Dark blueの絵日記

ハロプロ関連の記事が主。後は将棋と猫を少々

大天使

ベッドではかみこは上になって責めてくる。
その辺は神子には似てないような気もする。
小鳩に似ていると言える。

終わって、抱き合いながらけだるい余韻に
浸っていると、ポツンと言う。

「ママ・・・」 「何ぁに?」

「わたしのパパは何処にいるの?」

思わず飛び起きそうになる。

突然の事で何と答えていいのかわからない。
まだ本当の事を言うには早過ぎるような気がする。

あなたは悪魔の子供よ。なんて言えない。

厳密に言えば、パパとは呼べない。
神子は女の子に違いないから。


パパは亡くなったとか、まるっきりの嘘は言えない。
考え上げたすえに、

「あなたのパパは天の上にいるの」
と天井を指差した。

「ええーーーー!?」

「あなたのパパは大天使なの」

大天使アヤカの事が浮かんだ。
大天使と悪魔は似た様なものだと思ったので。

かみこは声をはずませて、

「そうなんだ!ガブリエル大天使みたいなパパ!?」

『受胎告知』の事を言ってるらしい。

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「でも、大天使は男性では無いの。
受胎告知の絵画を見て男性に見える?」

かみこは首を振って
「わたしには女性に見えるわ」

「そうよね。たてまえとして大天使は男でも女でも無いの。
でも外見は女性なのね」

「じゃあパパじゃなかったら何と言うの?」
「しいて言えば、マザーね。すべての母親の象徴
としてのマザーよ」

かみこは大きくうなずきながら、

「じゃあ、わたしはママと大天使マザーの間に
生まれたのね」

「そうなるわね」

単純に信じているかみこがおかしくなってくる。
まだまだ子供だと思う。

小鳩が大天使とどうやって知り合い、
どうなって大天使の種を受胎したのかは、
かみこは自分なりの想像で理解したようだった。
それでかみこは満足したようだった。 しかし、

後にそれは小鳩の認識不足だった事を
思い知る事になる。

かみこの心の内にはある欲求が浮かんだのを小鳩は
気がつかなかったのだ。

その欲求とは、
父親的存在、大天使に会いたいという欲求。


休日に、二人は街に出て行った。

小鳩は現在経済的に四苦八苦していた。
神子の残してくれたマンションの維持に苦労していた。

買取マンションなのだけど、月々の管理費が結構な
額になる。光熱費なども広い部屋なので相当な額に
なっている。

売り払えば相当な額になるのだけど、それだけは
かみこのためにしたく無い。かみこを安アパートに
住まわせるわけには行かない。

それに神子との想い出が強く残るこのマンションを
売るなんて死んでも嫌だった。

しかし給料は安いし、貯金なんて通帳を見ると月末には
二千円しか残って無い。
それなのに小鳩の浪費癖は相変わらずで、毎月の払いで
領収書を見る度に嫌になる。
だから振り込まれた給料もたちまち三分の一になる。

かみこにひもじい思いをさせたくないから、
手元に残ったお金はほとんどかみこのために
使っている。かみこは小食で助かる。

着せる服も、自分のは極力我慢してかみこのために
可愛い洋服を買ってやっている。

小鳩が送られてくる請求書兼領収書を見て
うなってるのを見たかみこが、

「ママ、わたしも働いてお金を稼いでママを楽に
させてあげたい」

それを聞いた小鳩は涙が出るほど嬉しくて、
かみこを強く抱きしめながら、

「かみこぉー!ありがとうぉ!心配しないでいいよ、
ママはこれまで以上に頑張るから!」

小鳩は仕事が終わる夜もアルバイトをして少しでも
家計の足しにしたいと考えていた。
しかし、それだとかみこと過ごす時間が短くなって
しまうのが悩みだった。

 

そんな生活もたまには息抜きをするために
月に一度こうやってかみこと一緒に食事をしたり
ちょっとした買物をしたりするのだ。

かみこもそんな日を心待ちにしていて、
二人はうきうきした気分でしっかりと手を繋いで
食事をするレストランに向かっていた時に、


その事は起こった。


かみこが突然立ち止まり、空を見上げた。

「かみこ、どうしたの?」

「ママ、ここで待っていて」

 

そう言うと、かみこは握っていた小鳩の手を振り払うと、
片側四車線の広い道路に向かって行く。

休日の午後で多くの車がかなりの速度で
通行していた。
その車道の中へ向かって駆け出して行った。

小鳩は悲鳴を上げた。

「かみこ、危ないっーーーーーー!?」


続く