Dark blueの絵日記

ハロプロ関連の記事が主。後は将棋と猫を少々

猿飛


「この人、サスケさんのお姉ちゃんなんだ・・・」


「そうだよ!お姉ちゃんはすごいんだよ、猿飛の術の
名人で誰にもお姉ちゃんには適わないんだよ!」


「サスケ!おだまり!めったに術のことを口外するん
じゃないよ!ホント、オシャベリなんだから」


「いけねェ〜、ごめんなさい・・・」


サスケは麻里に鋭く叱責されて思わず身を小さくする。
忍者にとって自分の術は秘中の秘なのだ。



亜依は自分も叱られたような気がした、
声までそっくりだった。


三太夫が亜依に向かって、


「麻里が同行するにしても、道中なにがあるかわからない
出立まで麻里に護身のための訓練を受けるがよい」


三太夫はこれまでの事情を麻里に説明して、
亜依を訓練するように申しつけた。


麻里は亜依をチラッと見て、あまり乗り気では
なさそうだが、


「はい、承知しました」
麻里は、膝まづいて言った。


下忍の麻里にとって上忍の命令は、絶対なのだ。


三太夫が去った後、麻里は亜依を頭から足の先まで
眺めていたが、




「見たところ、とても体は軽そうには見えないけど、
なにか運動みたいなことはやっていたのかい」


「運動みたいなこと?自慢じゃないけど運動は、
まるでやったこと無いよ〜」


麻里はふんふんと、うなづいた。


「まず、基本は走りだよ。一人前の忍者は、日に百里
走るのが普通だよ」


「ええ〜!百里って百キロのことなのかな、すごい〜!」


もちろん、一里は約4キロだから、忍者は一日4百キロも
走るということになる。
普通の人間には到底不可能なことだが。


「とにかく、そこをちょっと走ってごらん」


そこで、亜依は麻里の前を、とことこと走ってみせた。


麻里は額に手をあてて首を振って、


「ああ〜、ダメだダメだ!話にならないよ!
亀が運動会をやってるんじゃないよ・・・まったく、
お屋形様はこんなのろまをどうやって訓練しろと
言うのかしら」


それを聴いた亜依は、さすがに少し頭にきて
ふくれっ面をする。


「おや、亀でなくてフグだったかな」
と、麻里は笑った。


亜依はその顔は憎らしい時の矢口さんに似ていると思う。


その時、



「敵だー!!」


大きな叫び声が上がった、


麻里は、きっと振り返ってそちらへ走り出した。
亜依も、後に続いた。





根来



麻里が声のした方へ走って行くと、
下忍のひとりがこちらへ向かってくる。


「敵はどこに!人数は!」
麻里が口早に問うと、


「それが、敵はひとりだけなのですが手練の者らしく
もう味方の者が何人もやられてしまって、今、その
木の上で味方の一人と」


と、指差された樹上を麻里が見上げると、
4、50メートルほどのはるか上で刃を交わす音が
聞こえてくる、


その時、叫び声を上げて人が落ちてきて、地面に
叩きつけられる。側にいってみたが、もう息は無かった。


麻里はきっとなって上を睨むと、
「よし!おいらが相手になってやる!」


そこは林に少し入ったところで、高い木が何本も
そびえ立っている。


麻里は、ふわっと飛び上がると2本の木に交互に
片足を突いてたちまち、50メートルほど上の
樹上の枝に上がってしまう。
とても人間業とは思えないほどの身の軽さを見せる。


麻里のいる木の枝から、30メートルほど離れた
樹上の枝に、敵の忍者が立っている。


麻里と敵の忍者は互いに向かい合った。


「お出ましになったな。百地のましらの麻里と言えば、
くノ一の中でも一番の手練のものと恐れられているが、
こんな小娘とは知らなかったな」


敵の挑発に麻里は鼻で笑った。


「ふん、小娘。で悪かったわね、よくも仲間を
何人も殺してくれたわね、地獄へ行く前に誰に頼まれて
伊賀を探りにきたか白状しておいき!」


「面白い、地獄へ行くのはどちらかな、おぬしの
猿飛の術がどんなものかとっくりと見せてもらおう」


「おいらの猿飛の術を見て、人に話した者はひとりも
いないよ、それは生きて帰れた者が誰もいないからさ!」


「そのでかい口を利けるのも今のうちだ!」


彼は、麻里に向かって手裏剣の一種のクナイを投じた、
同時に大きくジャンプすると、隣の木に飛び移る。


麻里が軽くよけると、クナイは幹に突き刺さった。
麻里もふわっと飛び上がると、敵の男を追って行く。


忍者同士の樹上の死闘が始まった。


その頃、三太夫サイゾーも駆けつけてくる。

「敵は、信長の手の者か」


三太夫が言うと、サイゾーが答えた。


「敵はおそらく、紀州の根来忍者かと思われます、
信長の支配下に入ったと聞いています」


根来忍者は、長らく伊賀と敵対していた。


ようやく亜依も来て、上を見上げた。


高い樹上で戦いは行われていてよく見えなかったが、
時おり麻里の白装束が見えて、木から木へ疾風の
ように飛び移る姿はたとえ猿でも出来そうに無い。


敵の忍者は、麻里に翻弄されっぱなしだった、
必死に木の枝から枝に飛び移って麻里の背後に
回りこもうとするが、麻里はまるで重力を無視したか
のような跳躍力で樹上を自在に飛び移り、常に先回りを
して敵を追い詰めていく。


ついには、敵は息が切れて体力の限界が近かった。
手裏剣も使い果たしてしまっていた。

そこで敵は勝負に出た、麻里に向かって自分の体を
さらすように飛び出した。


それを見た麻里も勝負とばかり上方から敵に向かって
跳躍した。


だがそれは敵の罠だった、敵は飛び出すと同時に
木の枝に、先に鉤爪のついた縄を投げて引っ掛けた、
その縄の力で、敵の体は空中でストップした。


麻里は目標を失い、下方へ落ちていく、


「貰ったっー!!」


敵は初めて麻里の後ろ取る形になり、太刀で麻里の
背中を突こうとした、


その時、奇跡のような事が起きた、
麻里が空中でくるりと一回転すると、ふわっと上方へ
浮き上がり、たちまち敵の後ろに回りこむ。


「そんな馬鹿なっー!!」


麻里は敵の背中にがっちりと張り付いて自由を奪って
しまい、そのまま共に数十メートル下の地面へ
まっ逆さまに落ちていく。


地面に激突する寸前、麻里は敵の体から離れふわりと
降り立った。