ブリードビルに着き、10階のさゆの部屋に入ると、
さゆはいつものように私を出迎えてくれる。
さゆは今朝は早く起きたらしく、ピンクのドレスに着替えている。
そのピンクのドレスは、ネックラインと肩紐にレースとフリルを
あしらい、アンダーバストにはサテンリボンを結び、膝上までの
ワンピースドレスにフレアを持たせている。
ドレスのピンク、大きく開いたVネックから見える雪のような白い肌、
艶のある長い黒髪。それぞれがマッチしてとてもよく似合う。
「今日のさゆは素晴らしく綺麗ですね。それに素敵なドレスがよく
似合ってて最高ですね」
さゆはこぼれるような笑顔を見せて、
「ありがとう。褒めてもらえてとても嬉しいわ。
これは、フェミニンドレスと言うの。このままパーティーに
行けるわ」
それに較べて自分のジーンズとTシャツのだけの姿に少し引け目を
感じて、
「後は、そのドレスに釣り合う王子様を見つけてお城の
パーティーに行くことですね」
自分はパーティーに着て行くような服を持っていなかった。
さゆは体をぴったり寄せてくると私の腰に腕を回し、
「7月13日のパーティーには友男という素敵な王子様が
やって来ることに違いないわ。
あなたに似合うフォーマルスーツを注文してもらっていたの。
帰る時には届くはずよ」
すぐに朝食になる。
山口は今朝は朝食に同席しないで部屋を出て行った。
最後の日なので気をきかしてくれたのかもしれない。