Dark blueの絵日記

ハロプロ関連の記事が主。後は将棋と猫を少々

訪問


突然のメールだった、このPCのアドレスは、
月に一度、義務付けられた報告だけのための
アドレスだから、
石川さんは、これを担当者から聴き出したことになる。
メールには過日のお礼が書かれていた、
彼女を車で放送局まで送ってやった日のことだった。
二人の“梨華”が偶然に出会った日でもある。


俺に会いたいと書かれている。
もちろん、目的はリカに会うために違いない。
ついに石川さんは、あの日出会ったリカが
自分のクローンだということを突き止めた
ようだった。


考えた末に、俺は返事出さないで無視することにした。
あの日石川さんと別れた後、もう二度とリカを
石川さんと会わせないと誓ったばかりだった。
ところが、二、三日して今度は俺のケータイに
石川さんが電話を掛けてきた。


彼女にどうして俺のケータイの番号を知ったのかと
問いただすと、石川さんは先輩の名前を出した。
石川さんは、失礼を詫びた後俺とリカにどうしても
会いたいと告げた。


先輩は、俺とリカを結びつけてくれた恩人だった。
廃棄処分になるはずだったリカを救い出し、俺の
元へ戻してくれたのだ。
その先輩を通じて会いたいと言って来た石川さんに
会わないわけにはいかなかった。


嫌な予感がした。


俺は石川さんに、リカがクローン・人間だということを
絶対に言わないと約束してくれたら、リカに会わせると
言った。
石川さんは承諾してくれた。


リカはもう、少しずつ物事をわかり始めた時期だった、
もし自分が普通の人間ではなく、バイオテクノロジー
結果作り出されたクローン・人間だと知った時の
衝撃は想像出来ないものだった、
そんな辛い思いを絶対にリカにさせたくない。



リカは、やってきた石川梨華さんに大喜びでぴったり
寄りそってあれこれしゃべり始める。
石川さんはうなずきながらそんなリカをじっと見つめている。


俺は複雑な心境で二人の女性、リカと梨華を見ていた、


石川さんが何の目的で会いに来たのか、わからなかった。
ただリカに会いに来ただけではない気がする。


リカは立ち上がると、石川さんのユニットの歌を振りを
つけて歌いだした。
たどたどしいが歌だが一生懸命に歌うリカを見た、
石川さんの瞳からひとすじの涙がこぼれ落ちた。


「・・・リカ、パパは石川さんと大事なお話があるから、
お隣に行って、綾ちゃんと遊んでてくれない」


俺がそう言うとリカはつまらなそうな顔をしていたが、
素直にうなずくと、いつもの遊び相手の隣の5歳の
女の子、綾ちゃんの所へ行く。


リカが去った後、俺と石川さんの間には重苦しい空気が
流れていたが、
やがて、石川さんが顔を上げて切り出した。



お願いです!リカちゃんを私に返してください!



ええっ〜〜?!!







石川さんは続けた、


「私に寸分違わないリカちゃんに出会ってからは、
そのことが私の頭を離れなかったの。
私達ハム。のクローンの事は知っていました。
しかし、私のクローンは培養に失敗して存在しないと
聴かされていたのです。
でも、やはり私のクローンは存在していたのですね」


「・・・そういうことになりますね」


「なんだかリカちゃんを見てると不憫でしょうがないんです、
リカちゃんは私のDNAから生まれた、もうひとりの私なんです、
だから、リカちゃんを私に返してください!
みかけは大人の女性でも、中身はまだほんの子供だと聴いて
います、私が引き取って育てます。
お願いします!返してください!」


俺は言葉も無く石川さんを見つめた、


たしかに、リカは石川さんのDNAから生まれたのだから、
たとえて言えば、石川さんはリカの生みの親とも言える。
しかし、俺にだって言い分はある、
俺はリカの育ての親なのだ。