Dark blueの絵日記

ハロプロ関連の記事が主。後は将棋と猫を少々

さゆの影



後藤は、愛の後ろをうかがうかのような眼差しを
みせる。
愛は後ろを振り返ったが、誰もいない。


しばらく、二人は向き合ったまま視線を落として
もじもじとしていたが、
やがて後藤は愛をうながして電車に乗った。



肩を並べて腰掛けた二人だが、
なんとなく気まずい感じで二人とも黙ったまま、
やがて後藤がぽつりと言う、


「さゆみさんは元気なの・・・」


「うん。あの子はいつも元気だよ」


いつもそうなのだ。さゆの話しになってしまう。


愛は、今朝もさゆに手伝ってもらってお弁当を
作ったことを話した。
後藤は黙ってうなずいている。


やがて電車を乗り換えて、遊園地行きの電車に乗る。


遊園地に到着して、キップを買って園内に入る。
愛は後藤に、こんな遊園地なんて子供の来る所で
良かったのかと聞くと、
彼は平気だよと答えた。


そこで愛は、


「じゃあ、なんか乗らない?ジェットコースターか
なんかに」


すると彼は首を振って、
ジェットコースターは苦手だから、一人で乗って
いいよと答える。


愛はとまどった、ひとりで乗るんじゃ何のための
デートかわからない、

ふと、観覧車に目がとまった、


観覧車に乗ろうと愛が誘うと、
彼は、あまり気乗りがしないようだったけど、
仕方なくうなずいて乗ることになった。


乗ってから愛は、しまったと思う、
ゆっくりと上下に回転する観覧車の二人だけの
空間で、無口な後藤と過ごすのは、間がもたない
かもしれない。


案の定、彼は押し黙って窓の景色を見てるだけ。

そんな彼を見ていて、愛は後藤にさゆを助けて
貰ったお礼をまだ言ってないことに気がついた。


愛がそのことを言うと、彼は顔を上げて、
あの時は無我夢中で泳いだと話した。


またもさゆの話題になってしまう。