Dark blueの絵日記

ハロプロ関連の記事が主。後は将棋と猫を少々

りんご・最終章 一

春ツアーの大阪のライブハウス公演だった。

夜公演のアンコール明けに、最後方の背の高い男性に
りんごは気がついた。 
明だった。

握手会が始まると明はいなくなっていた。

全て終わってとしこに声を掛けようとしたら、

「彼がが来てるわ。マネージャーさんには
私から言っとくから会いに行っていいよ」

りんごは飛びつくようにとしこに抱きつくと、
「としこも気がついてたんだ。ありがとう」

としこはうなずくと、

「明日は撮影で朝が早いから今夜は東京へ帰るしか無いの。
ご飯を食べるくらいの時間はあるわね。駅で待ってるよ」

明と二人で食事をしてゆっくりと話せるレストランを

見つけて入った。

「ちょっと大阪に用事があって来たんだけど、

早く終わったのでりんごの歌を聴きたくなったから」

「そうなの。大阪に来たのはお仕事の為、それととも

りんごがお目当て?」

明は頭をかくと、
「それは、お目当てはりんご」

りんごは嬉しそうに笑った。

「正直でよろしい。ねぇねぇ、もう知ってると思うけど、
私の卒コンの前に、アメリカ公演が決まったの!」

「うん。先週発表になったね。ロサンゼルス公演。
メンバーと良い想い出が作れるとといいね」

「うん!最後にメンバーの皆とアメリカ公演が出来るなんて
最高に嬉しいな」

明はワインでりんごと乾杯をして、ひと口呑んだ後、

「その、メンバーだけでなく、二人の想い出も作りたいのだけど」

りんごは首をかしげて、
「二人の想い出って?」

「実は、ロスには友人がいてね。仕事の付き合いの

アメリカ人だけどとても良い奴でね。何度か渡米して

世話になってる」

りんごはうなずいた。

「それでその彼に電話をして詳しい事を話したのだけど、
りんごと結婚する事になったと」

りんごは手を止めて明を見た。

「それで、彼の尽力のおかげでロスの教会で式を挙げる事が

出来そうなのでりんごの意見を聴きたいのだけど」

りんごは口を開けたまま目を丸くして明を見た。

「それに、式はアメリカの教会でするのだから内輪だけの、
双方の家族と、そして出来たら公演が終わった後で

メンバー達も出席して貰いたいのだけど」 

りんごは、口をぽかんと開けたまま何も言わない。

「どう思う?もちろんりんごの意見が最優先だからね。
まだ決めたわけでは無いし、もし嫌なら・・・」

 

りんごは突然立ち上がると、辺りを見回しながら、

「ねぇ・・・抱きついていい?」

「もちろん、いいよ」

りんごは明の背後に回り、明の首に抱きつくと、

「嫌なわけないじゃない!家族とメンバーだけの結婚式、
そして教会での挙式。それが夢だったの。それも、
ロサンゼルスでなんて!?」

 

食事が終わり、としこ達が待つ新大阪駅に向かう。

としこを見つけるとりんごは、足を止めた明を置いて
としこに近づいて興奮した様子で喋っている。

 
としこは、明の方を見ると大きくうなずいた。

明はりんごととしこに向かって手を振った。
りんごも手を振って、背を向けて改札口の方へ歩き出した。

 

突然りんごは振り返った。二人の距離は十数メートル

ぐらいだった。りんごは明に向かって走り出した。
かなりのスピードで走って来る。

 

そして全速力で向かって来たりんごは、身長差があるので
明の腰の辺りに猛烈に体当たりするように抱きついて来た。

あまり激しさに思わずよろけそうになったけど、
なんとか堪えてりんごを抱き止める。

 

数秒ほど抱きついていたりんごは、ぱっと離れると
メンバー達が待つ方へ走り去って行った。
顔はよく見えなかったけど、肩が震えていたから、
泣いていたのかもしれない。


つづく。