Dark blueの絵日記

ハロプロ関連の記事が主。後は将棋と猫を少々

さゆと萌

旅立ち

 

さゆは入って来た絵里の身体を見詰めた。
アイドル時代に一緒にお風呂に入って以来だった。
あの頃の絵里の身体とは少しふっくらしたような気がする。

絵里と親友以上の関係になったのは、
絵里の卒業が決まって卒業旅行とも言える六期三人での
沖縄への写真集撮影の旅での事だった。

撮影が終わった後ホテルでの一夜にさゆは絵里の
部屋に向かい、一緒にお風呂に入り絵里の全てを見て、
そして一緒にベッドに入り抱き合って結ばれたのだった。

ざっとシャワーを浴びている絵里にさゆは、
「こっちへ来て。一緒にお湯に浸かろうよ」

絵里はちょっと笑って
「二人で浸かるには狭いよ」

「大丈夫だよ。あの沖縄の時も一緒に浸かったじゃない」

絵里は逡巡していたが、うなずいてバスタブに入って来る。
さゆは両ひざを抱え込んで絵里が入れるようにする。

さゆと絵里は膝を付き合わせてお湯に浸かる。

あの沖縄での一夜のうきうきした想い出は
さゆには、もう遠い昔のような気がした。

お湯から出るとさゆは絵里の体を洗ってやる。
さゆが後ろから絵里の腰の辺りを洗っていた時、
絵里がうぅんと声を出した。

「どうしたの、痛いの?」
「うん。最近時々腰が痛くなるの」

さゆはそっと絵里のお腹に手をやり、
「そうなの。ではお腹はどうなの?」
「それがどうかすると下腹も痛む事があるの」

さゆはため息をついて、
「もうお互い三十路を超えたのだから、年なのよ」
絵里は笑って、そうだね。と言う。

突然さゆは思い当たって、

「じゃあ、最近体がだるくなったり、夜眠れなくなる
事がある?」
絵里はうなずいた。

「それに、おりものが増えたと思う事は?」

絵里は振り返って、
「そうなのよ。なぜわかるの?」

「・・・それで頻尿になったり便秘などは」
絵里は眼を丸くしてさゆを見て、
「そうなのよ。それで困ってるの」

さゆしばらく絵里の顔をじっと見ていたが、
「絵里、怒らないで聞いて、もしかして」

「何に?」

さゆ絵里の肩に手をかけると、
「もしかして、絵里は妊娠してる?」

絵里は驚いて、
「どうして、そんな事を言うの・・・」

さゆは考えながら、
「その、自分の経験から言うの。妊娠した時の」

すると絵里は少し震え出し、
「寒いわ・・・」

さゆはあわてて、
「いけない!お湯に入ろう」

二人はお湯に浸かる。

絵里はさゆの瞳を見詰めて、
「わたしね、今ひとりじゃないの」

「それって、お付き合いしてる人がいるって事?」

絵里は下を向きながら、うなずいて、
「今、好きな男性(ひと)がいるの」

さゆは大きく息をついた、
「その人の子供が絵里のお腹にいるのね・・・」

絵里は顔を上げてさゆを見ると、うなずいた。

「絵里。おめでとう」

「ありがとう」

さゆはお互いもう子供では無いのだと思う。
すでに遅過ぎるくらいなのだけど。

 

お風呂から出た絵里は、パジャマ姿の萌を見て何だか
優しい気持ちになるのを感じた。
萌もそんな絵里をまぶしそうに見ていた。

さゆと絵里は同じ部屋で休む事になったのだけど、
二人はなんとなく黙り込んでいた。

そして二人は布団を二つ並べて床についた。

さゆが絵里に、
「電気を消すよ」と言った。
そして暗くなった時、

「さゆ、そっちへ行っていい?」

「いいよ」

絵里がさゆの布団に入って来る。

「さゆは、今好きな人がいるの?」

「・・・いるよ」
「あの子の事ね」

「うん。この間ね指輪を上げたの」

絵里は、がばっと起き上がって、
「そ、それってプロポーズ?!」

「お台場の観覧車の中で上げようとしたら、
最初は受け取らないで断って来たの」

「それで・・・」

「ショックで、観覧車から飛び降りようかと思ったわ」
「わかる」

「それで麻美さんが説得してくれて、私も
飛び降りたくないから、死ぬ気で自分の気持ちを
伝えたら、わかってくれて指輪を受け取ってくれたの」

絵里はふ~と息をついて、
「良かったわ。それであの子と婚約したんだ」

「そう。あの子はまだ小学生だから、後何年かして
結婚出来きたらと思ってるの」

「そうなんだ。おめでとう」
「ありがとう。その絵里の方は、結婚は」

「その出来ちゃった婚って事で、近々式を挙げる予定」
「そうなの~おめでとう」

さゆと絵里は手を繋ぎなら眠りに落ちていった。


終わり。