Dark blueの絵日記

ハロプロ関連の記事が主。後は将棋と猫を少々

りんご 10

それはリハの休憩の時だった。
としこのスマホに電話がかかって来た。

としこは答えながら、りんごを見た。
りんごもとしこを見る。

としこはやって来ると、
「りんご、ふくまちさんと言う人から電話」

「ふくまちさんって誰なの?」
としこは知らないと首を振った。

スマホを受け取ると出た。
「はい。元宮です」

相手は黙っている。
としこを見た時、

「葉月です」

葉月さん?!
葉月さん、明さんの妹さん。

今東京へ出て来ていて、会いたいと言う。
もちろん、りんごも葉月には会いたい。

リハが終わったら、今居る駅で待ち合わせる事にした。

何となくふにおちない、だいいちなぜりんごでは無く

としこに電話する?

それになぜとしこの番号を知ってる?

 

先日明の実家に挨拶に伺った時、葉月には会えなかった。
何でも都合がつかないとの事だった。

明の実家はすごい豪邸だった。

駅に着いて、改札口を出て辺りを見回したが、
それらしい人は見当たらない。
あの日に明と一緒に居る所を見たけど、ちらりと見ただけで、
顔はよく憶えていない。

ふと、りんごに近づいて来る女性に気がついた。
彼女は真っ直ぐにりんごの方へ来ると、

「元宮さん」と声をかけて来る。

座ってコーヒーを飲める店を探して、その店に入る。

葉月の第一印象は、落ち着いた優しそうな感じだった。

 

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コーヒーが来るまで、葉月はりんごと目を合わそうとしない。
そしてしばらく沈黙が続く。

やっとコーヒーが来て、お互いひと口飲んだ時、
葉月は顔を上げて、真っ直ぐにりんごの顔を見た。

「兄との婚約、おめでとうございます」

何だか、すごい他人行儀な言い方に聞こえる。
確かにまだ他人には違いないのだけど、

 

「・・・ありがとう」

またしばらく沈黙が続く。

りんごは気になった事を聞いてみた、

「あのう、なぜうちのとしこの番号を知ってるんですか?」

「兄に聞きました」
「じゃあ私の番号は知ってます?」
「兄から聞きました」

 

だったらなぜ、りんごに直接電話をしない?
なぜそんな回りくどい事をする?

 

 「だって直接電話するのは失礼かなって」

全然失礼では無い。

「だからとしこさんに」

だから、なぜりんごにしない!

葉月さんはりんごの事をアイドルだと

知ってるみたい。

でもりんごはあなたのお兄さんの婚約者なの。

明の実家に挨拶に行った時、帰る時の明の言葉を思い出した。

 

「葉月が顔を出さなくて悪かったね」
「なぜ謝るの?」

「葉月のやつ、りんごに会いたくないみたい」
「葉月さんは結婚に反対してるんですか」

明は首をかしげて、
「いや、それは無いと思うのだけど」


もし、葉月が兄の結婚に反対していて、それでりんごと
会いたくないと思っていたとしたら、
なぜわざわざ東京に出てきて会いに来たのか。

葉月は今度はじっとりんごの顔を見詰めて来る。

りんごはもうひとつ気になった事を聞いてみる。
「福町っていう名前は、明さんの苗字とは違いますね」
葉月はまだ独身のはずだった。

「わたし、母が父と結婚する前の姓を名乗ってるんです」

いまだに元の母親の姓を名乗るというのは、
どんな意味があるんだろう。


明の葉月に対する心情を聞いた時の事を思い出していた。
明は、葉月が可愛くてたまらないと、突然現れた妹の事を話した。

もしかすると、葉月もこの兄の事を好きなのかもしれない。
だとすれば、兄と婚約した女の事を複雑な思いでいるかもしれない。


りんごは、お兄さんの事を好きですか。と聞いて見たくなった。
しかし、口から出た言葉は違うものになった。

 

「葉月さんは、明さんと寝たの?」

 

続く