Dark blueの絵日記

ハロプロ関連の記事が主。後は将棋と猫を少々

太刀

  「SARUTOBI AI 2 」


信長


「お前は、わしに意見するつもりか・・・」


「意見ではありません。ただ、もう少し人の心という
ものを考えていただければ、家臣から裏切られるなどと
いうことはなかったのです・・・」


「なに!わしは家臣から裏切られると言うのか!」


機長は、つい口をすべらせてしまった。


「蘭丸、太刀を!!」


信長は、蘭丸の差し出した太刀をギラリと引き抜いた。




「下郎のぶんざいでわしに意見するとは、身のほど知らずめ!!」


信長は一段下の広間に降りると、太刀を引っさげて
機長に近寄ってくる。


さすがに機長も信長の形相に顔面蒼白になって、
逃げようにも腰が抜けたようになって動けない。


男性パーサーは居並ぶ家臣たちを助けを求めるように
見たが、皆そ知らぬ顔をしている。


信長を止められる者など何処にもいないのだ。
下手に止めようものなら、自分の首が飛んでしまう。
それにこういう事はよくあることなのだ。


信長は機長に近寄り、太刀を大上段に振り上げた。


「機長!!」


女性パーサーが悲鳴を上げたが、もうどうにもならない、



その時だった、希美がすっと立ち上がった・・・。




白いボンボン



太刀を振り上げた信長は、横を希美が歩いて行くのを
見て一瞬、動きを止めた。


希美は、イエローのパーカーに赤いチェックの
ミニスカートでいつものように髪を白いボンボンで
止めていた。その姿はやけに目立ち、その場の全員が
目で追っていた。


希美は、信長の座っていた上座に歩いて行き、
そこに腰を降ろすと、たかつきに乗っていたお菓子を
つかむと口に入れた。


あたりは奇妙に静まり返り、ちょこんと座って
お菓子を無心に食べている希美に皆の視線が
釘付けになる。


太刀を振り上げたまま棒立ちになっていた信長は、
ようやく我にかえると、ギラリと不気味に光る太刀を
引っさげたまま希美に近づいた。


その太刀が一閃すれば、希美の小さな体など真っ二つに
なってしまうだろう。


「そなたは、腹が空いておるのか・・・」


信長が声をかけると、
希美は、無邪気に信長を見上げてうなづいた。


希美は15歳だが、表情や仕草はまだ幼なく見える。


信長はうなづくと、どっかりと上座に腰を降ろした。
そして希美がお菓子を食べるのを眺めていたが、


「娘。・・・こちらへこぬか」


すると希美はすっと立ち上がると、信長の膝の上に
ちょこんと腰を降ろした。


蘭丸があわてて咎めたが、信長は良い良いと、すっかり、
表情を和らげている。


希美は、まだ信長が掴んでいた太刀を見て言った、


「危ないから、刀は仕舞って」


信長は、はっと気がつき、


「おお、そうか、そうか」


と、太刀を蘭丸に渡した。


蘭丸が太刀を鞘に収めると、誰ともなく安堵のため息が
もれた。


「そなたは、名は何んと申す」


信長が顔を覗き込むように問うと、


「希美です」


希美は首を振り向けあどけない笑顔で答えた。


「のぞみか。良い名前じゃ」


すっかり、上機嫌になっている。


そして希美の髪留めの白いボンボンを珍しそうに
指で触れている。




秀吉



機長は全身の力が抜けたように肩を落としていて、
女性パーサーがその肩に手をかけていた。


ふと、乗客の男性が振り返って家臣たちの方を見ると、
全員が信長とその膝の上の希美に向かって一斉に
平伏していた・・・。


少しして、その中の秀吉が前に進み出ると信長に
声をかけた。


「上様!それがしには子供がおりませぬ、その娘は
この秀吉めに預けさせて貰えないでしょうか・・・」


それを聴いた信長は、希美の顔を覗き込むと、


「そなた、あの禿ネズミの所へ行くか」


「はい」


希美は、その意味もわからずに無邪気にうなづいた。


やがて信長は、希美を優しく膝から降ろすと立ち上がり、


「その者どもを下がらせ、ただちに食事を与えよ!」


そう言い残すと広間から出て行った。


戻った希美を女性パーサーが抱きしめた。


機長が希美に、


「辻さんありがとう。あなたがいなければ、
私はどうなっていたか」


「え〜、あたしはなんにもしてないよ〜」
希美は笑顔で言った。


信長は歩きながら、家臣のひとりを呼び寄せて
耳打ちをする。


「あの者どもを、丁重に部屋に入れて置け。そして、
厳重に監視して絶対に部屋から出すな」


信長は機長たちへ不審の念を解いたわけではなく、後日
ゆっくりと調べるつもりだった。


信長は希美のことを考えて首をひねっていた、
いきり立っていた気勢がそがれてしまった希美の行為は、
故意か偶然か判別しがたいことだった。
見たところあどけない少女に過ぎないのだが。


結局、機長らは安土に留め置かれ、希美は秀吉に
連れられて長浜へ向かうことになった。


希美は別れ別れになったミニモニ。の他の3人が
心配だったが、きっと何処かで会えると信じていた。


希美は知らなかったが、長浜には高橋愛
いるはずだった。