Dark blueの絵日記

ハロプロ関連の記事が主。後は将棋と猫を少々

りんご ロサンゼルス公演

明が公演会場に着くと、外に制服の警官の姿が目に付いた。
中に入っても、眼の鋭さから明かに私服の警官とわかる男達が
何人も立って居て周囲に眼を配っていた。
とてもアイドルの公演会場とは思えない雰囲気だった。

そのうち年配の男が話しかけて来た。
英語がわかるかと聞いたのでイエスと答えた。

「私はロス市警のジェラードです。この公演を観に
来た方ですか?」
その鋭く厳しい眼の私服の警官は言った。

自分はこの公演で何かが起こる事を予期して
会場に来た。会場の異様な雰囲気を肌で
感じていた。それが態度に出たのかもしれない。

その様子を嗅ぎつけて警官が怪しいと睨んで
質問してきたのだろう。
言わば職務質問と言ってもいい。

「爆弾ですか」
と私は聞き返した。
爆破予告』という英語がとっさに出て来なかったので、
爆弾。とだけ言った。

ジェラード警部は、答えずに私をじっと見詰めた。
こうなれば、すべて正直に答えるしかない。

「この公演の演者の一人は、私の妻です」
婚約者と言い掛けたが、今日の午前に教会で式を
上げたのだから、もう妻と言うべきだろう。

「グループのリーダーには詳しく聞けませんでしたが、
この公演に異常な事態が起こる可能性を危惧して、
妻の身を案じて会場へやって来ました」

「そうでしたか。リーダーのミスとしことはお知り合いですか」

「はい。よく知っています」

ジェラード警部はうなずくと、
「私は警備の責任者です。警備には万全の体制で当たっています。
必ずこの公演を無事に終わらせます」

そう力強く言うと、ジェラード警部は立ち去った。

会場の大勢ののファンも、異常な雰囲気を感じて始まるまでは
ざわついていたが、幕が開いて公演が始まると、
大歓声を上げた。

明るくなって、メンバーの表情が見えるようになると、
気のせいか、いつもと違って皆緊張してるように見えたが、
ライブが進んでいくと、緊張も解けて行き会場の熱気に
溶け込んでいった。 

そのうち曲の間奏で、りんごが客席の明に気がついたのがわかる。
りんごは、明が観に行くと会場の何処にいても目ざとく見つける。

アンコールのMCで、としこの挨拶では話していく内に涙声になっていた。
他のメンバー達も涙を流していた。
決して、公演の成功した事だけでは無いようだった。

すべて終わり、このまま帰ろうかとも思ったが、りんごや

メンバーにどうしても声を掛けたいと控室に行った。

マネージャーを見かけたので声を掛けた。
「大変でしたね。公演が何事も無く成功して良かったですね」

マネージャーはほっとした様子で、
「本当に良かったです。一時は公演中止も覚悟してたので。
りんごとメンバーに声を掛けてやってください」

部屋に入った時、メンバー全員がリーダーとしこを中心に
肩を抱き合っていた。
少ししてとしこが顔を上げて明に気がついて、
りんごの腕を取った。

りんごは明を見てから、としこの顔を見た。
としこにうながされると、
明に向かって小走りに駆け寄って来て、
体をぶつけるように抱きついて来る。
体がこまかく震えていたから、泣いてるようだった。

そんなりんごを抱きしめながらメンバー達の顔を見ると、
皆眼を泣き腫らしてる様子だった。

としこが笑顔で音頭を取るように拍手しながら、
「結婚おめでとうー!」
と言うと他のメンバーも笑顔になって拍手をしてくれる。

明も、ありがとう。とお礼を言いながら、
ロサンゼルス公演が無事に成功しておめでとう!と
心から祝福した。

としこは、明に抱きついたままのりんごに、
「ほらほらいつまでもひっついてないで、帰り支度を
しなさいよ」

りんごが眼をこすりながら行くと、明に、
「この後はりんごと一緒に明日までロスに滞在するんでしょ
二人で楽しんでいきなさいよ。私達は今夜の飛行機で帰るけど」

明はうなずいた。