりなのよ。まず心の病を治して根本的にやらないと」
「心の病って?」
「色々考えられるわね」


「ストレス、色々な悩みなんかが原因ね。一番多いのは、 失恋かしら」
「ふ〜ん、でも恋愛は禁止だけど」
「だから悩みが深いわけ」
「私も鈴木さん好きだな、お願い!なんとか鈴木さんを痩せさせて!」
「考えてみるけど」


マネージャーがリーダーを呼び出して、
「あの福田をなんとかしろ!」


「なんですか?」
「アイドルとして限界を超えてる。
ダンスの先生もあれではまともに踊れないと言ってる。
このままではアイドルとして失格だ」
「どうしろと言うんですか」
「とにかく、一ヶ月休養させて成果が出ないなら卒業させる」
「成果というのは?」
「十キロの減量だ」
「そんな無茶です!出来るはず無いです!」



「かのんちゃんは失恋してからやけ食いして肥りだしたんです」
「なんだと!何処の男だ!」
「相手はハロメンなんです」
「あぁなるほどね」
「一ヶ月で十キロの減量なんて到底無理です!」
「とにかく減量出来なければ卒業だ。わかってるね」
リーダーはマネが行った後、
食べていた弁当のから揚げを掴むと壁にビシャッ!と投げつけた。



朋子は整体師兼吸血鬼の李純に鈴木さんの件を依頼する事にした。
李純は整体の技術を応用してダイエットに活用してると 聞いた事がある。
しかし、李純については少し問題があって、 彼女は女の子しか興味が無い上に、
ドSなのだ。 まあ、かのんは李純のタイプではないから心配は無いはずだ



李純は話を聞くと、
「一ヶ月で十キロ減?大丈夫私にまかせない」
と二つ返事で引き受けた。
「そのかわりリーダーを紹介してね」
李純に純な由加を紹介するのは気が引ける、
「その佳林はどお?」
「あんな小娘に興味は無いわ」 
「そうなの、 由加の事は考えとくわ」


イベントが終わり楽屋に戻った花音は、さっそく差し入れのケーキを
むさぼるように食べ始め、コーラをラッパ飲みする。
他のメンバーはそんな花音を遠巻きにしていた。
「かのんちゃんお話があるの」
彩花がそう言うと他のメンバーは部屋を出て行った。
「話ってなによ」
「マネージャーさんに言われたわ」




「はぁ?何を言われたのよ、どうせろくでもない事だろうけど」
「かのんちゃん!お願いだから私の言う事を聞いて欲しいの。
明日からかのちゃんを一ヶ月休養させると決まったみたいなの、
だから私もメンバーも協力するから、ダイエットを考えて欲しいの、お願い」
「上等じゃない!首にするならすればいいのよ!」


「かのんちゃん自棄にならないで、あの人の事は誤解よ、
あの人はそんな人じゃないわ」
「私を嫌いになったとはっきり言われたのよ!」
「それが誤解だと言うの。菅谷さんは、あっ!」
花音はうっかり口をすべらした彩花をにらみつけた。
「その、あの人はかのんちゃん嫌いだなんて言わないと思うの」

花音はそれに答えないで、
袋から肉まんを取り出すと両手に持って、かぶりついた、
「肥ってやる、もっと肥ってやる・・」


彩花が泣きながら部屋を出ると芽実が声を掛けてきた



「福田さん本当に辞めさせられるのですか」
彩花は涙を拭くと うなずいた。
「少し肥ったぐらいで辞めさせるなんて絶対嫌です!
福田さんが辞めさせられたら私も辞めます!」


「めいめい、ありがとう。かのんちゃんは絶対辞めないわ。
明日から一ヶ月かのんちゃんはいないけど、
それ間私達が頑張って協力しようね」



問題は、鈴木 香音がすんなり言う事を聴いてくれるかどうかで、
ダイエットなんかする気はないと断られるかもしれない。
「かまわないから、強引に車に引っ張り込んで私の所に
連れ込めばいいわ」という李純に、
「それじゃ誘拐よ、大騒ぎになればやっかいな事になるわ」


「大丈夫よ。一ヶ月間休養させるんだから、
いなくなっても誰も心配はしないわ。家族やメンバーには
朋子が適当に言えばいいわ」
「それもそうね。リーダーから家族に心配するなと伝えるように言うわ」
ひとつ心配なのは李純は 朋子のユニットのメンバー以外は、
あまりハロメンを知らない事だった。


李純は、事務所の近くで車を止めてお目当てのメンバーを待ち伏せた。
お目当ての女の子を見つけて運転手に車を近づけさせる。
李純はその女の子に声を掛けた。
ハロプロのかのんちゃんね。お母さんが交通事故にあって
入院したそうよ。車に乗りなさい、病院まで送るわ」



「交通事故って何時の事よ」
「その、30分程前だそうよ」
かのんは鼻で笑って、
「騙されないわ、ついさっきママと携帯で話したばかりなんだから」
そう言って行こうとする、
「こうなったら、行って捕まえるのよ!」
運転手が降りて行って強引にかのんをかかえて車に乗せる、


李純は車の中で大暴れするかのんに手を焼いて、整体術で
腹の急所にパンチを入れるとさすがのかのんも一発で気を失う。


自分の屋敷にかのんを連れ込み監禁すると 朋子を呼ぶ。
「どうだった?かのんちゃんに乱暴してないでしょうね」
「乱暴じゃないけど、暴れるから大人しくさせたけどね」



「部屋にカメラを取り付けておいたわ。もう目が覚めた頃よ」
朋子はモニターでかのんの様子を見た、
「違うわ!?とんだ人違いよ、私が頼んだ子と違うじゃない!」
「え?どう違うの」
「だってあの子はスマイレージ福田花音よ!頼んだのは、
モーニング娘。鈴木香音だったのよ!」



「だって、ハロプロのアイドルの『かのん』という肥った女の子
と聞いたわよ。どう違うというのよ。同じじゃない」
「そう言えばそうね。かのんという肥ったアイドルの子ね。同じね」
「でしょう」 
朋子はスマの花音も最近、
娘。の香音と同じ悩みをかかえてると聞いた事がある。


「こうなれば後戻りは出来ないわ。予定通り、『かのん』の
減量作戦を実行するしかないわ」
「わかったわ。あの花音って子は中々の気が強くてしぶとい子のようだし、
これから整体のしがいがあるわ」
「整体って、あの子は心の病ではあるけど、乱暴な事をして体に傷を
つけちゃ絶対にダメよ」


朋子はスマのリーダーの彩花を呼び出して事の経過を話した、
もちろん花音を誘拐同然に連れ去ったとは言えない。
花音をダイエットの専門家に預けている、必ず一ヵ月後に十キロの
減量を無理なく出来るようにしてみせる、経過は彩花や家族に花音から
メールで報告させると。
彩花は簡単に信じて、
「お願いします」と 朋子に頭を下げた。




モーニング娘。のリーダーの道重さゆみは、香音を呼び出して
一ヶ月の休養と成果が無ければ卒業させると言われた事を
切り出した。香音は黙って下を向いているだけだった。
「かのんちゃんが辞める事になればメンバー皆が悲しむわ。
ね、一ヶ月頑張ろう。私も出来るだけ協力するわ」



香音はぽつぽつと話だした、「私、好きな人がいるんです、
思い切って告白したんです。でもその人には私よりももっと
もっと好きな子がいるからと。私の事なんかただのメンバーの
一人に過ぎないんです。それを聞いて何にもやる気がなくなったんです」



「その好きな人って、うちのメンバーの子なの?」
香音はうなずいた。
「わかったわ。その、ふく・・・メンバーの好きな子って、
スマのあの子ね」
香音はうなずいた。
「その気持ちわかるわ。私だって好きな子がいるけど、全然振り向いても
貰えなかったし」
香音はきっと顔を上げると、


「本当にわかるんですか!だって今、りほちゃんと道重さんは
とっても仲が良いじゃないですか!」 
「・・・」
香音はコーラを取り出すとラッパ飲みで、ぐびぐびと呷るように
飲み出した。続いてタイ焼きを取り出し両手に持つとかぶりついた。
「私なんか、もうどうなってもいいんです」


「自棄にならないで。どうなってもいいってこのままじゃ一ヵ月後に
卒業なのよ、香音ちゃんが何か目的があって自分の意志で
卒業するなら、私も気持ちよく香音ちゃんを送り出せるわ。でも、
このまま不本意のまま卒業すれば一生後悔すると思うの」


香音は答えず、いつも片時も離さないヌイグルミのちゃーちゃんを抱きしめた。


さゆは立ち上がると、いきなりそのちゃーちゃんを香音の手から
強引に取り上げた。
「嫌っ!ちゃーちゃんを返して!」
「かのんちゃんが辞めたら皆が悲しむわ。中でも一番悲しむのは
誰だと思う?この、ちゃーちゃんよ!」
「・・・ちゃーちゃんが」
「そうよ。あなたといつも一緒のちゃーちゃんよ」


「ちゃーちゃんは、いつもモーニング娘。としてのあなたを
ずっと見て来たのよ。きっとちゃーちゃんはモーニング娘。としての
あなたが大好きなはずよ。そのあなたがモーニング娘。
辞めたらちゃーちゃんも悲しくて泣き出すと思うわ」
返されたちゃーちゃんの目の辺りが濡れていた、


ちゃーちゃん


香音がはっとさゆを見ると、さゆの目から涙が流れていた。
香音は、ギュッと強くちゃーちゃんを抱きしめた。


朋子は多忙なスケジュールのわずかの合間に李純の屋敷に
行って花音の様子を見に行った。
「いや〜ホントあの子はたいした女の子よ。あんな気が
強い子は中々いないわ」
「本当に気をつけて扱ってよ。乱暴な事をしたら私が
許さないから」
「わかってるわよ。上手くやるから」



遂にその一ヶ月後が来た。
モーニング娘。スマイレージはツアーを間近にひかえて
リハーサルのレッスンも佳境に入っていた。
そんな中二人のかのんは復帰した。


モーニング娘。のリハ中、飯窪が「最近道重さんやつれたと思わない?」
「そうね」と石田。
「あんなに頬がこけてしまって心配だわ」
「差し入れのケーキとかも手を出さないし、
お弁当も一切食べないで手作りの弁当箱を持ってきてるの、見たら
ご飯は無しで野菜やお肉だけだったわ」


「この前、道重さん夜遅く仕事が終わって鈴木さんの家へ行ってみたって。
すると夜道を誰かが走って来て見たら鈴木さんで、汗びっしょりで懸命に
走ってる鈴木さんを見たら何も言えなくて、そのまま帰って来たって」
「そうなの。鈴木さん頑張ってるんだね。
私達も負けないようにリハを頑張ろう」


香菜が、「最近和田さんすごく痩せたわね、
お菓子もいっさい手をつけないし、お弁当もほとんど残してるし」
「そうなのよ。聞いたら、『かのんちゃんが頑張ってるのに
私だけ美味しいものを食べられない』って言ってたわ」と芽実。
「それで私も食べない。って言ったら和田さんが」


『あなた達は若いんだからしっかり食べて、しっかりレッスンを
して、かのんちゃんが帰って来るまで頑張るのよ。
それがかのんちゃんを応援する事になるの』って言われたの」
「そうだね。福田さんが帰ってきて笑われないように私達も頑張ろう!」
「そうね。もっとリハを頑張ろう」


モーニング娘。のリリイベが行われていた。一曲目が終わった時、
袖から同じように新曲の衣装を着た女の子が出て来た。
彼女を見た多くのファンはざわついた、
「あの子は誰なんだ?!」
「あんなスタイルの良い子が居たっけ?脚なんか細いし」
「バカっ!あの鼻の横のホクロを見ろよ、ずっきじゃないか!」


「そうだよ!ずっきが帰って来たんだよ」きせずして会場全体から
ずっきコールが湧き上がった。ずっき!ずっき!ずっき!!
「ずっきお帰り〜!」
別人のような姿になった香音を見て、
「鈴木さん!!」真っ先に遥が駆け寄って泣きながら香音に飛びついた。
他のメンバーも香音の周りを囲んで泣き始めた。


さゆは、皆がようやく香音の囲みを解くと、息をととのえて、
香音に近づこうとした、すると少し離れていた聖が香音に
近づいて、「かのんちゃん、お帰りなさい」
「みずきちゃん!」香音は聖に抱きついた。
さゆは出鼻をくじかれて
「もおぅ、ふくちゃんは美味しい所を持ってくんだから」



すると鞘師がさゆの腕を取ると「私がいるじゃないですか。
道重さんが一番かのんちゃんと一緒に頑張ってたのを皆わかってますって」
「りほりほ、ありがとう」

一月ぶりにモーニング娘。が10人揃ってのパフォーマンスに
会場の熱気は最高潮に達した。
MCでの香音にいつまでも拍手が鳴り止まなかった。



スマイレージのリハの最中に花音は現れた。
私服でミニスカートの、別人のようにスマートになった花音の
体と細くて綺麗な脚を見て、一瞬メンバーは戸惑っていたが、
すぐに芽実が「福田さん〜!」
と大声で泣きながら花音に飛びついた。
他のメンバーも泣きながら花音に抱きついた。
彩花は花音と少し離れて見守った



ようやく花音は彩花の方を見た。
「あやちょ、そんなにやつれてしまって・・めいめいに聞いたわ。
あなたも私と同じように減量をしてたって、
それに時間を見つけてはお寺をまわって観音様にお祈りをしてた事も」


彩花は首を振ると花音に笑顔で近づいて、
「お帰りなさい」
「はい。ただいま!」
「かのんちゃんが痩せられたのは、観音様のおかげではなくて、
かのんちゃんが努力したからよ」


そんな二人にメンバーは泣き笑いで抱きついた。
「お帰りなさい!」

花音は小声で彩花に、「好き」と言った。


花音がレッスンスタジオを出ると、梨沙子が待ち受けていた。


朋子は近くでイベントをやってて、終わるとモーニング娘。
イベントを観に来た。後ろの方で李純と並んで見る。
「香音ちゃんはよく誰の力も借りずに自分の力だけで頑張ったね。偉い」
李純。「スマの花音の方はどうだったの?」
「最初は音を上げてたけど」


「すぐ側にいてあなたを一番大好きで、あなたの一番大事な人のために
頑張りなさい。って言ってやったら黙って減量に励むようになったわ」


「なるほどね。あやかのんの絆は強いわ。ってハロメンの事はあまり
知らないはずじゃなかったの?」
「あの後ちょっとばかり花音ちゃんの事を調べたのよ。
それに彩花は私好みの可愛い子だしね」
「あやちょが危ないわね」
「どう危ないのよ。とにかく約束だからゆかにゃんを
私の家に連れてきてよ」



「はぁ?ただ紹介するだけじゃないの」
「そうだっけ?」
「とぼけないで。あなたに 由加を紹介するのは危なすぎるわ。
吸血鬼でレズでドSの変態だから」
「あなただって吸血鬼じゃないの!」
「私はあなたほど変態じゃないわ」
「ああ、どうせ私はド変態ですから」


「じゃあ 由加の代わりに私じゃどお?」
「しょうがないわね。 朋子で我慢する。さっそく今夜来るのよ。
ドS同士で面白い夜になるわ」
「楽しみね」 朋子は無表情で言った。


その時、 朋子の背中に誰かが飛びついて来た、
「誰よ!驚くじゃない!」
見ると紗友希だった。
「ありがとう。遥も喜んでるわ」
「あのね、鈴木さんの件は私はかかわっていないの」


「はぁ?じゃあどうやって」
「香音ちゃんが誰の力も借りないで努力したたまものなのよ」
李純が変な目で紗友希を見てるので、
「呼んでるわ、行きなさい」紗友希は走って行った。
「あの子意外と可愛いじゃない」
「人として進化しきれてないあの子の何処が良いのよ」
「人として進化してないってっ」


「 朋子もあの子が好きなくせに」
「ち、違うわ!誰が!」
「むきになる所が怪しいな」
遠くで 由加の姿が見えたので、
あわてて李純の手を取るとその場を離れた。

「花音、香音、お帰りなさい」

終わり




ハロパネラ 朋子 二