Dark blueの絵日記

ハロプロ関連の記事が主。後は将棋と猫を少々

アイドルは悪魔の子供 三

モーニング娘。のリーダー岡村誉は新加入した三人の
うちのあいこには苦慮していた。

他の二人の子は歌やダンスの経験があってほとんど

問題は無かったのだけど、あいこは全く経験が

無く加入してきたので、レッスンの先生方も
教えるのに苦労してるようだった。

マネージャーからは誉にあいこの面倒を見てくれと

頼まれていた。

「だいたいあの子はオーデでは落とされる事に
なっていたのに、会長の横やりが入って
仕方なく加入させたのだけど」
マネージャーは愚痴っぽく言っていた。

歌の方は、あいこは新人では珍しく楽譜を読めるので

誉は一緒に楽譜を見ながら練習をかさねて多少は

歌えるようになっていた。

しかし、ダンスの方は中々上手くいかないようだった。

新加入の3人にとって初の単独ライブツアーが目前に
迫って来た時、マネージャーからはダンスの先生の
話では、

あいこはこのままではツアーに参加出来ないと
聞かされて誉はリーダーとして強く責任を感じていた。

他のメンバーのリハが終わっても、誉とあいこは
居残りして遅くまで懸命のレッスンを続けたのだけど、
あいこは一向に上達する気配が無かった。

そんなある日、ダンスの先生がリハを中断してあいこを
連れ出しスタジオの隅で話している様子を誉は
気になりちらちらと何度も見ていた。

ダンスの先生の大きな声が聞こえてきた。

「あいこは自分の立場を考えた事があるの!!」

その声に誉が思わずそちらを見ると、

あいこが頭を下げるのが見えた。

新加入したメンバーがまともに踊れなくてツアーに
参加出来ないとなれば、誉は過去に聞いた事も無かったし
前代未聞の出来事と言わざるを得ない。

現代のアイドルは、歌が下手でも歌割を無くせばいいし
多少の事は目をつむれる。しかしダンスパフォーマンスは

そうはいかない。

特にハロプロでは、最重要視されている。
踊れないアイドルは、全く話にならない。

誉はあいこの気持ちを思うと我が事のように
暗澹たる思いだった。あいこ

その時だった、あいこが飛び上がるのが見えて、
先生の頭の上ぐらいまでふわりと達するのが見えた。

その後リハは再開されたが、あいこはずっと外されて
座って他のメンバーのリハを見てるだけだった。

リハが終わった時、先生が誉に言った。

「誉、あいことの居残りレッスンは今日は無しにして」

誉は唇を噛みしめて何か言おうとした時、先生が、
「明日に考えてる事があるの、あいこの事はそれからよ」

「それで、あいこは・・・」
先生は笑顔を見せて、
「希望はあるよ。あの子のジャンプは素晴らしいわ。

それを生かしてある画期的なダンスの振り思いついたの」

 

誉はあいこを呼び止めて話した。
あいこは、

「わたしね、ジャンプだけは得意なの」

 

その晩、誉のスマホにダンスの先生からメールが入り

明日のレッスンの集合時間の二時間ほど前に来るように

と連絡が入っていた。

 

誉がスタジオに着くと、先生が待ち受けていた。

先生は少し興奮気味に話し始めた。

「今度のツアーでは久しぶりにつんくさんが曲を

提供してくれるのだけど、その曲、

「虹を越えろ」という題名の曲なんだけど」

誉はうなずいた。

「その曲の振り付けを変更するつもりなのよ。

初日が目前に迫っていて時間が無いのだけど、

あいこの為にどうしても変更しないといけないのよ」

「あいこの為にですか?」

「そうよ!それも誰もが驚くような振り付けになるわ!」

 

誉はかしげたが、あいこが言った事を思い出した、

『ジャンプが得意』

そしてつんくさんの曲の題名は、「虹を越えろ」