Dark blueの絵日記

ハロプロ関連の記事が主。後は将棋と猫を少々

大天使

銀河の彼方


アヤカはうなずいて、
「よくわかったわ。あなたが私に会いに来たわけが」

かみこはようやく笑顔を見せた。
「それで・・・」

「まって。これから二人だけでゆっくり話せる
場所へ行くから、お話するのはそれからよ」

アヤカはひざまずいていたかみこを立たせると、
憂佳を見て、
「憂佳、悪いけど少しここで待っていて欲しいの。
なるべく早く帰ってくるから」

憂佳はうなずいて、
「わかったわ。ここで待っているわ」

「ありがとう。お願いね。それと、もう少ししたら
この子の母親、小鳩さんが来ると思うから
二人で待っていてね」

アヤカはかみこの肩を優しく抱くと一緒に歩いて行き
非常ドアの方へ向かう。


その時、レストランに制服の男性と女性が一人
入って来た。
憂佳は立ち上がり、小鳩さんに違いないと思って
歩いて行く。

その時小鳩は、ドアを開けて出て行く二人、かみこと
アヤカの姿がちらりと見えた。

憂佳は、その人はアヤカさんのお知り合いの方ですと
言うと、男性はうなずいて下がって行った。


アヤカとかみこはレストランのすぐ上の屋上に上がった。

アヤカはスマホを取り出すと、何処かに連絡を取る。

「あ、サターン1号機ね。今どの辺を周回しているの?
そう。中国上空ね。お願いがあるの、軌道を修正して、
東京上空へ来て欲しいの。わかった。待ってるわ」

アヤカは不安そうなかみこに優しく肩に手を触れると

「天空からこの世界を見守っている私達を、人間は
『神』と呼んでいるけど、天空から地上を監視する
ために、常に地球を周回する人工衛星を三
打ち上げているの」

「はい・・・・」

「その内の一基の人口衛星をここの上空に呼んだの。
じきに上空にやってくるから、その衛星に
これから飛び移るの」

かみこは首をかしげてアヤカを見ると、

「あなたは、ガブリエル大天使のような背中に
翼が無いようだけど、どうやって衛星に
飛び移るのですか?」

アヤカは微笑んで、
「わたしには翼は無いけれど、ガブリエル大天使と
同じように空を飛べるのよ。
まあ飛ぶと言うより、テレポーションするって
言った方がいいかな」

「それは、超能力で言う、『瞬間移動』の事ですか?」

「そうよ。昔からそんな超能力の人間がいると、
言われてるけど、それは人間では無くて
私達神の領域の者達の事よ」

「そうでしたか」

すると上空に白くを尾を引きながら飛ぶ光る点の
ような物体が現れた。

「見えたわ!人工衛星よ」

アヤカはスマホで上空の人口衛星に連絡する。
「衛星を確認したわ。これからテレポーションするから
準備をお願いね」

アヤカはかみこの腰をがっちりと抱えると、
「しっかりと私に掴まっているのよ。行くよ!」

強く抱きあった二人の周りは急激に白くモヤが
広がるように霞んでいき、超高速で飛翔するような
感覚に襲われ、かみこは強く眼を閉じていた。

時間にして数秒ほどの間があって、二人は
比較的大型の宇宙船の内部へ
瞬間移動していた。


「かみこ、着いたよ。宇宙船の中へ」

かみこが眼を開けると、そこは狭くて計器類や
機械やパイプが張り巡らされた、宇宙船の
内部だった。

アヤカはスマホで連絡する。
「着いたわ。居住区への扉を開けて」

居住区に入ると辺りは一変して、広くてまるで
ホテルの部屋のようだった。

部屋には乗組員が一人居て、女性だった。

「よくいらっしゃいました。お飲物は何が
良いですか」

アヤカはコーヒーを。かみこは紅茶を頼んだ。
二人はソファに腰を降ろした。
すぐに飲物が出てテーブルに置かれると、
女性は一礼すると出て行った。

すぐに、かみこはある疑問を口にした、
「変ではないですか、ここ大気圏外の宇宙船の
内部なのに、なぜ体がふわふわと浮かないの
ですか?」

アヤカはコーヒーをひと口飲みながら、
「私は、大天使アヤカといいます。アヤカと呼んで。

それは昔の人間の作った宇宙船の話しよ。
天空に生きる私達の宇宙船は、地上と同じ
空間を創り出せるのよ」

かみこは感心して、さすがに神々が創り出した
領域の宇宙船だと納得するしかない。

コーヒーを飲み終わるとアヤカは、

「なぜ、こんな大気圏外の宇宙船に来たかと言うと
ここなら秘密を守れて、誰も邪魔されずにゆっくりと
お話しが出来るからよ。聴きたい事を何でも言って」

かみこはひと息つくと、口を開いた。

「アヤカは、わたしを生んでくれた大天使の
マザーなのですか」

アヤカはかみこの事が可愛く思えて来たのだけど、
このまま自分はかみこの母親だと、なりすます事も
出来たのだけど、それは親友の神子に対して
申し訳ない気がしたのでやむをえず、

「それは違うわ。私はあなたを産んだマザーでは
無いわ」

かみこはがっかりして肩を落として下を向いてたが、
顔を上げてアヤカを見ると、
「アヤカは私を生んでくれたマザーを知っているのですか?」

「かみこを生み出したマザー、神子の事はよく知っているわ。
私の大親友だから」

アヤカは小鳩が神子を大天使と偽ったのは理解出来る。
まだ少女のかみこに神子が悪魔だと言えなかっただろう。

アヤカは神子と小鳩の出会いからの事をかいつまんで
かみこに話して上げた。

「神子と小鳩は、愛し合うようになったの。それがサターンの
怒りにふれたの。人間とサターンの使徒である大天使や
悪魔が愛し合う事は禁じられてるから。
そして神子は追放されたの」

かみこは、ママと神子が愛し合ってそして自分が
生まれて、その結果神子が追放されたという事は
初めて知った事だった。

愛し合ったママと神子の想いを考えていた。
そして神子を追放したというサターンの存在。


「そのサターンの事はまだよく知らないのですが」

「そう。この地球のある太陽系は銀河系という星団だと
いう事は知ってるわね」

かみこはうなずいた。

「サターンは神の使途でその銀河系全体を支配しているの」

「銀河系全体をですか!」

「そうよ。ちなみにサターンの使途である私は、
現在太陽系全体の管理をまかされているの」

「えーーー!?すごいですね!」

アヤカは笑って、
「太陽系と言っても、高度の文明があるのは地球だけ
なんだけど。太陽系の拠点はある惑星の衛星にあるの」

「そうなんですか。まさかお月さまとか?」

「それは違うわ。秘密だけど地球に近い惑星の
一つの衛星の地下にあるわ」

「わかりました。それで神子は追放されたと、
言われましたが、現在神子は何処に居るのですか」

アヤカはかみこをじっと見詰めていたが、
すでにかみこは神子の能力をすべて引き継ぎ、
成長して何事も考えられるから、神子の行方を
話しても大丈夫だと結論した。

「神子は、たてまえは地球を追放されたけど、
現在は銀河系の端のある恒星の天体の惑星の
管理をまかされて、そこに居るの。
銀河系の大きさや距離などは知っているわね」

かみこはうなずいた。
銀河系の大きさは端から端まで、
約十万光年だった。光が一年かかって届く距離を
一光年だから、その途方も無い距離がわかる。

この地球のある太陽系からの、その惑星までの
距離は少なくとも、数万光年の距離だとわかる。

「それで・・・わたしは、母親である神子に会える
のでしょうか」

アヤカは立ち上がり、かみこの側に移ると
その肩を優しく抱きしめると、

「母親である神子に会いたい?」

かみこは、アヤカの瞳を見詰めて、
「はい。会いたいです」

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アヤカは少し考えていたが、
「あなたを産み、育ててくれた小鳩さんをあなたは
愛しているの」

「はい。愛しています」

かみこはきっぱりと言い切った。

「そう。では神子は?」

かみこはしばらく考えていたが、
「まだ会った事が無いけれど、でもきっと
愛する事が出来ると思います」

「そう。私があなたに言える事は、ただひとつだけ。

あなたは神子の能力を百%受け継いでいるから、
あなたはこの先、何百年、何千年とその姿のまま
生きて行く事になるの。

でも小鳩さんは、普通の人間に過ぎないから、
寿命というものがあるから、これから先は、
せいぜい百年ほどしか生きられないの。

だからあなたは、これから小鳩さんが寿命が
尽きるまで、愛し続け、いたわり続けなさい。
それがあなたの使命なの。

そして小鳩さんがこの世から去った後に
私が責任を持って神子さんに会わせて上げるわ。

それが私があなたに言える事よ。
でも、強制をする権利は私には無いわ。
何事もあなたの自由にしていいのよ」

かみこは少しの間考えていたが、

やがてひざまづくと、顔を上げて言った。

「はい。わかりました。
すべて、大天使アヤカに従う事を誓います」

そう言うとアヤカに向かって手を差し伸べた。

アヤカはその手を取ると、
今度はアヤカがその手の甲に口づけをした。

アヤカが顔を上げると、かみこの瞳から
ひと筋の涙が流れ落ちている。

「その涙は、どんな涙?」

かみこはアヤカの胸に飛び込んで抱きつくと、

「嬉しいのです。たとえひと時の間だけでも、アヤカを
自分の母親だと思えた事が、嬉しくて幸せでした」

アヤカもかみこを強く抱きしめながら、
「私もね、ほんの一瞬でもかみこが自分の事を
母親だと思ってくれたのが、すごく幸せだったわ。

神子と小鳩が羨ましいわ。かみこのような子供を
産みたいと思うわ」

二人はしばらく間抱き合って二人の時を過ごした。

そしてアヤカは立ち上がると、
「さあ、地上へ帰りましょう。きっと小鳩があの
レストランに来ていて、かみこの帰りを待っているわ」


エピローグへ続く。