愛はあの時の事を思い出すと、体が震えだして
くる。
自分が目を離したため、さゆが沖に流されてしまい、
それを目撃してもどうにも出来ず、
気も狂わんばかりだった時、後藤が力強く
泳いで行ってさゆを助け出してくれたのだ。
彼にはいくら感謝しても足りないくらいだった。
愛が改めて礼を言って頭を下げると、
「あの後、高橋さんが人工呼吸をしたから、
さゆみさんは助かったんだと思うよ・・・」
愛は首を振った、自分は流されるさゆに
何も出来なかったのだからと思う。
さゆが息を吹き返した後、水着を脱がしていて
裸のままのさゆに、さりげなくバスタオルを
かけてくれた、そんな優しさにも心を打たれて、
愛は後藤を好きになっていったのだ。
後藤がぽつりと言う、
「高橋さんとさゆみさんがとても仲が良いのが
とてもうらやましいと思ってたんだ、
力になれて、本当に良かった」
さゆとは、いつもケンカばかりしてるのに、
はたから見れば仲が良いと見えるのかと
愛は思った。
愛は、ふと窓から隣の観覧車の中を見ると、
カップルが、肩を寄せ合っているのが見えた。
ようやく観覧車が地上に着き降りると、
隣のカップルも出てくる、
しっかりと手を握り合っている。
その綺麗な女性の顔を見ると、アイドルの
誰かに似ているような気がする、
誰なのかは、思い出せないでいたが。
愛と後藤が何となく歩いていると、
ソフトクリーム屋が目に止まって、愛は
食べたくなり後藤の顔を見たが、
彼は黙って突っ立っているだけなので、
仕方なく愛はお金を出してソフトクリームを
二人分買うことにした。
売り子の女の子は、やたら背が小さくて
髪を金髪に染めていて、その上今時
珍しいコギャルメイクをしている。
