Dark blueの絵日記

ハロプロ関連の記事が主。後は将棋と猫を少々

命令


 「きっとここには白馬で来たのね」


思わず笑ってしまって、
「僕はただの学生です。白馬も持ってないですし」
「そんなことないわ、白馬は家に置いてきたのでしょ」


「白馬に食べさせるどころか、自分の食べる物さえ
ろくに無い生活をしているのです」


さゆはミルクのカップを置くと、
「そうだったの。ここでは何でも好きな物を食べられるわ。
あなたの好きな食べ物を注文してもいいのよ。
友男さんはお肉は好きなんでしょ?」


私はうなずいた。本当は好きも嫌いもない、
まともな肉なんてもう何年も口にしていない。


「私は肉や魚は食べられないけど、友男さんのために
今後はお肉の料理を運ばせるわ」
「それはどうも・・・」
そういえば、さゆはベーコンエッグには手をつけていない。


その後、さゆは食事が終ったことを上に向かって告げた。
部屋の天井にあるインターホーンから返事の声がした。
それにマイクらしい物も見える。
とすると、この部屋の会話は外に筒抜けになっているようだ。
まもなく人が来て食器を片付ける。
私は何もすることが無い、


「僕はなにをすればいいのですか」
「あなたはなにもしなくていいのよ。ただ私の相手をして
一緒にテレビを観たり音楽を聞いてればいいのよ」


テレビと聞いて部屋の中を見回した、
テレビはもう何年も観ていない。
壁に大きなスクリーンがあることに気づく、
さゆはうなずくと、そのテレビに向かって腕を伸ばして
指先をひらひらと動かした。
すると、パッと画面が点いてアナウンサーらしい人が映った。


私は思わずさゆを見て、
「今、何をしたんですか?」
さゆは笑って、
「何をって、テレビを点けたのよ」
「指先でですか?」
「そうよ。正確に言えばテレビに命令したの」
「・・・・」
「あのテレビは私の脳波にリンクしてるの。
だから頭の中で命令するだけで映るの」