Dark blueの絵日記

ハロプロ関連の記事が主。後は将棋と猫を少々

「SARUTOBI AI  5」

   「SARUTOBI AI 5

確信


麻里が地面に激突して横たわっている敵の忍者の側に
立っていると、
すぐに三太夫サイゾーがその場に駆けつけてくる。

「殺したのか!」

麻里は油断無く、地面に大の字に横たわっている敵を
見据えながら、

「いえ、すぐには死なないようにしておきました」

と、事もなげに言う。

倒れていた敵が目を開けた、鼻や耳からも血を
流していたが、最後の力をふりしぼって麻里に、

「おぬしには負けた、とても人間業とは思えぬ、
天狗か妖怪か、冥土のみやげに正体を明かしてくれぬか」

「その前に誰の指図か白状するのが先だよ・・・」

麻里が敵の側にひざまずいた時、はっと気づいて
立ち上がる、

火薬の匂いだ!危ない、下がって!!」

さすがに、三太夫サイゾーは忍者らしくすぐに大きく
跳躍してその場を離れた、

麻里も跳躍しようとした瞬間、後ろに亜依が居るのに
気がついた、

麻里は、咄嗟に亜依をかかえると思い切りジャンプする。

この間、わずか一秒ほどの出来事だった。

麻里は亜依を抱きかかえたまま、大きく上空に
飛び上がった。

地上では、敵の忍者が体に隠していた大量の火薬が
大爆発を起こし、その体が粉々に噴き飛んでいた。

麻里と亜依は上空高く飛び続け、ゆうに百メートル
ほど離れた地上にふわりと降り立った。

少しの間、ふたりは抱き合ったまま立ちすくんでいた。
ふたりは背の高さが同じくらいで、亜依は麻里の顔を
目の前に見た。

「怪我はなかったかい」

麻里の言葉に、亜依はうなづきながら、
やはり、この人は矢口さんに違いないと確信した。

しかし、あんな人間離れした術を矢口さんが
使えるはずが無いのだけど。

それに、矢口さんはあの飛行機には乗っていなかった
はずなのだけど。

おいら

亜依は、背中を見せて歩いて行く麻里に声をかけた、

「矢口さん!」

麻里は、一瞬ビクッとしたように、立ち止まった。
すぐに振り返ると、

「さっきから矢口と呼んでるけど、おいらはそんな
名前じゃない!おいらは、ましらの麻里というんだよ」

ましらって、なんのこと?」

ましらというのは猿のことだよ。その矢口って
いう人は誰なんだ」

「前のミニモニ。のリーダーで、矢口真里っていうの、
麻里さんと体の小さいところや顔までそっくりなんだ、
それに矢口さんも自分のことを、おいらと言うよ」

「くだらない、ただの他人の空似だよ!」

麻里は走り去って行った。

たしかにこんな所に矢口さんが居るはずがない、でも、
亜依は、戦国時代に来てしまったうちらを矢口さんが
助けに来てくれたと思いたかった。

だけど、矢口さんだとして何故それを隠さないと
いけないのか亜依には、わからない。

ミニモニ。のメンバーを救出するための出立を前に、
麻里の亜依への厳しい特訓が始まった。

小川

亜依の特訓と言っても、麻里の指示でその辺を
走らされたり、生垣の上を跳躍したりする
だけだった。

亜依が息を切らせて走らされていると、
麻里は、同行する事になったサスケを修練のため
一緒に高い木の枝から枝へ飛び回っている。
まだ未熟なサスケが足を滑らせて落下すると、
麻里は鉤爪のついた縄を投げ引っ掛けて助ける。

亜依が休んで木の上のふたりを眺めていると、
麻里が側にふわりと舞い降りる。

「どうしたの!もう休んでるのかい、
走って走って」

「も〜、走ってばっかりだよ、なにか術を教えてよ〜」

「なに言ってんの、術なんて十年早い!」

「だって走ったり飛んだりしたりばっかりじゃ
つまんない〜」

すると麻里は、思惑ありげに亜依を見ると、

「じゃあそれならば、お前にも出来そうな術の
ひとつを教えてあげる」

麻里は川幅が4、5メートルぐらいの小川に亜依を
連れてくると、持ってきた長いムシロを小川に投げ
入れて浮かべた。 水の深さは50センチぐらいだ。

そしてまず自分がそのムシロの上をなんなく
スタスタと歩いて渡り向こう側へ上がる。
とても水の上のムシロとは思えない軽さだ。

亜依が感心していると、麻里は次にサスケに
渡るように言う。

さすがに、サスケは小川から少し離れた所から
慎重に息を詰めていたが、やがて走り出し、
小川のムシロの上を水しぶきを上げて走り、
なんとか渡りきる。

「さあ、亜依の番だよ」

「・・・なんかコツを教えてよ」

「それは簡単だよ、片足が沈まないうちに、
もう片足をついて、その足が沈まないうちに、
もう片足をつくんだよ、その繰り返しだよ」

亜依は小首をかしげたが、その通りにやって
みることにする。

「おっかなびっくりでそっと足を出してもダメだよ、
思い切り走って渡るんだよ」

亜依は思い切って勢いをつけながら小川の
ムシロの上に片足を載せた。

ザブーーンッ!!と大きな水しぶきが上がり、
亜依は小川の中にはまり込んだ。

いっきに水の中に頭まで沈み込んでしまう、
水を飲み込んでしまい、あっぷあっぷしながら
手足をバタバタさせてもがく。

あわててサスケが助けに飛び込んでくる、
なんとか亜依を岸に助け上げる。

亜依が息も絶え絶えに、顔を上げると、

麻里が腹をかかえて、けたたましく笑い出した。

亜依は全身びしょ濡れになって睨んだ、笑い方も
矢口さんそっくりだ。

麻里は笑いをこらえて、

「どうやら体が重すぎたようだね、術の難しさが
よくわかっただろう」

そう言うとくるりと背を向けると歩き出す。

頭にきた亜依は、麻里が遠ざかると小声で言う、

「へんだ〜、ウソなんか教えちゃってさ〜、
いつかカンチョウしてやる・・・」

ましら

翌日、麻里は亜依を山へ連れ出した。

奥深い山をどんどん登って行き、けもの道を草木を
かき分けていく。

軽々と登って行く麻里の後を亜依はヒイヒイ言い
ながら必死に追いかける。

「ねえ、まだ登っていくの・・・」

亜依が、はあはあと息を切らせながら言うと、

「泣き言はいわないの、もうすぐだよ」

やがて麻里は森の奥の少し広くなっている場所に
着くと、口に手を当てると大きな声を出す、

「ホォ〜〜〜イ!ホォ〜〜〜イ!!」

すると、何処からとも無く一匹の猿が現れた、
そして見る間に何匹もの猿の群れがゾロゾロ姿を
現してくる。
子猿を背中に乗せた母猿もいる。

「うわ〜!お猿さんがいっぱいだ〜」
亜依は驚きの声を上げる。

麻里は数十匹の猿の群れに近づくと懐から
ドングリをつかみ出すと猿に与える。
猿たちは麻里の周りに群がってドングリを麻里の
手から受け取ると、器用に皮を剥いて口に入れる。

「おいらが、ましらの麻里と呼ばれる理由は、
猿の群れを自由自在に操れるからだよ」

麻里はそう言うと亜依の側に来て、ひとつかみの
ドングリを手渡す、

「ほら、猿の大好きなドングリだよ、与えてごらんよ」

亜依はドングリを近くに来た小さい子猿に与える。

「可愛いね〜」

夢中で食べる子猿を座り込んで見つめる亜依に、

「そんなに可愛いなら、抱いてごらん」

麻里はいきなり子猿を捕まえると、亜依の
腕に抱かせる、
子猿は驚いたのか、キィッキィーッ!!
悲鳴を上げたその時、

子猿を助けようとしたのだろう、
ひときわ体の大きいオス猿が猛烈な勢いで
飛び出してくると、鋭い犬歯を剥き出しにして、
亜依に襲いかかってくる!

麻里は、当然亜依が怖がって逃げ出すものと
思い見ていたが、

その時不思議な事が起こった、

亜依は逃げもせず、オス猿の前にしゃがみ込むと
猿に向かって何かを話しかけてるように見える、
オス猿も不思議そうな顔をして、なにやらキィキィ
亜依と話してるようだ、
抱かれた子猿もおとなしくなった。

そのうち、亜依の周りに猿が集まってくる、
そして猿たちは亜依に、キィキィと話しかけ、
亜依も同じように話しかけてるように見える・・・。