Dark blueの絵日記

ハロプロ関連の記事が主。後は将棋と猫を少々

最後の晩餐

さゆが現れると前列の総統をはじめ政府要人達は
立ち上がり拍手で迎えた。
さゆは頭に花のティアラを飾り、薄いピンクの膝下ぐらいの
ドレスを着ていた、そのドレスも透けて見える。

他の少女達はステージから下がって行った。


さゆはステージから降りていき、総統の前に立った。
総統は少女達と同じようにさゆの腕や腰を撫でまわした。
それを見た私は、まるで毛虫が背中を這い回るような
耐え難い嫌悪感を覚えて体が震えてくる。


その総統の行為は、性的なものと言うより何かさゆを
物として扱っているような気がしたからだ。
その後さゆは各テーブルをまわり始めた。


さゆを迎えるゲストの人達の中で興味深い事をする人達が
いた。一部のゲスト達がさゆに向かって手を合わせて祈る
ような仕草を見せた、中にはさゆに向かって膝をつき、
その手を押し頂いて頭を下げる人までいる。
その光景は、まるで聖母マリアを拝む信者のようにさえ見えた。


やがてさゆは私と山口のいるテーブルにやってきた。

さゆの表情は、少女達と同じように貼りついたような笑みと
目には感情が無く遠くを見ているようだ、
たぶんさゆはマインドコントロールを受けているか、それとも
薬物を投与されているものと思われた。


私は立ち上がってさゆと目線をあわした。

「友男です。またお会い出来ましたね・・・」

さゆは私を認めると、
「よく来てくれました。御礼を申し上げます」

おごそかに言う。ひと月一緒に親密な時を過ごしたさゆとは思えない、
他人行儀な言い方だった。

「薔薇の花を贈っていただきありがとうございます」


思わずさゆの顔を見た、
ステージの両脇には多くの花束が置かれていた。
それぞれに贈り主の名前が付いていた。

私はあちこち苦労して花を売ってる所を探し出し、
報酬の金貨をすべて費やして百万本とはいかないが、
買えるだけのピンクの薔薇の花を贈ったのだ。

さゆは私の名前に気がついたのだ。さゆはコントロール
受けていても自分を完全に失っていないのだと思う。


さゆは、山口に対して一礼して口上を述べる。

「お越しいただき誠にありがとうございます。
今まで私を見守り、育ててくれたお礼を申し上げます」
そう言うと頭を深々と下げる。

山口も立ち上がり頭を下げると、その顔は万感の思いで
涙ぐんでるようにも見えた。

それを見ていると、まるでさゆが結婚式で両親に挨拶する
花嫁のように見えてきた。



さゆは別のテーブルに向かう。
思わずさゆの後を追おうとした、まださゆと話す事がある、
すると山口が私の腕を押さえた、

「座っていろ」
山口の顔を見ると、彼はさりげなく後ろを指し示した、
後ろを見ると、

いつの間にか、会場の後ろの壁一帯に5メートル置きに
自動小銃を背負い、武装した兵士が並んでるのが見えた。

総統や政府要人の警備のためのようだった。
近くにいた兵士が、背負っていた自動小銃を降ろして私に
向けて構えた。
それを見てそろそろと席に腰を降ろした。


各テーブルをまわり終えると、さゆや少女達はステージの
袖から何処かへ姿を消して行った。
また楽団が音楽を奏で始めた。
さゆが現れてからは、会場の雰囲気が一変していた。
それまでの賑やかな感じから、なにか固唾をのんでなりゆきを
見守るような気配になってきた。


「もう、さゆの身に起こる事を教えてくれてもいいのでは
ないですか」


山口はワインのグラスを手に取ると、ひと口呑んでから
おもむろに口を開いた。



聖少女 19