Dark blueの絵日記

ハロプロ関連の記事が主。後は将棋と猫を少々

きずな 



何とか男達から逃れて、俺達は遊園地を出て
車を置いている所に向かった。


駐車場に向かいながら、俺はリカの顔をまともに
見る事が出来ない、


リカも俺の顔を見ようとしない、
しかし、お互いの手はしっかりとつないでいた。
何か気まずい雰囲気のまま駐車場についた、
自分の車に近づいた時、向こうの車の陰に、
茶髪の頭がちらっと見えた。


「マリリン!」


俺が声をかけると、マリリンと紺野が姿を現した。
追っ手から逃れてこの駐車場に隠れていたようだった。


二人を車に乗せる。
突然の雷雨のため、4人ともずぶ濡れになって
いたのでタオルを出すとともに、エアコンを入れる。
俺は車を出した。


助手席にリカ、後ろの席にマリリンと紺野。
俺は後ろの二人に行き先を聞いたが、
二人がすぐには答えず、少ししてマリリンが
駅の名前を言った。
俺はうなずいた、追われている二人はたとえ
味方の俺でも潜伏先を教えたくないという
気持ちは理解できる。


やがて、マリリンが言った、
「あたしは、クローン・マリリン」
紺野が、
「私は、紺野あさ美(クローン・人間)です」


俺は自分の姓名を言って、ちらっとリカの顔を見た、
もちろん、クローン人間であるマリリンと紺野の二人は
リカの顔を見れば、リカもクローン人間だということを
わかるはずだ。


信号で止まった時、振り返ってマリリンの目を
見て言った、
「リカは何も知らない子供なんだ、自分のことは
何も知らない、赤ん坊同然なんだ・・・」


マリリンはうなずいて、理解したようだった。
マリリンは自分達の事を話してくれた。


「クローン・人間が処分されるということを聞いて
おいらは、隙をみてこんこんを連れて逃げ出した
わけなの、それから色んな所を転々としていたの」
「どんな所か聞いてもいいかな・・・」
「ハム。のファンの所なの」
「なるほどね」
俺は車を動かしながら言った、
「それで自分達の食べる分は、なんとか稼ぐために
アルバイトを始めたの」


マリリンはそう言うと紺野を見て、

「なにしろ、このクローン紺野は1日に自分の体重分の
食べ物を軽く食べてしまうの・・・」


「はぁ〜〜あ?!」
俺は思わず振り返って紺野の顔を見ながら言った、
紺野の体重は少なくとも40キロ前後はあるだろう、
それを一日で食べてしまうとは・・・。


「かくまってくれているファンの人が自分は食べずに
紺野に食べさせてるのを見てると辛くて・・・」


俺はため息をつきながら、うなずいた。


「これでも紺野にしたら遠慮してる方なの、放っとくと
際限なく食べてしまうの。これが原因で紺野は不良品と
されて、廃棄処分になるところだったの」


ハム。の紺野本人も食い意地は人一倍強いのだが、
クローン紺野は、その辺が強調されて脅威の大食いに
なってしまったのかもしれない。



「あの遊園地でのアルバイトは結構長く続いてた
のだけど、でも人目につきやすいのがいけなかった
のかしら」
「それで、お迎えが来たわけだ・・・」


目的の駅前に着いた。
俺は連絡先を書いたメモと一緒に、財布の
有り金をマリリンに渡した、
マリリンは首を振ってお金を受け取ろうとしない、


俺はリカの方を見ながら、
「このお金は、リカからと思って受け取ってくれないか」
マリリンはうなずいて受け取った。


リカはお弁当の入ったバスケットを紺野に渡した、
リカが、朝早くからあんなに一所懸命に作ったお弁当だった。
紺野にすれば、ほんのひと口に過ぎないかもしれないが、
嬉しそうに笑顔を見せた。


俺とリカは車の外で、駅に向かう二人を見送った。
頭が良く、しっかりしたマリリンと一緒なら
クローン紺野もやっていけるだろう。


リカは、助手席ではなく後部座席に乗り込んだ。
俺はミラーに映る、うつむいたリカを見た、


雷鳴が轟く中、ずぶ濡れになりながらの初めての
キスが、よみがえって来る。


リカが突然言った、


「パパ・・・どうしてリカにチューしたの?」




リカのその問いに、返事に詰まった、
車を運転しながら答える事ではなかったので、
俺は黙って運転を続けるしかなかった。



帰り着きマンションの駐車場に車を止めると、
降りて後のドアを開けて中にいるリカに手を
差し出した。
しかし、リカはその手を取らず、シートに座った
まま動こうとしないで、俺の答えを待っている。
俺は車の中に入るとリカの隣に腰をおろした。
リカは俺をじっと見つめて返事を待っている。


「リカ・・・俺にチューをされて嫌だったかい」
リカは首を振った。
「嫌じゃなかったよ。カミナリがとっても怖くて
震えている時にパパにチューされて、最初は
驚いたけど、うれしかった・・・」


「ありがとう」
リカには俺の素直な気持ちを伝えるしかない。


「リカにチューしたのは、リカのことが大好きだから
チュー、キスをしたんだよ」


リカはようやく笑顔を見せてうなずいた。



部屋に戻りリカの様子を見ると、雨に濡れたせいで
服もまだ乾いていないし、まずお風呂に入れて、
着替えさせないといけない。
服を脱がせ下着姿のリカを見ると、つい目を
そらしてしまう、
裸になったリカをまともに見れない、
キスしてしまった後は、もうリカを父親として
見ることが出来ないような気がする。


リカを浴室に連れて行って、
「リカ、今日はひとりでお風呂に入れるね、
その間にご飯を作っておくから」
「ウン・・・」
リカは少し不安そうな顔でうなずいた。


もう、リカと一緒にお風呂に入ることなど出来ない。
いくら中身は幼児に過ぎないとはいえ、
外見は、20歳の大人の女性の体なのだから、
これまで俺と一緒に入浴してたのが異常なのだ。


しかし、食事を作っていてもお風呂にひとりで入ってる
リカの事が気になって仕方ない、
いままで一度もひとりでお風呂に入ったことの
ないリカが心配だった、
自分で体や頭を洗える事が出来るだろうか、
いつも俺が洗ってやっていたのだ。


どうしても気になるので、お風呂場へ行き、
ガラス戸の向こうの浴室の中をうかがった。
中は静かだったが、耳をすますとリカの泣き声が
聞こえるような気がして、思わずガラス戸を開けた、


「リカ!」


リカはタイルにぺたんとお尻をつけて座り込んで、
しくしくと泣いている・・・。
リカは振り返って俺を見ると、立ち上がって
俺にしがみついてくる、


「パパ〜!」


俺に抱きつくと、大きな声を上げて泣き出した。


俺はリカの柔らかい体を強く抱きしめた、


「リカ、悪かった、ひとりにして・・・」


やはり、リカはまだほんの子供に過ぎないのだ、
まだまだ、俺の保護が必要なのだ。





       終わり