Dark blueの絵日記

ハロプロ関連の記事が主。後は将棋と猫を少々

葉月 2

葉月は言った。
「私もアイドルになれるかしら」

「えっー葉月さんはアイドルになりたかったの?」
「そう。子供の頃テレビでアイドルが歌うのを観て
自分もそうなりたいなって憧れてたわ」

「そうなんだ。私達のハロプロのアイドルは?」
「もちろん好きだったわ。モーニング娘。もそうだし、
りんごさんもテレビで観た事あるわ」

「私達あまりテレビに出ないけど、何のテレビで
りんごを観たの?」

「確か、何年か前の暮れのレコード大賞の新人賞に
選ばれて歌うのを観た事あるわ。最優秀新人賞には外れて
残念だったわね」

「うん」
りんごはあの時の口惜しかった事を思い出した。

「あのね。あの時、兄と一緒に観たの」

「えっ、そうなんだ!」
「それでね、兄があの可愛い娘は誰だ?と聞いたの、
それで、あの娘は『元宮りんご』さんだと教えたの」

「えーーーー!嬉しいぃ!私の事可愛いぃーって、
あいつったら、りんごと初めて会った時、
『アイドルのりんごなんて知らない』なーんて
しらばっくれて、私を騙したのよ!超腹立つ!」

あははは、と葉月は笑った。

 

「それで、今でもアイドルになりたい。って思ってるの?」

葉月はうなずくと、
「その気持ちは今でもあるわ。オーデションには
応募した事は無いの。歌もダンスも全然自信が無いし」

「葉月さんは今いくつなの?」
「もう22歳なの。遅すぎるかもしれないけど」

りんごは腕を組んで、
「うちの事務所のオーデションは、たいてい
12歳から18歳までの女性に限るのよ」

「じゃあ、ダメね」

りんごは思わず前のめりになって、
「えっーーー、諦めるのは早過ぎるよー!?
アイドルになりたいんでしょ!色々方法があるよ。
例えば、歳を18歳って応募するとか」

葉月は首を振って、
「そんなすぐバレる嘘は通らないわ。歳をごまかして
オーデションに合格した人なんていないでしょ」

「まあ確かにそんな人はいないけど」

「だいいち、中学の頃私がなんて呼ばれてたか、わかる?」
「知らない。なんて言われてたの?」

「団地妻。13歳なのに、団地妻よ」

りんごはまじまじと葉月の顔と胸を見た。
確かにわかるような気がする。

「年齢を上にごまかすならともかく、下に見せるのは
無理よ」

葉月の豊満な胸は、中学の頃から目立っていたに違いない。
そして憂いのあるふっくらとした顔立ちは、中学で団地妻
と言われるだけの事はある。でも、
何かが違うような気もする。それで、

「葉月さんは、男性の経験はあるの?」

葉月は、ぱっとりんごの顔を見た。
そして下を向いたが、顔を上げると、

「男の人に抱かれた事は無いわ。
もう22歳なのにヴァージンなんて恥ずかしいと
思う事もあるわ・・・」

「そうか。だったらお付き合いした男性もいないのね」

葉月はうなづいた。
ちょっと寂しそうな表情をした。

そして、ちらっとりんごのお腹に視線をやった。

それを見たりんごは、
お腹の子の父親である明の事を思い浮かべた。

そして明は、葉月の兄だった。
母親は違うけど、父親が同じで二人は兄妹なのだ。


「ねえ、葉月さん前にりんごに言ったわね。
『お兄ちゃんに抱かれたい』って。
今でも思っているの?」

葉月は、じっとりんごを見ていたが、
きっぱりと言った。

「今でも抱かれたいと思っているわ」


つづく。