Dark blueの絵日記

ハロプロ関連の記事が主。後は将棋と猫を少々

永久の愛 3


クライマックスに差し掛かり、息をのんで映画を観ていた
あゆみは、ふと隣の梨華を見た。
梨華は、く〜とやすらかに寝入っている。


あゆみはあきらめてスクリーンに視線を戻した。
映画が終わりあたりが明るくなって、あゆみは
梨華を肘で突っついた。


梨華ちゃん、映画終わったよ」
梨華は目を覚ますと、あわてて起き上がる。


「あんなに楽しみにしてた映画はどうだった?」
梨華は、ばつが悪そうにあゆみを見た。
柴ちゃんの意地悪・・・ごめんなさい」
あゆみは笑って、
「昨夜は遅かったから無理もないわ。さあ、
どっかで美味しいものを食べに行きましょう」
梨華は嬉しそうにうなずくと、あゆみの腕を取った。


ふたりは腕を組んで映画館のロビーに出た。
その時、若い女性を連れた30代後半の男性が
近づいて来て、梨華に声を掛けてきた。
「やあ、梨華ちゃんも観にきてたのかい」
見ると、たしか一度番組で仕事を一緒にした、
テレビ局のディレクターらしかった、
梨華は頭を下げた。
ふと、あゆみを見るとなぜかあゆみは眼をそむけている。


その男はあゆみの方に顔を向けると、
「あゆみさん、久しぶりだね・・・」
あゆみは唇を噛み締めて下を向いている。


男性は、意味ありげな笑いを浮かべると言った、


「ま、昔のことは忘れて、また飯でも食いに行こう」
若い女にせかされてその男は去っていった。


あゆみは、体を震わせてその場に立ちすくんでいた。
梨華は、あゆみの手を取ると耳元で言った。


柴ちゃん、まさかあの人が柴ちゃんを捨てた男なの?」
あゆみは、小さくうなずいた。
とたんに梨華はさっと険しい顔になって、その男の後を
追いかけようとする、
あゆみはあわてて梨華の腕をつかまえて、
梨華ちゃん、やめて!」
梨華はあゆみの腕を振り切ると男の後を追った。


「待ってください!」


男と連れの女が映画館を出た所で、梨華の声に
その男は振り返った。


「さっきの言い草はなんなのですか!
柴ちゃん、あゆみの気持ちを考えたことが
あるのですか!」
梨華の高い声に、周囲の者が振り返る、
梨華ちゃんじゃない、と、ささやく声が聞こえてくる。
「・・・なにを言ってるのかさっぱり意味がわからん」
男の言葉に梨華は食いつきそうに言う、
「あなたが一番わかってるはずじゃないですか!
あゆみをさんざん弄んだことを・・・」


男は梨華を睨みつけていたが、梨華も負けずに睨み返し、
少しの間睨みあいになる。
梨華を追いかけてきたあゆみは少し離れた所で見ていた、
連れの女が腕を強く引っ張ったのでその男は、
足早にその場を去って行った。


梨華ちゃん・・・」
あゆみが梨華に駆け寄る。
梨華の顔を見ると、顔を歪めて必死に涙を堪えている。
あゆみはタクシーを止めると、梨華の肩を抱いて
乗り込んだ。
タクシーの中であゆみは黙って梨華を抱きしめていた。


あゆみのマンションに帰り着き、部屋に入ると
梨華はせきを切ったように泣き出した。
柴ちゃんごめんなさい、私は人前でなんて馬鹿なことを
してしまったの・・・」
あゆみは強く首を振った。
「あの男をどうしても許せなかったの、
あゆみの気持ちを思うと黙っていられなかったの」
あゆみも泣きながら梨華を抱きしめていた。