Dark blueの絵日記

ハロプロ関連の記事が主。後は将棋と猫を少々

ハロパネラ 朋子 二


「最近体の調子が悪いのよ」李純に相談すると
「 朋子、それは貧血よ。ハロパネラは半年に一度は新鮮な人間の
血を吸わないと調子が悪くなるの」
そうか、誰の血を吸おうかな同じメンバーの血は嫌だし、
他のハロメンの子供や年取った人はダメだし、
強すぎる人も副作用があるし弱い人もいけないし


吸う血は、若くて健康な少女で処女に限られるし、
あの10人の内の一人ならピッタリだけど、あの子はダメ!
霊感があるから吸血鬼と嗅ぎつけられる。
あっもう一人ピッタリの子がいたわ、
あの6人の内のあの子。あの子とは話した事無いから
「佳林ちゃん!あのイケメンを紹介して〜」


「たけちゃん勝負しよう!」 「はあ?」
「だからバッティングセンターで勝負しよう」
「やめといた方がいいよ」「やってみないとわからないわ。
私が勝ったらなんでも言う事を聴くのよ」
「いいけど、金澤さんは朱莉には勝てないよ」
「私はスタルヒンに習ったんだから」 「誰?!」


「元巨人軍の選手」「スタルヒンって聞いた事無い」
「たけちゃんには古過ぎたかしら」
朱莉から打席に立った。カーン!と良い音がして、 鋭い当たりを飛ばす。
朋子の番になったが、 何度やっても空振りばかりでバットに当たらない。
「朱莉には勝てないよ。野球に関しては」


帰りに、公園のグラウンドで高校生が野球の練習を やっていた。
「投手の球なら私の実力を見せられるわ」
朋子は投手の子に打たせてくれと頼みだした。 「でも・・・」
「私の言う事が聞けないの!」 「ハ、ハイいいです」
朱莉に先に打たせる。 朱莉はカキーンッ!と外野の頭を抜いた。


三塁打っていうところね」 朋子が打席に立つと、
「コラッ何してる!」コーチの男が飛び出してきた。
「あなたは引っ込んでなさい!」
朋子に睨まれて コーチはすごすごと引っ込んだ。
朋子は気合を入れた、とにかく朱莉の血を吸わない 事には死活問題だ。
「ピッチャー!真ん中よ!」


朋子はピッチャーがど真ん中に放った球を芯でとらえた。
カィーーーーーーンッ!打球はグランドの塀を越えて行った。
「どぉお、ホームランよ」 朱莉は、まなじりを決すると
「もう一度打たせてよ!」
これはやばいと 朋子はキャッチャーのミットを奪うと 「私が捕るから」


朱莉は来た球に大きく振りかぶると鋭いスイングで バットを強く振った。
その時、 朋子はバットに当たるように頭を出した。
ゴッーーーーーーーン!朱莉のバットは 朋子の頭を 強打した。
朋子は血反吐をはいて倒れこんだ。すでに白目を剥いている。
朱莉は真っ青になって立ちすくんだ


辺りは騒然となり、コーチが叫んだ、「救急車を呼べ!」
遠くでサイレンが聞こえだした頃に 朋子は回復した。
眼を開けると心配そうな朱莉の顔があった。
朋子は朱莉の手を掴まえて起き上がった、朱莉の 手を引きながら走り出した。
公園の端の林の中に 逃げ込む。


金属バットで頭を強打されたはずの女の子が走って逃げたので
コーチ達はあっけにとられて見送った。
朋子は公園のはずれの林に腰を下ろした。
「大丈夫ですか!」
「竹内さん、あなたに頭をバットで 殴られて、私はもう死ぬかもしれないわ。
こうなったら私の言う事を聴いてくれるわね」


「・・・はい、わかりました」
「そう、そこに寝てくれる。 眼を閉じてじっとして」
観念した朱莉は仰向けに寝て眼を閉じた。
朋子が朱莉の上にかぶさった時、朱莉は眼を開けた。
「き、牙が出てる!」
「違う、これは八重歯よ!いいから眼を 閉じて」
朋子は朱莉の首に牙を当てた。


吸血蝙蝠は、唾液に神経を麻痺させる毒液があって
獲物に痛みを感じさせないで皮膚を破り血を舐めると 言われている。
同類である 朋子も朱莉の神経を麻痺させて
普段は引っ込んでいる牙を伸ばして十分に若くて新鮮な
朱莉の血を吸い込んだ。すぐに活力があふれてくる。


すると近くにコーチや救急隊員が怪我人を捜しにやって来た。
朋子はぐったりしている朱莉を背負うと走り出した。
道路を時速60キロで走っていたタクシーの運転手は、
側を 女の子が誰かを背負って走っているのを見て、眼を見張った。
朋子は速力を上げて走って行き、たちまち見えなくなった。


朋子は人目の無い川の土手に朱莉を降ろした。
朱莉は ぐったりして意識が無かった。
これは血を吸いすぎたかも しれないと 朋子は考えて、
仕方なく今度を自分の血を 朱莉に注入した。少しして朱莉は眼を開けた。
朋子を手を取って起こしてやったが、朱莉の握る強さに たまげて手を離した。


「ここは何処ですか、朱莉はどうしたの?」
朋子はまさかと思い、試しにこぶし大の石を拾ってきて、
朱莉に渡して強く握ってみてと言う。
朱莉がギュッと握ると 石は音を立てて壊れ、たちまち砂になった。
朋子は、またやってしまったと頭をかかえた。 紗友希と同じ事態になったのだ。


紗友希でさえ 朋子の血を体内に入れたら、不死身の体になったのだから、
ただでさえパワーのある朱莉は どんな怪物になるか空恐ろしい。
朱莉に石を渡して100mある向こう岸まで投げさせる。
軽く朱莉の投げた石は向こう岸どころか、
遥か上空のかなたへ 飛び去って消えた。


朱莉は飛び出すと、ぐんぐんスピードを上げて後続を引き離していく、
「あれっ竹内ってあんなに速かったっけ?」後続との差は離れる一方だった。
朱莉は自分のあまりのスピードに戸惑って最後は抑えた。
「げっ10・48だ!」「五十mとしてはまあまだな」
「これは百mだ」「げぇえ!世界新記録だ!」


偶然女子高校生の陸上競技を見ていた新聞記者が、
フィールド内が騒がしくなったので言ってみると、
女子生徒の一人が世界新記録を出したと聞いて、その生徒に向かって走り出した。
朱莉は大人が何人も追いかけて来たので、あわてて猛スピードで逃げ出した。
この頃自分はおかしいなと思いながら。


ここ埼玉ドームでの交流戦、埼玉ジャガーズ読売ジャイアンツの試合は
巨人の3対0でリード、9回の裏ツーアウト満塁です。
おっと代打が出てきました、
「ピンチヒッター、竹内おでん、竹内おでん〜」
相変わらず宮崎 由加さんのアナウンスは素晴らしいな、って、
おでん?!小さい!152cmとあります、
竹内選手、これがプロ初打席です。


ピッチャー内海、第一球投げました。
カキーーーーーン竹内打ちましたっ!
レフトへの大ファールです!おっ!竹内選手の詳細がわかりました、
なんと竹内おでん選手は女性と判明しました!
大島さん、女性とは驚きですね。
「ええ、女性のプロでは水原勇気、国立珠美以来の3人目ですね」


「和田さん!朱莉は夢だった野球選手になりたいので
スマイレージを休業するので後はお願いします!」
「はあ? 野球選手になるって本気なの?!」


テストを受ける朱莉。
「女の子にはプロは無理だって」
「とにかく投げてください」朱莉は投げられた球を強振した。
打球は外野の上を飛んで見えなくなった。
「確かにすごいがプロは打つだけではダメだ」
朱莉は球を拾うと思い切り投げた。球はこれまた外野を越えて見えなくなった。
「よし契約や!」


内海、相手が小さすぎてボール三つでツースリーです。
投げました、大きく曲がるカーブ、竹内おでん空振り!三振!
おでん、バットで地面を叩いて口惜しがっています。


おっと! 外野の審判がタイムを掛けていました!
ファンが物をグランドに投げ込んでいました、おでん命拾いしました!
内海の次の球を朱莉は強振すると球は埼玉ドームの屋根を突き破って場外を消えた。
代打サヨナラ逆転満塁ホームラン!!!


竹内おでんはその一試合だけで埼玉ドームから消えたのだった。
「たけちゃん、お帰りなさい」
「和田さん、ただいま〜」
「でもこれでいいの?たけちゃんはプロ野球選手になるのが 夢だったんでしょ」
「いいんです。あの一試合だけで満足です。 朱莉は、スマイレージが一番ですから」


「ハロパネラ 朋子 背後」


「朋、遥がお礼を言いたいって」
「工藤さんが?私は鈴木さんには何にもしてないよ」
「それでも言いたいって」
遥がやって来て 朋子に頭を下げた。
遥は 朋子の背後に気を 取られてるみたいだった。
「あの金澤さんは魔術が使えるって本当ですか?」
「誰が言ったの」 遥は紗友希を見た。


朋子は紗友希を手で合図して連れ出した。
紗友希は 朋子が見た事ない怖い顔なので震え上がって ついて行った。
紗友希と化粧室に入ると、 「歯を食い縛るの!」
紗友希が眼を閉じて言う通りにすると、
朋子拳で紗友希の顎を力いっぱい殴りつけた。
紗友希は壁に吹っ飛んで頭を強打した。


グシャっと頭蓋骨がつぶれるような鈍い音がして、
紗友希は タイルの壁によりかかったまま失神した。
朋子が5まで数えると、紗友希は眼を開けて復活した。
その時ドアが開いていて遥の顔が見えた。
朋子が睨むと 遥はドアを閉めた。紗友希を立たせると眼をのぞき込む。


「いい!私の正体がばれるような事は言わないと約束したわね」
紗友希は泣き出して、「ごめんなさい!」
「よく聞いて。私がハロパネラと知れたら、私はハロプロには いられない。
すぐに紗友希の前から消えるしかないの。それでも いいの?」
紗友希は泣きながら強く首を振ると、


「イヤ! 朋子がいなくなるなんて耐えられない! 本当にごめんなさい。
許して!もう二度としないから」
朋子は紗友希の顔をしばらく見ていたが、
「わかったわ。もう絶対に約束を破ったりしないと誓えるわね」
「誓うわ!」
「そうその言葉を信じるわ。今回は」


「さっき、遥が様子を見てたわ。あなたを殴ってるのを見たみたい」
「大変!」 「まあ、私は暴君と知れ渡ってるから、あれくらいは大丈夫よ。
それより、あなたは大丈夫と遥に言って置いてよ。それと、
私は生田さんほどには魔法は使えないからって」
紗友希はうなづくと、遥の楽屋へ向かった。
朋子は遥が自分の背後をうかがっていたのが気になった。


今日はハロプロの全ユニットが集合して賑やかな コンサートになる。
スマイレージの楽屋の前を通ると、 ちょうど朱莉が顔を出した。
朋子を見つけると声をかけて くる。
「金澤さん〜」 「たけちゃん、調子はどう」
「最高ですよ!金澤さんありがとうございます」
「なんで私に礼を言うの」


「だって、たとえ一日だけでも夢だったプロ野球選手に
なれたのも金澤さんのおかげのような気がするもん」
礼ならこちらこそ言いたい思いのなので 朋子は面映い 気がする。
朋子は置かれた差し入れの果物籠からリンゴを取ると、
朱莉にポーンと放ると朱莉は受け取る。


「そのリンゴを握りつぶしてよ。力いっぱいに」
朱莉は顔を真っ赤にしてリンゴを持つ手に力を込めたが
リンゴはまったく形をとどめたままだった。朱莉は首を ひねった。
この前までは石さえも握りつぶす怪力を見せて いた朱莉のパワーは失せていた。
朱莉は普通の女の子に戻っていた。



紗友希が戻ってきた。遥は紗友希が傷ひとつ無いようなので 納得したようだった。
「それと遥、なんか朋の後ろに何かいるって」
「何がいるって?」
「赤い巻毛の少年がいるって、眼が青いし日本人じゃないって」
「ふ〜ん、どんな感じの少年だって?」
「なんか眼が怖いって、遥少し怯えてた」


朋子は楽屋を出て廊下に出ると、遠くに遥が見えた。
遥は 朋子を認めるとあわてて去って行った。
「たぶん、エドガーの事ね」「エドガーって?」
「パンパネラのエドガーよ。大昔にヨーロッパで エドガーに会ったのよ。
エドガーは少年の 頃にパンパネラにされて永遠に少年のままなのよ」


「私は彼に気に入られて、なんでも妹のメリーベルに私が 似てたそうよ。
彼の強いエナジーを分けて貰ったの。 彼のおかげで今の私があるようなものね」
「そうなんだ」
エドガーはその後災難にあって消滅したと聴いたけど、 私の中で生きていたのね」


「へぇ〜なんかロマンチックなお話ね」
エドガーは私を妹みたいに想ってたのね。エドガーは 私の恩師みたいなものね」
「でも、そのエドガーが見えるなんて遥はすごいな」
「遥、ちょっと怖い子ね。何とか私の正体が遥に見破れないようにしないとね」
単純な朱莉と違って遥は油断出来ない。



「ヴァンパイアガール」


リハにハロメン全員が集合していた。
紗友希が「この前この中に本物のヴァンパイアがいるって、 誰なの?」
「誰だか知りたい?」「知りたいわ」
「私だって百パー確信があるわけでもないの。
ヴァンパイアの匂いがするってだけなの。でも 確かめる方法はあるわ」
「どんな方法なの?」


「私の血を相手に送り込めば劇的に変化が現れるけど、
吸血鬼に吸血鬼の血液を入れたら恐ろしい事になるわ。
でも血より弱い唾液になら大丈夫。 唾液でも相手に送り込めば、変化が起こるの。
その様子を見れば正体がわかるわ」
「どんな変化なの?」



「形相が恐ろしく変わるの、牙が伸びてくるとか」
「どうやって唾液を送り込むの?」
「簡単なのは首を噛んで送り込むのだけど、それじゃ いくらなんでも怪しまれるわ。
怪しまれない方法があるわ。 じゃあ、これから確かめて来るわね。
あっ和田さんの 好きなのは何?」 
「和田さんなのっ?!」



「和田さんは絵画や仏像が好きなの」
「それはいいわ。私はダ・ヴィンチ本人に会ったし、 聖武天皇の后だった事もあるの」
「はあああああ?!」
朋子は、彩花に近づいた。 紗友希が見ていると、
朋子は彩花に笑顔で話しかけている。 彩花は 朋子の話に興味津々に頷いている。



朋子は、側のスマメンと離すため、さりげなく彩花を連れて 紗友希の方にやって来る。
朋子はいきなり彩花の肩を抱くとその唇にキスした。
朋子は、口をポカンと開けている紗友希の前でキスを 続ける。
朋子が口を離すと彩花はしゃがみ込んだが、
その顔は真っ赤だった。牙は出ていない。



様子を見ていた花音が飛んできて彩花を起こしてメンバーの 元へ連れて行った。
「おかしいな、ヴァンパイアは和田さんじゃないみたい、
次は譜久村さんを試して見ようか」
「止めなさいよ!福田さんが怖い顔で睨んでるわよ!
朋子は和田さんや譜久村さんとキスしたいだけじゃないの?」



「違うって!」
「どうだか。それに、なんでキスしたのよ?」
「それは唾液を和田さんの口へ送り込んだのよ」
「って、キスして口から唾液を送り込むなんての方が よっぽど怪しまれるわよ。
ほら和田さん泣いてるわ」
すると由加が行って頭を下げるのが見える。


「さすがリーダーね」
「どの口で言ってるのよ、謝るのは 朋子でしょ」
「わるかったわね」と言いながら 朋子は紗友希に ドスっと腹パンチをくれる。
その内リハは始まってダンスレッスンの最中に、
「ねぇ、さっきから和田さんが私の方ばかり見てるのよ、 仕返ししようとしてるのかしら」


「それより、もしかして和田さん、 朋子にキスされて
お熱くなってるのと違うの?その方が大変よ」
「それもそうね」
その時、彩花以外にも 朋子を見つめてるメンバーがいた。
「小田ちゃ〜ん、なに怖い顔してんの〜」 「あっまーちゃん、なんでもないわ」 さくらはあわてて牙を引っ込めた。



「絆」


紗友希は 朋子の腹パンを食って、うっと屈み込んだ。
しばらく 息ができなくて苦しむ様子を見て 朋子は首をかしげた。
「どうしたの、変ね。まさか血の効力が無くなった? 紗友希腕を出して」
紗友希はあわてて、 「指を折らないで!」
「違うわ、爪で傷をつけるだけよ」



朋子が紗友希の腕に爪をたてると赤く跡がついた。
しばらくしても、その跡は治らなかった。
「やっぱり私の血の効力が失せたみたいね。もう紗友希は 不死身ではなく、
普通の女の子ね」
それを聞いた紗友希は悲しくなって
「なんか私と 朋子の絆が切れたみたい・・・」
涙がこぼれ落ちた。



「そんなに悲しいのならまた血をあげようか」
「ホント!」紗友希は嬉しそうにうなずいた。
「でも、首を噛まれるのは嫌だな」
朋子は人気の無い化粧室に紗友希を連れて行った
「首は噛まないわ」
朋子は口の中を歯で噛んで出血させ唾液と混ぜると、
紗友希の肩を掴んで引き寄せる。



紗友希はドキドキして、 朋子は口移しに血をあげる つもりなのだけど、
でもキスには違いないので、 目をギュッと閉じて顔をややあお向けた。
「唇を開けてて」 そう言うと 朋子は唇を合わせてくる。
朋子の唇を感じて紗友希の心臓は高鳴った。
紗友希の口に血の混じった唾液が流れ込む。


紗友希はそれをごくりと飲み込んだ。
その時、化粧室のドアが開いて佳林の顔が見えた。
朋子はキスしたまま紗友希の肩ごしにそちらを見た。
佳林は目を見開いたまま一瞬固まっていたが、すぐに ドアを閉めた。
唇が離れると少しの間二人は抱き合っていた。 紗友希の耳が赤くなっていた。


「さっき、佳林に見られたよ、キスしてるの」
「ええー!大変どうしよう」
「大丈夫放っとけばいいよ」
「だって誤解されちゃうよ。私佳林が好きなのに、 もう顔をあわせられないよ
それに佳林は 朋子の事大好きだし」
「ま、二人がギクシャクしてもいけないから、 なんとかするよ」
「どうするの」



「ようするに仲間に入れるのよ。佳林にもキスするの」
「仲間って、唾液を送り込むの?」
「違うわ、これ以上不死身の子が増えたら困るしね」
「それもそうね」
「紗友希、佳林とキスして、あかりともしたし、後は 由加だけか。
皆とキスしたら絆が深まるわ」
「どんな絆なんだか」



「え?何か言った?」
「い、言ってないですっ!」 皆とキスしたいだけ、とは言えない。
歩いてると、彩花が立っているのが見えた。 こちらをチラチラとうかがっている。
朋子が見ると、あわてて下を向く。 朋子は彩花に近づいた。
「和田さん、何か?」



彩花は顔を上げると、 「また、大仏様のお話聞かせてください」
朋子は笑うと、 「いいわ。大仏開眼の話、それともレオナルドに会った話?」
彩花はパッと顔を輝かせると、 「両方!」
「そう。リハの後でね」 二人は寄り添って歩き出した。




「レオナルドってダ・ヴィンチの事でしょ」
「そう、レオナルドの工房に行ったら、描き掛けの モナリザがあって
その前でラファエロが模写してたの」
「本当?!すごい!」
紗友希はハラハラしながら、そんな事言って怪しまれないかと 思ったが、
相手が純な和田さんだから大丈夫かと思う。



ふと紗友希は、花音が二人をじっと見つめてるのに気がついた、
それに、遥も同じく二人を見つめている。
頭をかかえている紗友希に、 朋子は振り返るとウィンクを 寄こした。
まあ、 朋子の事だから心配は無いと思うしかない。
紗友希は気づかなかったが、さくらも二人を見つめいてた。



さよならハロパネラ 朋子


夜道を帰る 朋子の前に、突然天空から銀色に輝く飛行物体が 降りて来た。
朋子はその物体に見覚えがあった。
円盤状のその物体から出口が降りて、全身タイツの女性が 降りて来た。
「あなたがTOMOね。迎えに来たわ」
その女性は℃-uteの舞美にそっくりだった。



「あなたは矢島舞美さんに似てるわね」
「私はMAIMIといいます。2100年から来たの」
「やっぱり。って約百年後だから違うのかしら」
あの物体はタイムマシーンみたい。
「迎えに来たと言ったわね、どういうこと」
「あなたを女王にする事に決まったの」
「はあああ?」


「パンパネラの間で揉め事が起こり、キングポーは引退する 事になって、
新しくあなたを女王にする事に決まったの。 それであなたを迎えに来たの。
早く行きましょう」
「嫌だね。そちらで勝手に決めないでよ。お断りするわ」
「実力者のエドガーの推薦で決まったの。あなたに拒否権は 無いわ」


「拒否権は無いって誰が決めたのよ!私は絶対行かないから!」
まだこの時代のアイドルでいたい
エドガーが決めたの。あなたは従うしかないの」
エドガーがなんぼのもんじゃい!無理やり連れて行けるものなら
やってみなさいよ、ハロパネラ 朋子を舐めるんじゃない!」
二人は睨みあった。


「あっいい方法があるわ。あのね、百年待ってくれない。
百年後揉め事が起こってキングポーが引退した頃に 私が行くから、
そこで女王になってあげるわ」
「残念だけど、そうはいかない事情があるの。
最近 あなたの周囲に何か起こってない?命を狙われるとか」


「あーあれはあなた達の仕業なの!ゴジラを差し向けたのも」
ゴジラなんて知らないわ。それに私達じゃないわ。
あなたの女王就任に反対する連中があなたを亡き者にしようとこの時代の
協力者に指令を送ってるのよ」
「ふん、私は不死身のハロパネラよ。なんてことないわ」


「そうも言ってられないの、あなたを襲うのが無理とわかって
あなたのまわりの親しい人を襲ってあなたを 封じ込めようと謀ってるの。
それに未来から強力な パンパネラを派遣してあなたを襲ってくるわ。
そうなれば あなたのまわりの人が犠牲になりかねないわ」


朋子は考えた末に
「わかったわ。 由加や佳林達に危険な 目に合わすわけにはいかないわ」
「わかってくれたのね。時間が無いわ、行きましょう」
「でも急に私がいなくなれば皆が心配するわ」
「大丈夫、まわりの人間に記憶操作をするわ。元々この世界には
あなたが存在しないように操作をするわ」


「ふ〜ん用意周到ね。記憶操作をするなら後腐れがないわ」
朋子はため息をつくと、MAIMIに続いてタイムマシーンに
乗り込もうとした時、
「 朋子ーーーーー!!」
と叫び声がかかった。
振り返ると、紗友希が叫びながら全力で走ってくるのが見えた


「 朋子!行かないで!」
紗友希は 朋子に体当たりするように飛びついて来た。
「紗友希!何処から湧いて出たのよ!」
「なんか胸騒ぎがして 朋子を追いかけて来たの。そしたら
朋子がUFOに連れていかれそうだったから」


紗友希はMAIMIに、
「あなたは宇宙人なの! 朋子を 連れて行かないで!」
「私は宇宙人ではなくてパンパネラです」
舞美に似てる事に気がついて、
「あなたは、矢島さん?」
「いいえ、私はMAIMI・SUZUKIです」
「え?鈴木舞美さん・・・」


「 行かないで! 朋子は何処にも行かないよね」
紗友希は 朋子を離すものかと強く抱きついて訴えた。
「私だって紗友希やメンバーと別れたくない。でもね、
私は所詮ハロパネラなの。いつかは別れの日がくるの。
私は行かなくてはならないの。わかって」


紗友希は顔をくしゃくしゃにして涙を流しながら
MAIMIを睨み、 朋子を見ると、
「 朋子と離れるのは死んでも嫌!それなら私も行く!」
朋子がMAIMIを見ると、MAIMIは首を振って
「人間以外の者は連れて行けないわ」
「誰がさるじゃい!!」


「 朋子と離れるくらいなら死んだ方がまし。行くのなら 私を殺して行って!」
紗友希の見せた事のない激しさに 朋子は心を動かされた。
「そんなに私を想ってくれてありがとう。私も紗友希を 愛してるわ。
だったら覚悟出来るわね」
「いいわ。 朋子に殺されるなら本望よ」


朋子は笑って、
「殺しはしないわ。私はこれから百年後の 未来に行くの。
それまで百年間待っていてくれるわね」
「そんな!私は百年も生きていないわ」
「だから覚悟と言うのは、ハロパネラになる覚悟よ。
これからあなたにエナジーと送り込んであげる」
紗友希は顔を輝かした。


MAIMIが時間が無いと口を挟んだので、
「少しくらい待てないの!あなたは人を愛した事が無いの?
あなたの祖先は百年前愛し合い、困難に打ち勝って結ばれたのよ。
聴いた事があるでしょ!」
MAIMIはうなずくと黙った。


朋子は紗友希を地面に寝かせると、覆いかぶさり口と手を使って
自らの全エナジーを送り込みながら紗友希にささやいた、
「これであなたもハロパネラよ。不老不死になれば百年なんて
あっという間に時間が過ぎるわ。あなたが来るのを百年後に待ってる」
紗友希はうなずきながら眠り込んだ。


朋子はタイムマシーンに乗り込みながら、
「記憶操作はどの程度の操作なの?」
「あなたを知る人間全員の記憶が消え、あらゆる記憶媒体から
あなたの名前が消えるわ」
「紗友希は?」
「ハロパネラになった者には記憶操作は効かないわ」


紗友希を捜しに来たメンバーは、夜空に流星のような光る物が
上って行くのを見た。
そして公園の明るい街灯の下でベンチに眠っている紗友希を見つけた。
4人のメンバーは紗友希を揺り動かして起こした。
紗友希は目を覚まして自分を見つめるメンバー達の顔を見た。


「 朋子は何処?」
佳林が不思議そうに、 「ともこ?ともこって誰?」
「 朋子よ、私達のメンバーの 朋子」
由加も不審そうに、 「ともこなんて人はメンバーにはいないわ」
え?と紗友希は起き上がった。
「寝ぼけてるのじゃないの」 あかりが言った。


ようやく紗友希は、 朋子が未来を行ってしまった事を 思い出した。
「そうね。 朋子なんてメンバーはいなかったわね。 メンバーは4人だけなのね」
するともう一人のメンバーが口を出した。
「おかしいわ。今はメンバーは5人よ。元は愛菜もいて 6人だったけど」


紗友希は思わずその研修生の先輩だったメンバーの顔を見た。
ようやく理解した。 朋子の存在が消えてしまい、その代わりに
この彼女がメンバーになっていたのだと。
あかりがおんぶすると言うのを断って、 彼女に背負われて紗友希は帰った。
背中が温かった。



ハロパネラ 朋子  終わり