Dark blueの絵日記

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元禄の楓・最終話 二

元禄大地震

 元禄16年11月23日(1703年12月31日)午前2時頃、
関東地方は、巨大地震に襲われた。

この大地震震源は、房総半島南端近くの相模灘で発生した。
マグニチュードは7.9~8.5と推定されている。
上総、相模では特に揺れが強く、建物の倒壊、火災や、
七メートルもの津波が押し寄せて甚大な被害をもたらした。

震源からやや離れていた江戸では比較的被害は軽かったものの、
江戸城諸門や各藩の武家屋敷などが倒壊し町内では長屋や町屋
などが倒壊してかなりの被害が出ている。

地震が起こったのが、午前二時(丑三つ時)頃だったので、
長屋で寝ていた玲奈は、激しい揺れに飛び起きた。
あわてて外に飛び出そうとしたが、寒さで布団の上に
被っていた半纏(はんてん)を引っつかむと外へ逃れた。

長屋の住人達も次々と外へ飛び出して来る。
怜奈はまだ揺れが続く中、半纏を被っていても襲ってくる
寒さに震えていた。それでも今にも倒壊しそうな長屋には
とても戻れない。

やっと揺れが収まってくると、真っ先に玲奈が思ったのは、
楓の事だった。自分の事よりも楓姉さんは無事なのかと、
心配でたまらなかった。
しかしこの真夜中ではどうにもならなかった。
寒さの中でしゃがみ込んで寒さに堪えながら
夜が明けるのを待つしかなかった。

ふと玲奈は、自分の名前を呼ばれたような気がして
顔をあげたら提灯の灯りが見えて、段々近づいてくる。

「玲奈ーーーー!!」

今度ははっきりと自分を呼ぶ声を聞いて、
怜奈は立ち上がった。
楓姉さんの声に違いなかった。

提灯の灯りがすぐ近くに寄って来て、楓姉さんの顔が
見えて来た時、玲奈は涙が込みあげてきて、

「楓姉さんーーーー!」

楓姉さんが無事だった事、そして、怜奈の事を心配して
駆けつけて来た事がたまらなく嬉しくて、
玲奈は号泣しながら楓の胸に飛び込んで行った。

「玲奈、無事だったんだね。良かった、良かった」

怜奈は楓の声を聴きながら、強く楓を抱きしめていた。

楓と玲奈はしっかりと抱き合いながら夜が明けるのを
待ち続けていたが、
ようやく長く不安だった夜が明けてきた。

怜奈が住んで居た長屋の同じ棟の長屋の中には
大きく倒れかかっていて、半壊状態の長屋も多かった。

そして時より襲って来る大きな余震に子供達や
おかみさん達の悲鳴が上がる。

怜奈も余震の度に楓に強くしがみ付いていたが、
何とかそれも収まると、
楓は立ち上がって、
「・・・私はこれから行く所があるけど、
この長屋の様子では玲奈をこのまま置いとく
わけにはいかないし一緒に来るかい?」

怜奈は大きくうなずきながら、
「はい!行きます!」

楓と玲奈は、しっかりと手を繋ぎなら歩き出した。


続く。