Dark blueの絵日記

ハロプロ関連の記事が主。後は将棋と猫を少々

さゆと萌 その後 二

再生

 

 「わたしの手を取って起こして」
その声は、さゆには耳からで無くて頭の中に
聴こえて来た。

さゆが萌の側に這いよると、
萌は体を起こし顔を上げた。その黒焦げの顔から
見る見るうちに焦げた皮膚がバラバラと落ちていき、
萌の顔が戻っている。

萌が頭を振ると、焦げた皮膚はすべて落ちて
ピンクがかった皮膚の萌の顔が現れた。
それに燃え尽きた髪の毛も見る見る伸びて行く。

それを見たさゆは声もなかったが、
とにかく立つと、萌の手を取って持ち上げ立たせる。

萌はさゆの手をかりて立ち上がると手で全身を
払うと、全身の黒焦げの皮膚がばらばらと落ちて、
元の萌の体がきれいに再生していた。

救急車から降りた救急隊員は現場の消防士から話を
聞いていた、

「子供を助けた女の子は、七階から飛び降りて
全身を強打したようだし、
火が全身にまわって体が黒焦げになってたし、
心肺停止状態だった・・・」

消防士と救急隊員の2人が萌の倒れてる所へ行こうと
したがその足を止めた。

萌は二人が近づいて来るのが見えると、
「いけない!逃げるよー!」
さゆの手を取って走り出した。

消防士は、萌とさゆの二人がいきなり走り出したのを
見て呆気に取られていた。さゆはともかく、
焼死体のはずの萌がピンピンしてるのを見て
自分の眼を疑っているようだった。

救急隊員は、
「何だ?女の子は元気じゃないか」
消防士は首を振るしかなかった。


萌は消防士らが追いかけてこないのでしばらく
走った後足を止めた。

さゆは懸命に走ったので、はあはあと息をつきながら
萌の驚異的な超能力が信じられなかった。
萌が悪魔の娘。という事を思い知らされた。

そして全身が炎に包まれて黒焦げになった体がたちまち
再生されて元に戻ったけれど、着ていた衣服の方は
元通りとはいかないので、萌は生まれたままの姿だった。

「萌ちゃん、裸んぼだよ・・・」

それを聴いて萌は気がついてアハハと笑った。
さゆも力なく笑うしかない。

「さゆみお姉ちゃん、上着を貸して」
さゆはうなずいて着ていたパーカーを脱いで
萌に渡した。

素肌の上にピンクのパーカーだけを身に着けた
萌の姿を見て、

さゆはとても可愛いと思った。

 

二人はご飯を食べに行くどころでは無いのでそのまま
家に帰る事にした。

その夜は、さゆと萌そして沙絵と麻美の四人で和やかに
夕食を済ますと、
萌は昼間の大活躍でさすがに疲れたのか、早々に床についた。

萌が、さゆの手を握りながら眠りに落ちるのを見届けて、
隣に沙絵もやすらかに眠っているのを見ながら立ち上がる。

麻美に今日の火事の話しをする。
麻美は別に驚くでも無くうなずいた。

さゆは萌が全身炎に包まれて黒焦げになって
死んだと思ったら、たちまち体が再生して
元の体に戻った事を話すと、

「以前、萌のお料理を手伝って貰った事があったの。
その時萌が包丁で指をざっくり切った事があったのだけど」

さゆはうなずいた。

「相当は深く切って、血がピューー!って噴き出した
けど、萌は顔をしかめただけで切った指を見てたけで、
見たらたちまち血は止まり、傷がすぐに塞がったの」

さゆは大きくうなずいた。

麻美は少しの間さゆの顔を見ていたが、
「道重さん、そんな萌を見てどう思いますか・・・」

さゆは麻美を見てきっぱりと言った。

「たとえ、萌ちゃんが天使だろうと、そして
悪魔の娘。だろうとも、
私にとって萌ちゃんは萌ちゃんに過ぎないわ。
どんな事があろうとも、萌ちゃんを愛してるから」


あれから、数日後。
さゆは麻美に言った。

「麻美さん、わたし萌ちゃんに渡したいものがあるの」

麻美はさゆをじっと見ていたが、
「わかった。あれね」

さゆはうなずきながら、
「萌ちゃん受け取ってくれるかな」

「そうね。萌には責任を取って貰いたいしね。
本来なら萌から渡すものだけど、それは今出来ないしね」

「そう。だから私から渡す事にしたの」


続く。