Dark blueの絵日記

ハロプロ関連の記事が主。後は将棋と猫を少々

道中

   「SARUTOBI AI 3」



越前


希美は秀吉と共に長浜へ向かった。


最初、希美は秀吉の馬に一緒に乗せられたが慣れない
馬上に怯えたので、輿に代えて行くことにした。
秀吉は希美の側に常に寄り添っていた。


希美の目に映る秀吉は、小柄で風采の上がらない
格好で信長が禿ネズミと言ったように皴の多い
貧相な顔立ちだが、目がくりっとしてどこか
愛嬌があり、希美に疲れないかと常に声をかけて、
希美もいつしか打ち解けていった。



その頃、長浜城内では秀吉の女房のおねが高橋愛に、


「そなたは越前生まれなのでしょう。でしたら越前の
府中に前田利家殿の女房のまつという、私の友達が
います。そちらへ行ってはどうですか。そなたの父母も
越前にいるのでしょう」


「ほやけどォ、今の越前には父さんも母さんもえんと
思う」


愛は、なぜだかわからないけど自分が戦国時代に
来ていることを理解していた。だから、自分の
生まれた福井(越前)に行っても家族はいないことを
知っていた。


しかし、越前になにか懐かしさを憶えて、おねの
言うとおり、まつのいる越前に行ってみることにした。
テレビで観た、前田利家やその妻のまつの本物に
興味を覚え、会いたいと思った。
それに、もしかしたら自分の先祖がいるかもしれない。



結局、辻希美が長浜につく頃には、高橋愛は入れ違いに
越前へ旅立った後だった。




姫君



夕刻、ようやく長浜に着いた秀吉一行をおねが出迎えた。


「お帰りなさいませ、そのご様子では信長様のお許しを
得られたようでございますね」


「ああそうじゃ、この首がつながって安心した。
ところで、女の子をひとり信長様より預かったのだが」


供の兵士達に担がれた輿から希美が降りてきた。
おねは、少し前数人の供の武士をつけて越前へ
向かわせた愛と同じような服装の希美を見て、
愛を知っているのかと希美に問うた。


希美は愛の名前を聴いて、入れ違いになったことを
知り、がっかりしたせいで、旅の疲れがどっと出て
その場に座り込んだ。


おねはその希美を城内に入れるとすぐに食事を
与えた。希美は出されたご飯を夢中で食べてしまうと
そのまま敷かれた布団に入り、死んだように
眠りこけた。


おねは布団を直してあげながら、


「本当に疲れたようですね。でも可愛い子ですね、
あなた様は何故この子を安土から連れて来たのですか」


「いや、そのことだがこの娘の度胸に感心したのじゃ」


秀吉は、おねに安土での出来事を話して聞かせた。


「わしら、大の男でもお怒りの信長様の前では
縮み上がるものなのじゃが、それが、この娘は
仲間の者が信長様から、まさに切られようとした
その時機転をきかして、お菓子をむしゃむしゃと食べて
信長様のいきり立った気持をそいでしまったのじゃ」


おねは希美のあどけない寝顔を眺めながら聴いている。


「この娘の幼いながらに、鬼のように恐れられている
信長様の気持を和らげてしまった、機転度胸に
ほとほと感心して、出来たら、我が娘にしたいと
思うたのじゃ」


「そうでしたか。でも、この子にも父母が
いますでしょうに」



翌朝、お風呂を使い体をきれいにした希美は、
華やかな着物に着替え、髪は昔風に下ろした姿で
秀吉とおねの前に現れた。


「まあまあ、本当にお可愛いことで」


秀吉も感心したような、うなり声で、


「本当にそうじゃ!こんな綺麗な姫君は見たことない!」


それを聴いた希美は、照れて恥ずかしそうな
笑顔を見せる。



京都


おねは希美に話しかけた。


「そなた、希美は何処から何のために来たのですか?」


希美は答えられなかった、自分自身どうなっているのか
わけがわからなかったのだ。


代わりに秀吉が言った、


「おねも、琵琶湖に降り立った巨大な怪鳥の噂を聴いて
おるだろう、そしてその怪鳥から出てきた人間達のことも」


「はい、あちこちで大層な噂になっているようですね、
この城にもその人間達が連れてこられています」


「この希美も、その怪鳥から出てきた人間の
ひとりなのじゃ」


「まあ、そうでしたか」


「その人間達は異国から来たとも言われているが、服装は
変わっているが、顔かたちは我らと同じだし言葉も通じる。
なんとも不思議なことじゃ」


「あたしたちは、東京から大阪へ飛行機で行く
ところだったんです」

希美がそう言うと、


「はて、東京?おね聴いた事があるか」


「東京などという国は、聴いたこともございません」


秀吉もおねも首をひねった。無理もない、まだ江戸さえ
存在しない時代だった。


「ではその東京に希美の父母がおるのですね」


おねは希美の肩に優しく手をおいて聞いた。

希美はうなづいた。


「そなたがいなくなって、さぞ父母も心配してる
ことでしょうに」


希美は優しそうなおねの顔を見つめていたが、
急に泣き出しておねの胸にすがりついた。


「お母さん・・・会いたいよ!」


「・・・可哀想に、母のことを思い出したのですね」


おねも、思わず涙を流しながら希美を抱きしめた。


秀吉も涙もろいとみえて、拳で涙を拭いながら、


「しっかりしてるように見えて、まだ子供なんじゃな」




その頃、明智光秀の手配によって京都の南蛮寺へ連れて
こられたミカは、ちょうど居合わせたポルトガル
宣教師、ルイス・フロイスに引き合わされた。


ルイス・フロイスは信長に気に入られ、30年も日本に
滞在して「日本史」という本を書き残して、現在の貴重な
資料となっている。


フロイスは、このミカ、(Mika Taressa Todd)と名乗り、
英語と日本語をしゃべる不思議な少女に興味を持った。


「あなたは、どこの生まれなのですか?」


「私はハワイ生まれです」


「ハワイ・・・はて?」


フロイスが知らないのも無理はない、キャプテン・クック
によって ハワイが発見されたのは、これから二百年も
後の1779年なのだ。






伊賀



当時の伊賀には、服部、百地の二つの忍者集団が
存在した。それぞれの集団には、支配している上忍が
多数の下忍を配下に置いていた。


加護亜依はその上忍の百地三太夫の元にいた。
天の配剤なのか、亜依だけが伊賀へ飛ばされたのは
なにか目に見えない力が働いたのかもしれない。


さすがに、伊賀忍者の情報収集能力は素晴らしく、
三太夫が各地へ走らせた下忍達によって、他の
ミニモニ。の3人が京都、越前、長浜に居ることを
亜依は知った。


「早くみんなに会いたいな〜、さっそく捜しに行こうよ」


「うむ、しかし京都はともかく、長浜城、越前の府中城の
二人を連れ出すの並大抵のことではない」


「え〜、おじさん達は忍者なんでしょ、なんでも
出来るのと違うの〜」


「そんな簡単にはいかぬ、長浜の羽柴秀吉
越前の前田利家と言えば、我らと敵対する織田家
中でも有数の武将なのじゃ」


「も〜、おじさん達が行かないのなら私だけでも行く!」


それを聴いて三太夫は笑って、


「それは頼もしいことだな。しかし今は戦国の世、
いかに天女とは言え、ひとりでは困難に違いない」


三太夫は手を叩いた。


「今、この百地の数ある忍者の中でも一番の
忍者を呼んだからその者と行くがよい」


ほどなく亜依と三太夫の前に、白装束、白覆面の忍者が
ふわりと音もなく舞い降りた。


「お屋形様、お呼びですか」


亜依は辺りを見回して首をひねった、まるで天から
降りてきたとしか考えられない。


三太夫は事情を説明して指示を与える。


その忍者は、白覆面を取り顔を現した。
忍者は、まだ若い女だった。


その女忍者を見た亜依は思わず声を上げた。


「ああ〜!矢口さん!」


その小さな体、後ろに束ねた茶色の髪、そして
なりよりもその顔は、ミニモニ。の前のリーダーだった
矢口真里としか思えない。


亜依は嬉しさと懐かしさでいっぱいになり、近づいて
抱きつこうとした、


「真里ちゃん〜!会いたかったよ〜!」


すると、その真里に似た忍者は亜依が近づくと、ふわっと
十メートルほど飛び下がって身構えた。


「何者ですか、この子供は・・・」


「心配するでない、この者は天女なのじゃ」


「天女・・・?」


「あなたは矢口さんなんでしょ、だって矢口さんに
そっくりだもん」


女忍者はいぶかしげに亜依を見た。


三太夫が答えた、


「いや、この者は麻里という下忍じゃが」


その時、亜依を助けてくれたサスケがやって来て、

「あっ、お姉ちゃん!帰ってきたんだね」


麻里はサスケに向かってうなづいた。


それを見た亜依はサスケの姉なら矢口さんではないと
思うしかなかったが、あまりにも矢口真里に似ている
麻里になにか納得がいかなかった。








「SARUTOBI AI」



「SARUTOBI AI 2」