リカは小首をかしげて、
「パパは?へんしつしゃ?なの?」
「そうよ!」
「変質者って何〜?」
「そ、その〜変なことをする人よ。
あなたのパパみたいに」
「ふ〜ん。パパは変なんだ」
「そうよ、あなたのパパは変な人・・・」
リカのパパ・・・。梨華はあの男が本当にリカの
パパとしてふさわしいのか疑問に思えた。
パパ、パパと無邪気に言うリカが理解出来ない。
二人は一緒に浴槽に浸かった。
すでに大人の体の二人が入ると、とても狭い。
リカは当然のように梨華の膝の上に腰を降ろした。
自分と同じ大きさのリカに乗られるとさすがに重い。
リカは振り返って梨華を見ると、
「梨華ちゃんって、パパと違って柔らかいね〜」
「そうなの、パパとは違うでしょ」
「ウン。ママみたい・・・」
梨華は思わず、はっとなった。
クローン人間のリカのママは、何処にもいない・・・。
梨華は後ろからリカをぎゅっと抱きしめた。
リカが不憫でたまらなくなる。
自分のDNAから生まれたリカ。そうすると
自分こそリカのママにふさわしいような気がする。
その夜、リカは環境が変わったせいか、
なかなか寝てくれない。
「リカちゃん、眠れないの」
「うん。ねえ、パパのように歌って〜そしたら眠れるの」
「そうなの、子守唄って私はあんまり知らないけど、
どんな歌なの?」
「タンポポの歌〜!」
「・・・そう、わかったわ」
見た目は へなちょこりんだけど〜♪
リカは梨華の手を握りしめて聴き入っている。
私の王子様〜♪
梨華が歌い終わると、リカはやすらかに寝入っていた。
梨華はその天使のような寝顔をいつまでも見つめていた。
しかし、夜半過ぎ梨華はリカの泣き声で目が覚めた、
とんでいくと、リカは泣きながら叫んでいた、
「パパ〜!パパは何処!」
梨華が手を握ろうとしても、リカはその手を振り払って
首を振りながら泣き叫んだ、
「パパ、パパー!!」
梨華は茫然としてリカを見つめた。
ようやくリカが寝ついたのは、夜明け近かった。
その朝、梨華がやっと目を覚ますと、どこにもリカの
姿が無かった。