Dark blueの絵日記

ハロプロ関連の記事が主。後は将棋と猫を少々

クローン・リカ 6


あれから一週間が過ぎた、 
ただひとつのこと以外は何も考えられない。
あんなに毎週楽しみにしていたハロモ二。も、
録画はしてあるが、いまだに観ていないし、
観る気も起きない。



歌番組で、梨華のユニットを観ても、
なんの感慨もない。
俺の頭の中にあるのは、梨華の分身でもある、
クローン・リカのことだけ。


後悔と自分の無力さを苛んでいた。


そんな折、先輩から電話が掛かってきた、


「事情は聴いた・・・すまん」


いまや、先輩を責める気力も失せた。
ただただクローンがどうなったのか、それだけが
気がかりだった。


「教えてください・・・あのクローンは
今どうしているのですか」


俺はしぼり出すように問いただした。


先輩はしばらく沈黙していたが、話してくれた。


「ハッピー・ドリーム。のクローンをレンタルする
事業は思ったほど成果が上がらなかった、
そのうち世間の噂にも上り始めて、非難の声も
上がりはじめたので、この事業から撤退することに
決まった。
それで、残されたクローン人間の始末なのだが、
正常なクローンの何体かは、後で利用価値があると
いうことで残されることになったのだが、
しかし・・・残りのクローン、特に不良品のクローンは、廃棄処分になるそうだ・・・」


廃棄処分!?


俺は頭に血が上って、思わず大声を上げた。


「なんの権利があってそんなことが出来るのですか!
まるでクローンは産業廃棄物みたいじゃないですか!
クローンだって人間じゃないですか!
一緒に生活した俺にはよくわかる、赤ん坊だった、
クローン・リカがだんだんと成長し、
はいはいを始め、やがて歩き始め、言葉を喋る
ようになる、彼女はどこから見ても人間なんだ!


生意気だけど可愛かったマリリン、
男前の悪魔のよしこ、
そして、リカ。
そんな彼女たちを廃棄処分する権利が誰に
あるんですか!
自分たちの利益のためだけにクローンを作り出し、
邪魔になれば、棄てるだけ・・・。
先輩もそんな奴らの仲間なんですか、
先輩だけはそうじゃないと、信じていたのに」


「・・・・」


俺は電話を切った。


絶望感に苛まれていた、
クローンのリカが廃棄処分になる、


なぜあの時、リカを連れて逃げなかったのか、
なぜあの時、リカを守って戦わなかったのか、


すべて俺の無力のせいなのだ。





未来への扉


俺が、腑抜けのようにうつろな日を送っていたある日、
また先輩から電話が掛かってきた。


「お前に会わせたい女性がいる、
ぜひ会ってくれないか」


「誰なんですか、その女性は」


石川梨華さんだ」


「・・・結構です、会いたくないです」


「どうしてだ、あんなに好きだったじゃないか」


「俺は、もうヲタを辞めたんです、
ハッピー・ドリーム。や梨華などには
まったく興味が無いです」


「とにかく、会うだけ会ってくれないか、
俺もお前のために最大限の努力をした、
それだけは認めてくれ、頼む・・・」


先輩は、今すぐ車で近くの公園に連れて
行くからと言って電話を切った。


迷ったが、行くことにした。


公園のベンチに腰掛けていると、
先輩の車が公園の道路際に止まった。
誰も降りてこないので、そちらへ歩き出すと、
車のドアが開いて、先輩と女性が降りてくる。
先輩は車の側で立ち止まり、女性だけが
俺に向かって歩いてくる。


なんだか、やけにたどたどしい歩きかただった。


彼女は、ピンクの服を着て白い帽子をかぶっていて、
顔はまだよく見えない、
突然気がついた、そのピンクの服は俺がリカに
買ってやったものだった。


近くまで来て、顔がはっきりわかるようになる、
その顔はまぎれも無く石川梨華だった。


梨華は側まで来ると、俺の首に腕をまわしてくる、
そして言った、


パパ!


驚いて顔をよく見た、雪のように白い肌をしていた。


彼女は、クローン・リカだった。


先輩の方を振り返って見ると、先輩は車の中に戻り
エンジンをかけると、走り去って行った。



       終わり。