Dark blueの絵日記

ハロプロ関連の記事が主。後は将棋と猫を少々

衣通姫


今から約1600年前の5世紀にこの国を支配していた
大王がいました。
その長子の二十歳の朋志王子とその同母妹の華林王女がいました。
華林王女は大変美しく可憐な16歳の姫君で、その美しさが衣を通して
光り輝くようだと言われ、衣通(そとおり)姫と呼ばれていました。
大王の王子王女は数多くいましたが、同じ母を持つ
朋志王子と華林王女は仲むつまじく暮らしていたのです。

いつの世でも王座を狙って肉親が争うのは世の常で、
それを心配した大王は、長子の朋志王子を世継ぎと
決めていました。
しかし朋志王子が王位につくことをよからぬことと思う
群臣達は、朋志王子の異母弟の赤利王子を立てて朋志王子を
亡き者にしようと虎視眈々とうかがっていました。



そんな折、ある朝赤利王子の腹心が朋志王子の寝屋を
うかがっていると、なんと王子の寝屋から王子の妹の
衣通姫こと華林王女が王子と一緒に出て来たのです。
二人が目と目を交わす有様は尋常ではなく、
明らかに男と女の情愛を感じさせた。
当時は異母兄妹の婚姻は認められていたが、
同母兄妹が情を交わすことは固く禁じられていた。

朋志王子はいつしか妹の華林王女に恋情を抱く
ようになっていました。
もちろん同母妹の華林と肌を重ねるのは禁忌だと
承知してはいたが美しい華林への恋心はおさえ難く
ある夜、ついに華林を抱こうとした、
華林も罪の重さにおののきながら許しを請うが、
華林も兄に対して思慕の念を抱いていたため、
兄の想いに負けてしまい肌を許してしまう。



やがて赤利王子の腹心がばらまいた噂で
朋志と華林の禁断の恋は世間の知る所となる。
その噂が大王の耳にでも入れば、朋志王子の世継ぎ
など吹き飛んでしまう。
しかし王子はそんな世間の噂など意に介さず、
華林王女を愛することを止めなかったのでした。
華林も兄の朋志王子を深く愛するようになっていた。
しかし群臣の多くは朋志王子の禁断の愛情を知って
王子から離れていき、王子は孤立してゆく。

そして、ついに父の大王が崩御してしまう。
大王亡き後は本来ならば長子の朋志王子が王位を
継ぐはずなのだが、華林王女との禁忌の恋が災いして
大臣達の多くは弟の赤利王子についてしまう。
それに勢いづいて赤利王子は朋志王子を亡き者にしようと
大兵を起こして争いを挑んでくる。
それでも朋志王子はかなわずとも、わずかの兵を率いて
赤利王子に戦いを挑むものの敗れて逃れるしかなかった。



華林王女は愛する朋志王子に付き従った。
二人は赤利王子の兵に追い詰められて、山奥の小屋の
中に潜んでいた。

朋志は華林を抱きしめながら言った、

「そなたは赤利の異母妹でもある。ここを出て行けば命は
取られまい。それに元の王女として暮らすこともかなう。
そなたを死なせたくない。私のことは忘れて生きなさい」

それを聞いた華林は涙を流しながら、

「なにをおっしゃいます、私は愛する兄上に何処までも
付き従います。もし私が邪魔なら私の命を絶って逃げて
ください。兄上のために死ぬのは本望でございます」



朋志も涙を流しながら、
「良くぞ言ってくれた、では二人共に死のう。
この世で結ばれぬ二人なら、あの世で結ばれよう」

二人はこれが最後と激しく愛し合った。

やがて赤利王子の軍勢が小屋を取り囲み、王子の命令で
火矢がかけられ、たちまち小屋は炎につつまれる。

すると入り口に華林王女が姿を現した、
赤利王子は声高く、
妹の命だけは助けるから出てくるようにと言った。
しかし華林王女は笑顔を見せて、もう一人の兄の元へ
炎の中に戻ってゆき、兄と妹は互いの喉を刀で突いて
自害して果てた。