Dark blueの絵日記

ハロプロ関連の記事が主。後は将棋と猫を少々

りんご 11

「葉月さんは、明さんと寝たの?」

 

何かそんな気がして思わず口に出してしまった。

隣の男女のカップルが聞こえたのか、二人の方をちらりと見た。


葉月は、何とも言えない表情でりんごを見た。

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怒るでもない、驚くでもない、しいて言えば哀れみかも知れない。

 

「ごめんなさい。馬鹿な事を聞いて」

 

葉月は小さく首を振ると、
「その、案外見当外れでも無いかもしれないの」

 

葉月は冷えたコーヒーを一口飲むと、
伝票を手に取ると立ち上がった。
「出ましょう」

 

外に出ると、
「二人きりになりたいわ。あれなんか良いわ」
見ると、観覧車が見えた。

 

その球場の近くのシティアトラクションズの観覧車に乗る事にした。
葉月は、観覧車に乗って景色を見ながら、

 

「一度、わたしが大学に受かったご褒美にって兄と二人で
東京出て来て、お台場の観覧車に一緒に乗った事があるの」

葉月は懐かしそうに言った。

 

「本で読んだのだけど、このお台場の観覧車の頂上で、
キスしたカップルは絶対別れないってジンクスがあるって
兄に言ったの」

「それで・・・?」

 

葉月はおだやかな笑みを浮かべて、

「そしたら、兄はわたしを抱き寄せてキスしてくれたの」

「・・・・・」

 

「もちろん、おでこによ」

りんごは息を吐いた。

 

「そして『俺たちは兄妹だからどんな事があっても別れない』って」

 

「最高に素敵なお兄さんね」
りんごは心からそう思った。
そして、何時か必ず明さんとお台場の観覧車に乗ると誓った。


「それから兄の事が好きで好きでたまらなくなったの」
りんごはうなずいた。
「こんなに人を好きになったのは初めてだったの。
恋していたと言ってもいいくらいよ。
おかしいでしょ。兄妹なのに」

りんごは首を振った。

 

「兄と寝たのかと聞かれた答えは、それは無かったわ。
でも、抱かれたいと思った事はあったわ」

やはりとりんごは思った。


「前から兄の事は好きだったの。だから兄の近くの九州の大学に
行きたいというと一念で国立大学に受かったわ」

りんごには無理な事だと思う。

 

「何かと理由をつけて兄のマンションに通ったわ。
ある時、雷が鳴っている夜の事だった。
怖いから一緒の部屋で寝たいと言ったら、
兄は自分のベッドに寝かしてくれて、自分は下の
絨毯で寝てたの」

 

明がりんごに話してくれた事だと気がついた。

 

「兄がベッドに来てくれる事を願ってたのに、兄はすぐに眠って

しまったわ。私は全然眠れなかったの。

だからお手洗いに立った後に戻った時、

思い切って兄が毛布を被って寝てる所にもぐり込んだわ。
でも兄は眠ったままだったの」

 

「でも実は、お兄ちゃんは寝た振りをしてた」

「そうなの。って何で知ってるの?!」

 

「明さんが話してくれたの」
「あのヤローめ!」

葉月らしく無い口調に、思わずりんごは笑った。


「それで朝ごはんを食べてる時に、なぜ俺の寝てる所に
入って来たのか?と聞かれて飛び上がったわ。だから
寒かったから。ってごまかしたけど」

 

明に聞いた時、葉月の事を可愛いと思ったけど、
葉月の話を聞いた今も、そんな一途な葉月の事を可愛いと思う。

 

観覧車が頂上に達した時、

「りんごは、葉月さんの事が好きなってきたわ。別れたくないから、
お台場じゃないけどキスしてもいい?」

葉月は少し驚いてたようだけど、うなずいてくれた。
りんごは、葉月の頬にキスした。


最初は、りんごの事をライバル視して来る葉月に戸惑っていたが、
今は同志のように思えてくる。

 

お互い、同じ男性の事を愛してるから。
葉月なら何をしても許せると思う。

 

「結婚式は、りんごはお互いの家族とメンバー達だけでやりたいの。
だから葉月さんも来てくれますね」

「はい。元宮さんの」
「りんごって呼んで」

 

葉月は笑顔で、
「はずきも、りんごの事好きです。

兄との結婚式には必ず行きます」

 

最後に葉月の柔らかい手と握手して別れた。