Dark blueの絵日記

ハロプロ関連の記事が主。後は将棋と猫を少々

聖少女 10

「腕枕」



ベッドのあるさゆの部屋に入って行くと、
自家発電の淡い明かりの下で、
さゆは鏡台の前に腰掛けてブラシで長い髪を梳かしていた。
艶々と輝いている黒髪は、とても柔らかそうでつい触れたくなる。

さゆは紅色の足首まであるネグリジェに着替えていた。
さゆの肌が雪のように真っ白いせいで、淡い紅色のネグリジェと
肌の白さが混じり合い、脚の部分がピンク色に透けて見える。
まさに〝衣通姫〟のような美しさだった。

さゆは髪を梳かし終わると立ち上がり、
ベッドに腰を降ろしほほえむと、
「このベッドは結構広いから、友男さんも一緒に休めるわ」

思わず苦笑した。
ちらっと上を見て、一緒のベッドで休むのは明らかに
キス以上の行為とみなされるかもしれない。



「僕は、そこの下で休ませてもらいます」
さゆはちょっと不満そうに、
「私は王子様の腕枕で休むのが夢だったのよ」


「その、ご期待に添えないのは残念ですが」
さゆはすぐに諦めたらしく、
「そこのドアを開けると一人分の寝具が入ってるわ」
そこから毛布を取り出すとベッドから少し
離れた所に敷いた。
寝室にはふかふかの絨毯が敷いてあってそのまま
毛布を被るだけで寝られそうだった。


停電でエアコンは止まっていても、6月になっていて
夜になっても寒くはなかった。

やがて消灯の時間になったらしく、明かりが消えて
あたりは暗くなる。
もちろん、暗視装置付きの監視カメラが見張っている。


さゆが話しかけてくる
「友男さんが帰ってしまうと寂しくて
眠れないの。以前の一人だった頃には
こんな事は無かったのに」

「よくわかります。一人だった頃は寂しく
無かったけど、二人で過ごすことになって、一人に
なるのは寂しいものですよ」
「そうなのね。でも今夜は安心して眠れそうよ」

やがてさゆは眠りについたようだが、私はなかなか
眠れなかった。
今日起きたあまりにも衝撃的な出来事を考え、そして
さゆの事を考えているうちに、いつしか眠りについた。


夜半過ぎ、妙に右腕が重く感じて目が覚めた、
暗い中、それを確かめようと右手を上げてみると、
右腕に何かが乗っていて腕が動かせない、

そして何か柔らかくて暖かい物体が私の毛布の中に
入って来ていた・・・。
顔を近づけると、柔らかい髪が鼻をくすぐった。


さゆが、私の腕に頭を乗せてやすらかに寝入っていた。