Dark blueの絵日記

ハロプロ関連の記事が主。後は将棋と猫を少々

クローン・リカ 3

そこで俺は彼女の寝ている側に座りなおすと
自己紹介をすることにする。
俺の名前と年を言い、梨華ちゃんの大ファンだと
いうことを喋った。
しかし、彼女はきょとんとした顔で俺を見るばかり
だった、俺の言う言葉の意味がわからないらしい。


ようやく、俺はこの事態に気づきはじめた。



その時、仰向けに寝て手足をばたばたと動かしていた
リカが、急に体の動きを止めた、


見てると、彼女の腰の辺りの布団が、じわ〜と
濡れてくるのがわかる。


俺は驚いて立ち上がって、


「あ〜!ダメだよっ〜!!そこで
オシッコをしちゃ〜!!」


リカは俺の大声に驚いたのと、オシッコを
して下着が濡れて気持ち悪いせいで、また
顔を歪めて泣き始める。


俺は仕方なく、リカを抱いて移すと、
濡れた敷布団をベランダに運んで干した。


戻ると、泣いているをリカ見つめた。
ここにいたって、俺はさとった。
ここにいるクローンのリカは、赤ん坊なのだ。


生まれたばかりの赤ん坊なのだ。


まだ言葉も喋れない、自分自身で起き上がることも
出来ない、赤ん坊なのだ。


その顔はテレビなどでよく見る、最近の
梨華そのままだし、
その体も、もう少女とは言えない現在20歳の
梨華の体そのものなのだ。


だが、中身は、精神的には、生まれてまもない
赤ん坊なのだ。


俺は頭をかかえた、
これからどうすりゃいいのだ、
乳飲み子をかかえて、女房に逃げられた父親の
心境に近いものがあるような気がする。


しかし、幸か不幸か、その赤ん坊は外見上は
梨華そのものなのだが。


リカの泣き声に、我にかえる。
彼女の体を横にして後ろを覗き込んでみると、
下着のお尻が濡れている。


そのままにはしておけないので、
俺は目をつぶると手さぐりで、彼女の下着を
脱がすと、タオルで濡れた体を拭いてやる。
替えの下着などあるわけがないので、そのまま
寝かしておくしかない。


リカは泣きやんだ。


そして、一点の曇りも無い、純真無垢な瞳で
俺を無心に見つめている。
俺は、姉の子供をあやした時のことを思い出した。
リカの顔に身をのり出すと、
いないいないばあ〜をやってみる。


すると、リカはニコッと初めて笑った。
その笑顔は、梨華そのままなのだが。


なおも、ばあ〜と続けると、
キャッキャッと笑いはじめた。


外見は20歳の女性相手の、いないいないばあ〜は、
かなり異様な光景とは言える。


俺は、ため息をついて立ち上がった、


先輩に電話をかける。


本人の記憶をインプットしていないクローンを
寄越したわけを聴かずにはいられない。
しかし、電源を切っているのか、いくら
やってもつながらない。


リカに気づかれないように戻ると、
いきなり、ばあ〜!とやってみせる。

リカは、大喜びで嬉しそうに笑い出す。


俺は、ため息をついて彼女の側に座り込んだ。
これからどうすればいいのかわからない。




25歳で独身の俺と、リカとの奇妙な
生活が始まった。


例のウサギの衣装は脱がせて、俺のジャージに
着替えさせる、漏らしたオシッコで濡れた下着は
洗濯して干してあるので、俺のトランクスで
我慢して貰う。
まず、寝たきりではどうにもならないので、なんとか
起き上がれるようにさせたい、


リカも自分の大きな体をもてあましているようだ、
その体は、もう起き上がって這うだけの筋肉はついて
いるはずだ、
リカをうつ伏せにさせると、俺は四つんばいになって
何度もはいはいをやって見せる、


「ほら、やってごらん」


何度もやって見せていると、リカもそのマネを
懸命にして、手足をもがいているうちに少しずつ
前進するようになる、
そのうち、肘と膝を使ってはいはいが出来るように
なった。


ついには、目を輝かして俺の狭い部屋中を
這いまわり始める。


部屋の中のテレビや家具にところかまわず突進して
行き頭をぶつけそうなり、危なくてしかたがない、


俺は、姉の子供のことを思い出した、
ようやく、はいはいが出来るようになり、見るもの
すべてが興味いっぱいなのか、それを手に取ると、
すぐに口に入れてしまう。
リカも同じだった、部屋にあるものを
手当たりしだいに口に入れてしまう、
食べるつもりはなくて、それが何か口で
確かめているのだ。


小さいものを口に入れて飲み込んでしまう
恐れがあり、俺はリカの這い回る先の
危ないものを片付けていくしかない。


その他、困るのは俺の後をくっついて来ることだ、
初対面は泣かれてしまったが、今はすっかり
慣れて、俺の後をはいはいしながらつきまとう。


問題は食べ物だった。中身は赤ん坊でも、
体は大人の女性と同じなのだから赤ん坊用の
ミルクなどでは、とてももたないだろう。


それで、柔らかく炊いたご飯と一緒に肉や魚を
食べさせてみることにする。
一人暮らしが長い俺は自炊には慣れていた。


俺が台所で料理をしていると、さっそくリカが
まとわりついてくる。
昔、実家で猫を飼っていたが俺になついていて
よく俺の足にまとわりついて体をこすり付けてきて、
可愛いものだった、


小さい猫ならともかく、体の大きいリカが、
包丁を使っている時に足にまとわりついてくると
危なくてしかたがない、
そんなもリカも可愛いのだけど。


リカは何でもよく食べてくれたので安心する。
箸はまだ使えないので、スプーンを握らして
なんとか食べさせる、
口のまわりをご飯をいっぱいくっつけて夢中で
食べている側で俺はティッシュで口を拭ってやる。


「美味しいかい?」


その俺の言葉に、まるで意味がわかったかのように、
こちら向いてなんとも言えない笑顔を見せたリカに、
俺は思わず強く抱きしめたくなった・・・。


夜になって、別々の布団で寝ることした、
まだ、リカと一緒に寝る勇気はない。
夜中、危惧したとおりリカは夜泣きをした。


その泣き声に俺が側に行くと、リカは俺に向かって
両手を差し出して、泣きじゃくっている、
しかたなく俺が布団に入ると、しっかりと
しがみついてくる。抱きつかれて俺の心臓が
高鳴りだした、
寝る前、ジャージをパジャマに着替えさせた時、
その成熟した女性と同じ大きさの胸のふくらみを見て
しまったのだ。


やがて安心したようにリカはすやすやと
眠りについた。


俺はいつまでも、その柔らかい髪を撫で続けた。