Dark blueの絵日記

ハロプロ関連の記事が主。後は将棋と猫を少々

「SARUTOBI AI 最終章」

「だって、顔は矢口さんだし、名前も同じなのに
どうして矢口さんじゃないの?」
「私は、未来から来たの。もっとも、あなたも
未来から来たのだけどね。私はあなたの住んでいる
21世紀より5百年も後の未来から来たの」
「え〜、ウソ〜!」


「ウソじゃないわ、
私は26世紀から、タイムマシーンで来たの。
私と同じ名前の矢口真里のことはよく知ってるわ。
私の先祖の真里の事を調べたの。
ミニモニ。の事もよく知ってるわ。
だから、ミニモニ。の唄は大好きよ」
「ありがとう。じゃあ、麻里さんは私たちを助けに
来たの?」
「結果的にそうなるわね。
あなた達が乗った飛行機が、たまたま出来た、
時空の裂け目に吸い込まれて、この16世紀にまぎれ
こんだのを知って、調査に来たの。あなた達が勝手な
事をして、歴史が変わってしまっては面倒な事になるの」


「どうなるの?」
「詳しくは言えないけど、もし歴史が変わってしまうと
あなた達の21世紀の世界が消えてしまうかもしれない。
歴史が変わるということはそれほど大変なことなの」
「ふ〜ん、そうなんだ。でも麻里さんは2年前からこの
伊賀に来てたって聴いたけど、サスケさんは麻里さんを
お姉ちゃんだって信じてるみたいだけど、どうしてそんな
面倒なことをしたの」


「それは、私達調査員、タイムパトロールっていうのだけど
私達の正体を絶対に現地の人達に知られてはいけないの。
だから、予め何年か前にタイムマシーンで降り立って
目立たないようにその時代の人間になりすますの。
もちろん、周囲の人間の記憶操作をすることにしてるわ。
たとえば、サスケとその両親の記憶を操作して、私が
サスケの姉だということを信じ込ませるの」
「へえ〜そうなんだ。あっ!もしかしてののを記憶操作ってのに
掛けたの?」


麻里は笑って、
「そうよ。希美や、ミカ、愛ちゃん達もそれで私が矢口真里
そっくりなことを意識させないように操作したの。
でも、中には記憶操作が効かない人間も存在するの。
ひとつは、非常に優れた人間、上忍の百地三太夫もその一人よ。
彼は薄々私の正体を感づいていたかもしれないわ。
もうひとつは、特殊な能力を持つ人間。
たとえば、あなた、加護亜依という女の子」


「えぇ〜、うちのことなの?」
「なぜか、ミニモニ。の中であなただけが、記憶操作が
効かないの。あなたは不思議な女の子ね・・・。
猿の言葉を話せるところもそうだわね。
三太夫の言う、天女っていうのもあながち間違いではない
かもしれないわね」
「え〜、そんなことないよ〜」
亜依は照れて笑った。


「でも、麻里さんは本当の忍者じゃないのに、
なぜ、あんなにものすごいジャンプが出来たり、
高い木の枝を簡単に飛び移ったり出来るの?」
「それは、訓練をして体の能力を高めているし、
それを補うために、これの力を借りているの」
麻里は、いつも腕に巻いている布を外してみせた。
そこには、金色のブレスレットが巻かれていた。


「これで重力操作が出来るの。
これは、重力(引力)を弱くすることが出来るの。
無重力状態だと、体がふわふわ浮くことを知ってるでしょ、
あのような事が自在に出来るの」
「やっぱりそうなんだ、変だと思ってたんだぁ」


その時、キィッ〜とタカシが鳴いた。
「お前も麻里さんのこと、すごいって思ってたでしょ」
亜依はタカシにそう話しかけた。
「ねえ、お猿さんたちにも操作をしたの?」


麻里はうなずいた。
「普通は動物には操作は難しいのだけど、人間に近い
猿には、ある程度の記憶操作が出来るわ。
でも、猿と会話が出来るほどでは無いの。
その点、亜依のほうが優れてるわ」


えへへ〜、と亜依は頭をかいた。


その時、そう遠くない所で鉄砲の音が轟いた。
敵が近くまでやって来たようだ。
亜依は、麻里を見て、
「ねえ、この戦争はどうなるの?
魔王に勝てるの?
麻里さんが未来から来たのなら、どうなるか
全部知ってるでしょ、伊賀の人達はどうなるの」
「この戦争は、魔王、信長が起こしたわけでは無いの、
信雄が父の信長に相談も無しに勝手に起こしたの。
だから、この戦争では信雄は散々に負けて逃げ帰る
ことになるの」


「そうなんだ!伊賀は勝てるんだ」
「・・・ただし、2年後に信長が大軍で攻めてくるの」
「そうなったらどうなるの、伊賀は負けるの?
負けた伊賀の人達はどうなるの・・・」


「・・・・」
麻里は黙り込んでしまう。
「ねえ、麻里さんは未来から来たタイムパトロール
なんでしょ、
記憶操作や重力操作で何でも出来るのでしょ。だったら、
伊賀の人達を助けることも出来るのじゃないの!」
「言ったでしょ、歴史を変える事は出来ないって。
歴史が変わってしまったら大変な事になるの。
歴史は絶対に変えてはいけないし、もし歴史を
変えようとする者が現れたらそれを阻止するのが
私達タイムパトロールの役目なの」


麻里はキッパリと言った。
「でも・・・」
「まって!」


麻里は口に指を当てて亜依に黙るように制した。 
下に敵の兵士が現れたのだ。
麻里と亜依が樹上から息を殺して下を見ると、
数人の敵の兵士が通りかかった、
鉄砲を持った兵士もいる。


やがて、敵は通り過ぎて行った。
「さあ、しっかりつかまっていて、降りるわよ」
麻里はあたりを見回して誰もいないのを確認すると、
亜依を抱きかかえて数十メートル下の地面に、
すーと音も無く舞い降りた。
もちろん、重力操作の賜物なのだが。


「麻里さん、私達はどうなるの、矢口さんや他の仲間の
いる世界に戻れるの」
「心配しないでいいわ。あなた達ミニモニ。のメンバーや
ジャンボに乗って来た大勢の人達も元の世界に戻れる
ように、私の仲間のタイムパトロールが手配をしてるわ。
すぐに帰してあげるつもりだったけど、
何ヶ月も時間がかかったのは、何百人もの人数のせいと、
ジャンボがタイムスリップした、時空の裂け目が移動して
いたせいなの。その時空の裂け目も、またこの16世紀
上空に現れたようだから、今がチャンスなの」
「そうなんだ!みんなの所に帰れるんだ!」


その時、敵の声が上がった、
「誰か、いるぞ!!」


「いけないわ!敵に声を聞かれたわ」
麻里が見ると、敵が鉄砲を構えているのに気がついた、
麻里はとっさに亜依をかばって抱きしめた、


ドドォーンンッ!!と、鉄砲の音が轟いた。
亜依を抱きしめていた麻里の背中に銃弾が命中した、


「麻里さんっ!!」
亜依が悲痛なを上げる、
麻里は呼吸が出来なくなって、倒れ込んだ、
肺を撃ち抜かれたようだ。
敵が迫って来て、麻里は苦しい息のしたで
ようやく体を起こすと、拳銃のような物を取り出すと、
敵に向けた、鋭い光線が発射されて敵の兵士が
一瞬のうちに跡形も無く消え失せてしまう。


「麻里さん!!大丈夫!」
亜依は麻里を抱き起こした、
「私のことはいいから、早く逃げなさい・・・」
麻里は弱々しい声で言った。
「そんなこと出来ないよ!、麻里さん、
このままだと死んじゃうよ・・・」
「いいから、行きなさい・・・私は大丈夫。
また敵が来るから早く行きなさい」
「麻里さんを置いて行けないよ!」


亜依は大粒の涙をぼろぼろと流しながら、麻里を
助け起こそうとする。
麻里は、錠剤のカプセルを取り出すと飲んだ、
「・・・これで、しばらくは大丈夫よ」
麻里は小さなコインのような物を取り出すとアンテナを
伸ばした、無線機のようだった。
麻里は何事か無線機に話しかけていたが、


「亜依、直ちにミニモニ。の仲間の所へ戻りなさい。
あなた達、タイムスリップでやってきた全員を元の
世界に戻すセットが完了したそうよ。
あなたは、ミニモニ。の4人は一緒になって居れば
いいの。 あなた達がタイムスリップした直前の時点、
ジャンボジェット機の機内に戻してあげる。
もちろん、記憶操作をするから、この16世紀の事は
すべて忘れてしまうわ」


麻里は、亜依の瞳を覗き込んだ、
「記憶操作の効かない、あなたを除いて・・・」
「麻里さん・・・」
「早く行きなさい!ミニモニ。の仲間の所へ。
そして、あなただけが記憶しているこの事は
誰にも言わないって約束して。わかったわね」
亜依は泣きながら、うなずいた。
「約束する、誰にも言わない!
でも・・・矢口さんにも言っちゃいけないの」
麻里は力なく笑った、
「もちろん、絶対に言ってはダメ」
「わかった」
「敵が来ないうちに、早く行きなさい!私は大丈夫」


「麻里さん、また会えるんでしょ!」
亜依は振りしぼるように言った、
「いつかあなたのいる21世紀に行くかもしれないわ
さあ!もう時間がないわ、早く行って!」
麻里は、側に来た猿のタカシに言い聞かせた、
「タカシ!亜依を頼んだわよ、守って送り届けるのよ」
タカシは、まるで麻里の言葉がわかったように、
大きくうなずいた。
亜依とタカシが行ってしまった後、ガサガサと音を立てて
誰かが麻里に近づいて来る、


麻里が顔を上げて見ると、
白い覆面をした、忍者装束の者だった。
その忍者は、麻里のように体が小さかった。


「来てくれたの、真里・・・」



亜依が夢から覚めたように意識が戻ると、
ジャンボジェット機の機内にいた。
側には希美が眠り込んでいた。愛もミカもいる。



安土城


信長の命令で、各地から呼び寄せられて、
城内に留め置かれていた、ジャンボの機長をはじめ、
未来から来た人間達が、一人残らず消えうせてしまったと
報告を受けて、信長はうなずいた。
やがて、皆から古くからの信長の家臣と思われていた、
ある武士が信長の前に現れた。
二人だけになって、その武士は信長に頭を下げた。


「信長様のご協力を感謝いたします。
無事に全員が元の世界に戻ることが出来ました」
「それはなによりだった。
そなたは、あの戻った者共とは、違うようだが
やはり、未来から来たのか」
「御意のとおりでございます。いままで信長様を
偽ってきたことを、お詫びを申し上げます」
「そなたは、2年ほど前にわしの前に姿を現した。
しかし、不思議な事に他のものは、そなたをわしが
尾張に居る頃からの古い家臣と思い込んでいる
ようだが」


「それは、他の者には記憶操作をほどこしまして、
私を古い家臣と信じ込ませることが出来ました。
しかし、非常に優れた人間、すなわち信長様の
ような人間には、記憶操作が効かないのです。
ですから、信長様の信頼を得るのに苦労をいたしました。
改めてお詫びを申し上げます」
「なるほど。そなたはこの事だけのために2年前に
わしの前に現れたのか、ご苦労なことだな」
「私達は、自在に過去を行き来できるのでございます。
では、私は役目を終えたのでこれで消えさせて貰います」
「それはかまわぬが、古くからの家臣が理由もなく消えたら
他のものが不審に思うやもしれぬが」
「それは、信長様の怒りにふれて追放となったことに
していただければと存じます」


信長は笑って、


「よしわかった。過去の罪状をあげつらって、紀伊
山奥に追放してくれよう」
武士は頭を下げた。
「はて、この追放になった事も未来の歴史に載っている
ことなのか・・・」
「・・・そのとおりでございます」
その武士が立ち上がり、信長の前から下がろうとした時、


「そなたは、わしの未来を語るつもりは無いであろうが、
最後にこれだけは答えてくれぬか・・・。
わしの亡き後、天下を取るのは誰なのか。
わしの息子達は、とても天下を治めるだけの器量は無い」
その武士の姿をした、未来から来たタイムパトロールの一員は、
少し考えていたが、
「信長様の近くに天下を取るだけの器量を持っている者が
存在するかどうか、信長様にはおわかりと思われますが」
それだけ言うと、彼は姿を消した。


信長はうなずいて、
「そうか・・・あの猿が天下を取るのか」


その後、天正10年の6月、信長はわずかの人数だけで
京都の本能寺に入った。
信長は、秀吉が遠い中国戦線に張り付いたままなので、
安心しきっていたのだ・・・。


ジャンボの機内では、まもなく関西空港に着陸すると
アナウンスされた。
亜依は、やすらかに寝こんでいた希美を起こすと、
何か夢でも見たかと聴いてみた。
亜依自身は、これまでの戦国時代の事々をまるで
夢のようではあったが、鮮明に憶えていた。
希美は、なんか夢を見た気がするけど、何にも憶えて
無いと言った。しかし、


「あっ!なんか、秀吉っていう変な顔のおじさんのことを
憶えているよ。秀吉って誰のことなのかな・・・」
希美は首を捻って不思議そうに言った。
亜依は思わずほほえむと、希美の肩を抱いた。


関西空港に降りたったミニモニ。メンバーを意外な人が
待ち受けていた。


「アッ、真里ちゃんだァ〜」
希美が声をあげた。
「矢口さん、どうして、ここに?」
愛が言った。
「ミカちゃん、新リーダー、頑張ってるかい」
と、矢口。
「はい!頑張ってます」
「実はね、おいらもイベントに参加しろって
急に言われたの。
それで、急きょ、あなたたちの後の飛行機で来たのよ」


亜依は真里の姿を見て、たまらなくなった、
麻里とオーバーラップして見えたのだ。
亜依は真里に駆け寄ると、
「・・・〝麻里〟さん!!」
亜依は、泣きながら真里に抱きついた。


あいぼん、そんなにおいらに会えたのが嬉しいの
この前、会ったばかりじゃん。そんなに泣くと、
おいらまで泣けてくるじゃない」
「麻里さんがうちらを助けてくれたの。
それで、うちらは戻ってこれたの」
「なに、わけわかんない事を言ってんのよ?」
矢口は首をひねった。


「ごめんなさい、これ以上言えないの・・・」
亜依は真里の顔をみつめた。
「でも、あいぼんの言わんとしてることは、わかるよ。
おいらも新生ミニモニ。の旅立ちに元リーダーとして
出来るだけ協力して助けるから」
「はい!ありがとうございます」
新リーダーのミカがそう言って頭を下げた。


「矢口さん・・・ありがとう」
亜依は泣き声で言った。
「だから、あいぼん、泣かないで・・・。
あいぼんがそんなにおいらの事を想っててくれて
とっても嬉しいよ」
ふと、矢口は首を捻った。なぜ、後の飛行機で来たはずの
自分が、ミニモニ。より先に着いたんだろう・・・。


イベントがすべて終了して、控え室で真里は一人だけに
なって、感傷にひたっていた。
イベントの花やかな余韻を噛み締めながら、自分が作り出し、
大事に大事にしていた、ミニモニ。から旅立って行くのは、
たまらなく寂しかったが、
ミカをはじめ残されたメンバーの力強い歌声を聴いて、
心残りは無かった。


その時、ドアが開いて誰かが入って来た。
やたら体が小さくて頭は茶髪で、顔は、その可愛い顔は
どっかで見た事のある顔だった・・・、


その顔は、毎日鏡で見ている自分の顔そのものだった。


「あんたは誰よ!!」
その女の子は笑いながら、
「私は、ヤグチ・マリというの」
真里は混乱して、
「何だって!あんたが矢口真里なら、
今、ここに矢口真里は、誰なんだよ・・・」
「落ち着きなさいよ。とにかくミニモニ。を知り尽くしている
あなたが必要なの。これから一緒に16世紀に行きましょう。
詳しい事は後で話してあげる」


麻里と真里は、まだミニモニ。がタイムスリップしている
当時の16世紀の戦国時代にタイムマシンで向かった。



天正9年9月3日、織田信長は諸将に伊賀攻めを命じ、
4万2千の大軍で押し寄せた。
伊賀の国衆や、服部、百地の忍者集団も果敢に戦ったが
結局は信長の大軍の前に屈した。


伊賀の住人たちは、老若男女を問わず皆殺しにされたと言う。
上忍の百地三太夫ら伊賀の忍者集団も最後まで戦って死んだ。


配下の麻里がどうなったかは、記録に残っていない。

    

           完