Dark blueの絵日記

ハロプロ関連の記事が主。後は将棋と猫を少々

長浜城の外堀の唯一の橋にある正門の周りには、
槍や鉄砲で武装した兵士が何人も固めていて、
厳重な警戒態勢を敷いている。
三日前の侵入者の影響もあるし、中国攻めのために
兵力が集結している最中でもあり、城内外には
多数の兵士が詰めている。


「あれを見てよくわかっただろう、とても城内には
入れないよ、今日は帰って出直そう」


麻里はそう言って亜依をうながした。


亜依はかまわず正門の近くへ歩いていく。
麻里は仕方なく、サスケを待たして亜依の後を
追った。


亜依は、髪はお団子のままだったが服は着替えて、
着物に草履を履いていて、見たところ当時の女の子と
変わらない姿だった。


その時、一人の農夫らしい男が荷車に野菜をいっぱい
積んで重そうに引きながら城の正門に向かっていた、
城内に運び込むつもりらしい。


それを見た亜依は、咄嗟にその荷車の後ろに取り付くと
力いっぱい押し始めた。
そして正門に向かって行く。


麻里は驚いて後を追おうとしたが、兵士に睨まれて
立ち止まってしまう。


兵士は、門を開けて荷車を通した。
後ろから押している亜依を見ても何も言わない、
前の農夫の娘だと思ったようだ。


まんまと城内に入り込んだ亜依は荷車の後を
歩きながらあたりを見回した、
外庭にはたくさんの兵士が行き来している。


やがて亜依は荷車から離れてさらに城の奥へ向かった、
城内は思っていたよりは広々としていて、目指す、
希美の居る場所は見当もつかない。


亜依は目を閉じて希美の顔を思い浮かべた、


のの、何処にいるの、うちに教えて・・・


亜依は目を開けると、自分の勘が示してくれた方向へ
歩き始めた。


その頃、辻希美は屋敷の縁側の庭先で腰元の女たちと
鞠をついて遊んでいた。


縁側には秀吉が腰を降ろしていて、側には女房のおね、
後ろには秀吉の弟、小一郎秀長も控えていた。


秀吉は目を細めて、遊ぶ希美を見守っていた。


亜依が城内をののが居る場所を目指して歩いてると、


そこを通りかかった秀吉の小姓のひとり、
加藤虎之助(清正)の目に止まった。
虎之助は見なれない少女に声をかけた。


「そこで何にをしている、何処に行くのか」


亜依は振り返った。虎之助はまだ15歳で亜依と同じ
くらいの歳だった。


亜依は少年の虎之助に笑顔で話しかけた、


「うちは、ののに会いに来たの。うちくらいの
女の子がこのお城に来てるのを知ってるでしょ」


虎之助はうなづいて、


「ああ、希美のことだな、すると希美の友達なのかい」


「そうなの、ののは何処にいるの?」


虎之助は、すぐ先の秀吉の屋敷を指差した、


「あの屋敷にいるよ、お殿様に呼ばれたのかい」


亜依はうなづいて手を振ると足早に歩き出した。


虎之助は亜依の後ろ姿を見送った、
可愛い子だなと思った。


亜依は走り出していた、ようやくののに会えるのだ。
ついには叫びながら走っていた。


「のの!〜〜のの!!」



希美は、ふと顔を上げた。
懐かしい声を聴いたような気がした、戦国時代に来て以来、
亜依とは一ヶ月近く、離れ離れになってしまっていた。


すぐに、自分を呼ぶ声をはっきりと聴いて立ち上がり
あたりを見回した、


「のの!!」


中庭に亜依が走り込んで来るのが見えた、


あいぼん!!」


希美は亜依に向かって駆け寄った、


秀吉は、走り込んできた亜依を見て、
何事かと立ち上がった。


亜依と希美は体をぶつけるように抱き合うと
大声を上げて泣き出していた。


そんなふたりを秀吉は茫然と見ていた。