Dark blueの絵日記

ハロプロ関連の記事が主。後は将棋と猫を少々

楕円形の青春

ラグビー部の部室で、部員の飯窪が声を掛けてきた。

「キャプテン、妹さんの事でちょっといいですか」

「おお?亜佑美がどうした」

「その、昨日亜佑美さんがデートしてるの見たんだけど・・」

「何だとぉー!何処のどいつと亜佑美がデートしてただとぉー!」

飯窪は俺の剣幕に口ごもって、

「その・・・郁栄のキャプテンです」


「なにーーー!?あの矢島が亜佑美とデートだと!
許さんけんーーーーーーんんんんんんんんんんんん!」
部室に俺の怒号が響いた。

俺は頭に血がのぼって、帰る!とすぐさま学校を後にした。


亜佑美のヤツ、よりよりによってあの矢島とデートとは
ふざけてる。
まあ、亜佑美とデートなんぞするヤツは誰でも許せんのだけど、
特にあの矢島だけは絶対にダメだ。

矢島は県で屈指の強豪高の郁栄ラグビーの部のキャプテンなのだ。
全国大会では毎年のように県代表に勝ちあがっている。

我が派路高校ラグビー部とは月とすっぽんぐらいの違いがある。
県予選1回戦負けの派路とは格が違い過ぎる。
矢島と俺は、小学校、中学校とずっと一緒で、お互いライバルと
思っている。矢島がラグビーを始めたから俺も始めたのだ。


矢島がラグビーの名門郁栄高校に進学したが、俺は同じ私立でもレベルの
低い派路高校に進学した。それはわけがあるのだが。


俺は帰ると、すぐさま亜佑美の部屋に行ってドアをぶち開けた、

亜佑美ぃいいいいいいいいいい!」

「何よ!?お兄ちゃん、ノックぐらいしなさいよ」


亜佑美は着替えていたのか、上半身はブラだけの姿だった。
俺はあわてて背中を向けた。


亜佑美と俺は同じ派路に通っている。俺は3年、亜佑美は2年生だった。
そして亜佑美ラグビー部の女子マネをやっているのだ。

亜佑美は着替え終わると、
「お兄ちゃんなんか用なの?」

「お〜お前なぁ、矢島とデートしてたそうじゃないか」

「ななななななにを言うのよ」

明らかに動揺してる。



「さては、本当だったのか!」

「で、デートなんかしてないから!」

「嘘をつけ!うちの部員が目撃してるんだ!」

「妹さんの誕生プレゼントを買うのに一緒に買物に付き合っただけよ」

「って、そういうのをデートって言うんだよ!一緒に買物ってもう
そんな深い仲になってるとぉー!」

「そんな深い仲じゃないよ・・・」

「いつから付き合ってるんだ」



「その、先月の事だけど、私が不良にからまれてる所を矢島さんが
助けてくれたのよ」

「はぁ?不良ってどんな奴なんだ?」

「その金髪でサングラスをかけて竹刀を持ってたわ」

「今時そんな不良がいるか!ハロモニ劇場じゃないんだから!
とにかく、矢島と付き合うなんてこの俺が許さん!!」

「もおぉー私が誰と付き合おうとお兄ちゃんに関係無いわ」

おー開き直りやがったな、ますます許さん!


翌日、俺は亜佑美に釘をさすだけでは足りずに、授業が終わると、
矢島のいる郁栄高校に乗り込んだ。

折りよくラグビー部が練習していた、
「おい矢島ぁー!」


声を掛けると、矢島は俺を見るとなぜか笑顔で、

「お〜お生田のお兄さんじゃないですか」

「お兄さんじゃない!ちょいと顔を貸せ」

突然現れた俺に他の部員が気色ばんだ、
矢島はそれを制すると、
「こんな顔で良かったらいつでも貸すよ」

矢島は笑顔で俺と一緒に歩き出した。
こういうところが癇にさわるのだ。

体育館の裏にまわると、
「お前は亜佑美と付き合ってるそうだな」

亜佑美さんというと?」

「とぼけるんじゃない!妹だよ」


「いや亜佑美さんはもちろん知ってるけど、亜佑美さんとは、
まだ付き合ってはいないけど」

「嘘をつけ!うちの部員がお前と亜佑美がデートしてるのを
見たんだよ」

「だから、まだ付き合ってはいないけど、お友達に過ぎないけど」

「お友達だと言うのか、デートまでしたくせに」

「それは妹の誕生プレゼントを何が良いのかわからないから、
亜佑美さんに一緒に買物に付き合ってもらっただけで」

「だから!そういうのをデートって言うとぉー!」

「そうなのか、知らなかったな」


「とにかく、亜佑美と付き合うのは俺が許さんけん!」

「生田は、興奮すると博多弁になるな」

「しょうがなか、12歳まで博多におったけんな」

「そうだな。ではあらためてお願いしたい」

「何だ」

亜佑美さんとお付き合いさせてくれ」

「だからーそれは許さんと言ってるとぉおー!」

「どうしてもダメか」

「ダメだ。あんなへちゃむくれの何処が良いんだか」

「へちゃむくれはひどいな。亜佑美さんは可愛くて優しくて
あんな素晴らしい女の子はいないぞ。あんな妹さんを持って
生田が羨ましいよ」


「まあな。とにかく亜佑美に今後近づく事は許さんけん」

「どうしても無理か」

「無理だ」

「あ、そうだこの前うちのラグビー部と練習試合がしたいと
言ってたな、それ受けるよ。だったら良いだろ」

「それとこれとは別だって」

「そんな事ないだろ、そうだ!うちが勝ったら亜佑美さんとお付き合い
許してくれるかい」

「はぁああああああ?」

「ごめん。冗談だよ。以前一度だけ試合をした事あったな」

100対0で、こてんぱんにやられたのだ。しかも後半は明らかに
手抜きをされて、さんざんな目にあったのだ。

「その、100点差と言わないけれど、50点差以上でうちが勝ったら
亜佑美さんと付き合うのを許してくれないかな」

「・・・・」


「あ、ごめん。無理を承知で言った私が悪かったよ」

そこまで言われて引き下がるわけにはいかない。俺だってプライドがある。

「よし!わかった、受ける。つまりうちが負けても50点差以下だったら
亜佑美の事を諦めるのだな」

「お〜受けてくれるか。良かった。これで亜佑美さんと付き合うのを
許してもらえると言うものだ」


「おーい!勝負は決まったわけじゃないけん!」



「おい!亜佑美!矢島との勝負は来週の日曜のうちのグランドで
やる事に決まった。お前のために絶対に勝つぞ!」

「はぁ?どういう事?」

「これこれこういうわけだ」

「わかったけど、お兄ちゃんは肝心な事を忘れてるわ」

「肝心な事ってなんだ?」

ラグビーは15人でやるスポーツよ。今うちの部員は11人しか
いないのよ」

「そうなんだな、3年は俺の他、譜久村、飯窪、佐藤、工藤。
2年が、牧野、羽賀、尾形、野中。1年が、加賀、横山。
後4人どっかから引っ張って来ないとな」

「あてはあるの?」

「まあな。相撲部の桜子は俺がいつも飯を奢ってやってるから、
嫌とは言わさんから大丈夫だ。ただの人数合わせだけでは話しにならん。
後の3人は、ある程度運動能力のある者じゃないとな。
同じ球技という事で、サッカー部の岡井。足の速さを買って陸上部の和田。
パワーを買って柔道部の須藤。を考えてるんだ」

「すごいメンバーじゃない、エースばかりじゃない」


翌日、俺はその3人に声を掛けた。

「というわけなんだ。一試合だけでいいから参加してくれないか」

岡井は、
「秋季大会も近いんで練習に忙しいんで勘弁してください」
と、あっさり断られた。
他の二人も同じように断られた。

部室に居ると、亜佑美がやって来て、

「お兄ちゃん、3人にお願いしてどうだったの?」

「ダメだ。何とか頼むと言ったのだけど、3人共断られた」

「あーぁ、そんな事だろうと思ってたわ。わかった。
私が行って頼んでみる」

まず亜佑美は、サッカー部が練習してる様子を見に行く。


正面から行ってもダメだから、からめ手から攻める。
サッカー部の女子マネの佐々木莉佳子に近づくことにする。


用具を片付けてる莉佳子に缶ジュースを差し出して、
「お疲れ様〜」
莉佳子はちょっと不審そうに亜佑美を見た、
「私、ラグビー部のキャプテンの生田の妹の亜佑美です」
「ああ、生田君の妹さんですね」と莉佳子はうなづいた。

お兄ちゃんのヤツ、こんな子にも声かけてるんだ。
ホント可愛い子にはみさかいないんだから。


「あの生田さんの妹さんが何の用ですか」
「キャプテンの和田さんの事を聴きたいの」
莉佳子は缶ジュースを飲むと、


「私の知ってる事なら」
「和田さんに好きな子とかいるの?」
莉佳子は首をかしげて、
「生田さんと違って女の子に興味無いみたい」
へ〜お兄ちゃんと違ってね。


莉佳子は声をひそめると、
「なんでも工藤さんが好きみたい」
「工藤って誰の事?」
「ほら、おたくの工藤さん」
「えええー!?うちの工藤に?」
「バレンタインに私から工藤さんにチョコを
渡すように言われて困った事があるの」
まあ、工藤は男の子だけど可愛いし。


うちの部員の工藤が好きなら話が早い。
さっそく工藤を連れて和田に会いに行く事にする。


「嫌っすよ、和田さん苦手なんですよ」と工藤
「なんで?」
「だってオレをジロジロ見てくるんですよ。そのくせオレが
見ると顔をそらすし、気持ち悪いっすよ」
「和田さん無しでは試合が出来ないの!」



亜佑美が説得して工藤は渋々ついて来る。
和田は亜佑美の顔を見ると、
「試合の件はお兄さんに断りました」


亜佑美は工藤を呼ぶ。
工藤を見た和田は急にどぎまぎし始める。
工藤も、もじもじして妙な雰囲気になる。
「工藤ー!」
亜佑美にせかされて工藤は意を決すると
和田の腕を取って、


工藤は、あらぬ方向を見てる和田の腕を抱くと、
「お願いしまっす!和田さんがいないと試合が
出来ないんです!一試合だけでいいんで協力
してください!お願いしまっす!」
と言いながら和田の顔を上目使いに見る、


和田は、たまらず、
「い、一試合だけなら・・・」
と、和田は落ちた。


柔道部の須藤は、以前亜佑美へデートに誘われた事があるから、
それを餌に頼めばいける。


陸上部の岡井には、
「ねっお願い。そうだ一か月間昼飯を奢るからお願い!」
と拝み倒すと、岡井は渋々ながらうなづいた。



メンバーのポジションを決める事になった。

まずフォワード。

一列目、3人の左右のプロップとフッカー。
フォワードの要として、プロップ①譜久村。と③野中。
フッカーには、②横山。


2列目。 ロックの両輪として巨漢で背のある④須藤と⑤桜子。


3列目。フランカー、⑥尾形と⑦羽賀。
ナンバーエイトに自分、⑧生田。


本来自分はハーフ団のスタンドオフだが、攻守に自在に動くため、
フォワードとバックスの中間の位置のナンバーエイトに据わる事にした。


ハーフ団、二人スクラムハーフスタンドオフは、
スクラムハーフは、⑨佐藤。
スタンドオフは、⑩工藤。


バックスは、センターを⑫牧野と⑬加賀。
ウィングを、⑪岡井と⑭和田。

フルバックを、⑮飯窪。