Dark blueの絵日記

ハロプロ関連の記事が主。後は将棋と猫を少々

聖少女 19


最後の晩餐 一


『食肉にする家畜は屠畜される前に疾病に感染してないか
健康状態を確認します。
すこしでも疾病の疑いのあるものは、はねられ健康な
家畜だけが屠畜される。

屠畜の第一段階として、家畜の額をスタンニングボルトで
銃撃します。火薬によってボルトが数センチ飛び出し、
頭蓋骨を強打して家畜を失神させます。

苦しませないため銃撃は確実に行います。
失神した家畜の喉を速やかにナイフで切り開き、
心臓に近い大動脈を切断して失血死させます。


解体するため屠体の足にチェーンを巻き吊り上げます。
喉の切断部分周辺の外皮を剥皮した後、頚椎部分を
ナイフで切断して頭部を切り離します。

腹部を切開し、胃・腸・肝臓・心臓等を取り出します。
バンドソー(ノコギリ)などで脊柱の中心部分を背割りを
して切断します。

背割りした枝肉の脊柱に残っている脊髄はナイフで
完全に除去されます。
枝肉は0℃前後の冷蔵庫に保存された後調理される』



さゆや少女達は下がってから一時間近くたっていた。
これから何が起こるのか、いらいらと落ち着かない気分だった。

山口に、
「これからどんな儀式が始まるのか、さゆがどうなるのか、
そろそろ教えてくれてもいいじゃないですか」

山口はワインのビンを空にして飲み干すと、
「知りたいか」

「もちろん知りたいです。何が起こるのか、心構えをした方が、
安心出来ます」

「心構えか確かにそうだ。よし、その心構えの元が来たぞ」


山口が指し示す方を見ると、白い服のコック帽の男がお盆を高く
掲げて会場に入ってくるのが見えた。

お盆には金属製の覆い(クローシュ)がしてあった。

山口が、
「あれは給仕長だ。最後の前菜の食材を皆に見せに来たのだ」

給仕長は最初に総統や政府のお偉方のテーブルを回って、
テーブルに置いてクローシュを開けて中身を見せているようだが
遠いので、それが何なのかこちらから見えない。

その後給仕長は次々と各テーブルを回ってお盆の中身を見せて歩いている。
そのお盆が回って来ると、各テーブルのゲスト達は手を合わせて祈るような
仕草をしていた。


ようやく、私達のテーブルに給仕長がやって来た。

お盆をテーブルに置くと、おもむろにクローシュに手をかけて開けた。


そこには、あの金髪で面長の美少女の生首があった。


少女の生首は、まだ生きてるかのように目を開けて無表情のままだった。
一瞬、その首がまるで作り物の人形の首に見えて思わず凝視した。


すぐに本物の少女の生首とわかって、全身があわ立つ様な震えを感じて、
大きく腕を振って、給仕長にそれを持って行くようにと示した。
給仕長はお盆の生首の上にクローシュを被せると持ち去って行った。


私は全身の震えが止まらないので、テーブルに突っ伏したまま
しばらく唇を噛み締めていた。

ようやく顔を上げて山口を睨みつけて、
「これは、いったいどういう事なのですか!」

山口は、給仕を呼びまたワインを持ってこさせて、
ワインをひと口呑むとおもむろに口を開いた。


「今夜の晩餐会の主菜、メインディッシュは、さゆみ様なのだ」


「それは、比喩的な事として言っているのですか・・・」

山口は首を振ると、
「文字通りの意味だ」


私は目をみはって、
「まさか・・・今夜の主菜としてさゆを」

山口はうなずいた。
「そうだ。この後さゆみ様は優秀なコックの手によって
調理されるのだ」

「はあああああああぁっ〜〜〜??!!!」
私は思わず椅子から立ち上がった。