Dark blueの絵日記

ハロプロ関連の記事が主。後は将棋と猫を少々

出立


亜依はお尻をおさえてキイキイ言っている猿に
謝る、


「ごめんなさい痛かったの、悪いのは麻里さんだから」


「なんでおいらのせいにするんだよ〜!」


「ねえ、このお猿に名前は無いの?」


「名前など無い」


「じゃあ、タカシってつけていいね」


「別にかまわないけど、どうしてタカシなんだい」


「私の知ってる人に、小さいところや顔が似てるから」



出立の日が来た。


伊賀から近江の長浜までは現代の感覚ではそれほどの
距離ではないが、交通手段は馬ぐらいしかない
戦国時代ではかなりの道のりになる。


亜依はとても馬には乗れないので、歩くしかない。
それで人間離れした脚力を持つ麻里と、猿のタカシは
先に行くことになり、
亜依とサスケがその後から追いかけることになった。


亜依とサスケは山道を抜けると街道へ出る。


「これから先は長いよ、のんびりと歩いて行こうよ」


サスケは早くもふうふう言っている亜依に言った。


「ねえサスケさん、お姉ちゃんの麻里さんって
どんな人なの・・・」


「どんな人って、お姉ちゃんは家に居るときは
とっても優しいし、忍者としてもすごいし
おいらはとっても尊敬してるよ」


「そうなんだぁ、子供の頃の麻里さんはどんなだったの」


「それが子供の頃はよく知らないんだ・・・」


「知らないの・・・?」


「うん、おいらが生まれたばかりの頃に姉ちゃんは
家を出て、他所で過ごしたそうだよ、戻ってきて
一緒に住むようになったのは、二年前からだよ」


「そっか、二年前から一緒なんだ」


亜依は、二年前と言えば矢口さんはミニモニ。
リーダーとしてうちらと一緒にジャンケンぴょん!を
歌ってた頃だし、やっぱり麻里は矢口さんではないの
かと思った。


亜依は肝心な事を忘れていた、
タイムスリップによって4百年以上前の16世紀に
来ているのだから、二年前など何も無いに等しい。


仮に、麻里が矢口真里だとしたら、亜依だけが
伊賀に飛ばされたように、矢口真里だけが2年前の
伊賀に飛ばされたと仮定する事も出来るのだ。


「サスケさん、長浜まで歩いて行くの?」


「うん、亜依ちゃんの足ではとてもそこまで歩いて
行くのは無理だろうから、琵琶湖の南の瀬田まで行って
そこから船で長浜まで行くことにするよ、路銀は
お屋形様からたっぷり頂いているから」


「麻里さんとタカシはどこまで行ってるのかな」


「お姉ちゃん達は、おそらく伊勢街道から東山道
走ってもう長浜近くに着いてるはずだよ」


亜依は、伊賀、伊勢という地名から今まで忘れていたが
ここは自分の生まれた奈良から遠くないことに気づいた。
そのせいか戦国時代とは言え、言葉もほとんど変わらない。
やはり人と人のつながり、意思の伝達はいつの時代でも
変わらないのだろう。


人のつながり、人の意思の伝達・・・コミュニケーション。


亜依は、はっと思い出した、
麻里は、コミュニケーションという言葉を使った・・・。


この英語の言葉を、戦国時代の人間が使うのは
どう考えてもおかしなことだった・・・。