Dark blueの絵日記

ハロプロ関連の記事が主。後は将棋と猫を少々

元禄の楓 最終話 一

北町同心の広瀬は、玲奈の働いている居酒屋に
呑みに来ていた。

すると酒の肴とお銚子を運んできた玲奈が、
「広瀬様、後でお話があるのですが聞いて頂けますか」

広瀬は少し首を捻りながら、
「ああ。かまわないよ。玲奈はお勤めは何時頃

終わるのかい?」
「ありがとうございます。後、半時(一時間)で

終わります」

「わかった。一杯呑んだら、一緒に蕎麦屋に行こう」

広瀬は蕎麦をたぐりながら、
「それでどんな話かい、楓さんの事かい?」

「はい!そうなんですが」
怜奈は蕎麦にはほとんど手を付けないで考えていたが、

「先日、楓姉さんがお店に会いに来てくれたのですが、
しばらく、一月ほど楓姉さんと会えない日が

続いていたので久しぶりに姉さんに会えてとても

嬉しかったのですが・・・」

広瀬はうなずきながら、そう言えば自分も一月以上
楓さんとは会えなかったなと思う。

「お勤めが終わって姉さんと一緒に歩いていたの

だけど、姉さんはしばらく黙っているので、

気になったのですが、ようやく話し始めて、

わたしの事を、元気でやってるの、
お店も慣れてきたみたいね、店の人やお客さんには
可愛がってくれる?とか聴いてくれて、
わたしがいちいちうなずくと、立ち止まって
嬉しそうに笑顔でわたしを見て、

もう玲奈は大丈夫だね。もうひとりでもやって

行けるね。頑張ってね。って言ったんです」

広瀬はうなずきながら玲奈の顔を見たら、
怜奈がとても悲しそうな顔をしてるのに気がついた。

「その時、突然楓姉さんが何処か遠くに

行ってしまうと思えて来たんです。それで姉さんは

わたしに別れを言いに来たんだと思ったら、急に

胸がいっぱいになって、でもそれを姉さんに聴くのは、

とても怖くて言い出せなくて、
それで楓姉さんが手を振って離れて行くのを見送る

しか出来なくて・・・」

箸を止めて玲奈の話しを聞いていた広瀬が顔を上げると、
怜奈の瞳から一筋の涙が流れ落ちるのを見て、
何も言えなくなっていた。


翌日、元禄16年11月23日(1703年12月31日)午前2時頃、
関東地方は、巨大地震に襲われた。

続く。