Dark blueの絵日記

ハロプロ関連の記事が主。後は将棋と猫を少々

悪魔との契約 最終章 五

猫は天使


小鳩はドアを何度も叩いたが返事が無い。
「誰かいないんですか!ドアを開けてください!」

大きな声を出したら、
するとドアの側のインターフォンから女性の声で返事がした。

「どなたですか。何か用ですか」

小鳩は、自分は水道屋で階下のオフィスから天井から
水漏れしてるからと点検に来たのだけど、どうやら
このオフィスの水道管から水漏れしてるようだから
点検したいから部屋の中に入れて欲しいと告げた。

「お待ちください。調べてみます」

少しして、
「調べたが、水道設備には何も異常が無いし水漏れは
ありません。ですからお帰りください」

「あのですね、外から見ただけではわからないのです、
床下に通ってるはずの水道管から水漏れしてるのです、
中に入って点検させてください!」

「大丈夫です。異常はありません。お帰りください」
「だから点検しないとわからないと言ってるでしょ!
中へ入れてください」

ドアに聞き耳を立てると、相談してるようだ。
そしてようやくドアが開いた。

中に入ると、外見は普通のオフィスのようにデスクが並んでいる。
三人の男と二人の女が居た。

一人の男が立ち上がり近づいて来る。
三十過ぎでがっちりとした体格と皆の様子から彼が
上司らしい。

小鳩は笑顔で彼に近づくと、いきなり彼の向う脛に
鋭い蹴りを入れる。

男性はたまらず顔を歪めて前かがみになると、素早く
腰に差していた警棒を取り出し、男の後頭部に
思いきり打ち下ろした。

グシャっと鈍い音がして男は前に昏倒した。
頭蓋骨にひびが入ったようだ。

小鳩のいきなりの襲撃に他の四人はあっけに取られて
立ちつくしている。

ようやく我に返った男の一人が、
「なんて乱暴な、なぜ彼を襲ったのか」

「なぜって、あの男が一番強そうだったからよ。
まず最初に一番強そうなのを倒すのが喧嘩の鉄則よ」

男は首を振ると、
「そうじゃなくて、何の理由で乱暴を働くのか」

男の眼の動きで後ろに回った男の存在に気づく、
男は小鳩の首に腕をまわして締めて来る、
警棒を逆手に持って男の腹を突く、締める力が弱まったので、
腕をすり抜け、下から男の顎に警棒を突き上げる。

たまらず四つん這いになった男の背後にまわり、
後ろから股間を蹴り砕く。
男は地獄のような痛みに体を丸くして痙攣している。

最後の男は、眼を丸くしてじりじりと後退していく。

女の一人がスマホを掴んで叫ぶように、
「所長!乱暴な女が侵入してきて、大暴れしています!
早く来てください!もう二人もやられました!」

小鳩はその女に近づくと、
他の男と女は部屋の外に逃げ出していた。

小鳩は女に警棒を突きつけると、
「神子をどこにやったのよ。神子は何処にいるのよ!」

女は激しく首を振ると、
「神子なんて・・・知りません」

「嘘を言うんじゃあない!言わないと」
倒れて泡を吹いている男二人をちらっと見て、
「あんな風になりたいの!」

女はぶるぶると震えながら床にべったりと座り込んだ。

そこへ、女性が部屋に入って来た。
「しょ、所長ぉー」と女は這っていく。

所長と呼ばれた女性は、髪の長いすごい美人だった。
年の感じは二十代後半ぐらいで、白いスーツのミニスカート姿だった。
女性は部屋の惨状を見まわすと、

「あなたは只者ではないようね。何しに来たの」

小鳩はデスクに腰を降ろして一息つくと、
倒れている男達を見て、
「こいつらは悪魔なの?悪魔にしては弱すぎるわね」

「あなたが強すぎるのよ。人間にしてはね」

「高校の頃にやんちゃをしてたの。家に帰りたくないから
不良仲間のグループに入って、喧嘩に明け暮れてたの。
死んでもいいと思ってたから、ドスを持った相手でも
平気で向かって行って半殺しにしてやったわ」

女性は眉ひとつ動かさず、
「お強いのね。大怪我をしなかった?」

小鳩は上の作業着をめくると、脇腹を見せた。
縫った後が大きな傷跡になっていた。

「一度やくざにドスを突っ込まれたの。
血が何十人にも輸血出来るほどドバッと出て

これであの世に行けると思ったら、死に損なったわ。昔の話よ。
今はこれでも大人しくなったのよ」

「これでもね」皮肉っぽく言う。

逃げていた二人が戻って来たのを見て女性は、
「死にたい女には近寄らないことね」

二人は大きくうなずいた。

小鳩は鼻白んで、
「あなたがここの所長さんね、所長さんも悪魔なの?」

床に座り込んでいる女が、
「アヤカ所長は悪魔じゃないよ、大天使なのよ」

「大天使? お偉いさんのようね。じゃあお聞きするわ。
神子は何処にいるの。神子を何処へやったの?」

大天使アヤカはデスクに腰を降ろし脚を組むと、
「どうやら、それがここへ来た目的のようね」

つづく