Dark blueの絵日記

ハロプロ関連の記事が主。後は将棋と猫を少々

わかってないじゃない


正樹は、東京駅のホームで裕子を迎えに来ていた。
やがて列車が到着して、ほどなく裕子が姿を現した。
しかし、裕子は正樹の前を素通りして、
出口へ向かおうとした、


「裕ちゃん!」
正樹は追いかけて行って裕子の腕を掴んだ。
裕子は、びくっとして振り返った。

「正樹・・・」
「良かった、俺を忘れてしまったわけじゃないんだな、
あれほど、迎えに行くって言ったじゃない!」

「来いへんかと思ってたの」
「なんだよ〜裕ちゃんにとって俺の存在は
そんなものなのかよ!」

裕子は笑った。
「すぐむきになるところは、まだ子供やな」

正樹は、口をとんがらして裕子の旅行カバンを
奪い取るように持つと、改札口へ向かった。

乗り換えのホームに立つと、
「裕ちゃん、どっか宿は取ってあるの?」
「一応、ホテルを予約してあるんやけど」

「水くさいな、俺の所に来なよ」
「それが、怖いやないの」
「なにが怖いんだよ!」

裕子は正樹のアパートの部屋に入って見回した。
「意外と綺麗やないの、もっともうちが来ると
知って大あわてで掃除したんやろな」

「そんなことないよ!」
「別に隠さへんでもええよ。正樹ぐらいの
男の子の部屋が汚いのはわかってるよ」

喉の渇きを覚えて、裕子はコップを取ると台所の
水道から水を出して、ひと口飲んだ。

「えらい不味い水やな、東京の水は臭いと
聴いてたけど、ほんまやわ」

その時、いきなり正樹が後ろから抱き付いて来た、
「裕ちゃん〜!」

そのはずみに裕子の持ってたコップの水が勢いよく
飛び出した。

「なにすんの!ビックリするやないの!」
「裕ちゃんが来るのを、俺、俺・・・」
「出すもんも出さないで、待ってたの」

正樹は裕子をその場に押し倒した。


一戦済ました後、一息入れて食事がすんだ後、
また正樹は裕子を抱いた。


一段落ついた後、裕子は正樹の髪を優しく撫で
ながらつぶやいた。

「うちなぁ、この東京に夢を果たしに来たんよ・・・
ほんまにうちのこれからの人生がかかってるんよ
自信はある。あるけど、正直不安なんよ、
不安で不安でたまらないんよ・・・」


正樹がまた体を起こして、裕子を抱きしめて来る。
「抱いて、もっと強よう抱いて。うちの不安を壊してしまう
ほど強よう抱いて!」

裕子は正樹の首に強く腕をまわした。