Dark blueの絵日記

ハロプロ関連の記事が主。後は将棋と猫を少々

ALL・OR・ NACCING


私は自宅のアパートに帰り着いて、
ドアを開けた。
「お帰りなさい!」
元気な声がした。


「ただいま・・・」
言いかけて、私はハッと我にかえった。
「失礼、部屋を間違えたみたい」


外へ出てみたが、確かに自分の部屋だった、
女房と子供はもういないはずだった。
首を捻りながら、玄関先の女性に、
「あなたは、いったい誰なんですか・・・?」
彼女は、白いエプロンをつけていた。


「あの〜、私は・・・」
「あれえ?、あなた、誰かによく似てるけど」
「はい。私はご注文のクローンです」
「やっぱり、そうですか」


すっかり忘れていたが、ずいぶん前にクローンを
注文していたのだ。
「夕食出来ました。それともお風呂になさいます、
それとも・・・」
「も、もちろん、ご飯にしてください」


「良かったぁ。外は寒かったでしょ暖かいシチューを
 作りましたから食べてください」
私はテーブルについて、シチューを食べた。


そのシチューは北海道の新鮮なミルクと雄大な大地から
出来たジャガイモの味がすると、私は思った。そして、
なぜかとても懐かしい味だと感じた。


「お味はどうですか・・・」
思わず、涙がこぼれ落ちた。
「本当に美味しいよ・・・こんなに美味しい
シチューは 生まれて初めて食べた。
会社をリストラされた上に女房と子供にも
逃げられて、夢も希望も無くなっていたけど、
あなたみたいな優しいひとにこんな美味しいものを
食べさせてもらえるなんて」


「良かったァ。北海道から送ってもらった美味しい
野菜で作ったんですよ」
彼女は、心が洗われるような笑顔を見せて言った。


私が風呂から上がると、彼女は私の前にきちんと座ると
もじもじしながら言った。
「私は24時間レンタルです。その間、あなたのどんな
 要望にもお答えします」


恥ずかしそうにうつむいている彼女に、私は笑って言った。
「明日はバイトも休みだ。一晩中ゲームでもして遊ぼうか」
「はい!、そうしましょうか」


彼女は、嬉しそうな笑顔で言った。



        終わり




この話は、2002年10月に投稿したものを修正加筆したものです。