Dark blueの絵日記

ハロプロ関連の記事が主。後は将棋と猫を少々

永久の愛 5


翌日の朝、あゆみは目覚ましの音で目を覚ました。
時計を見ると、午前8時前だった。
体を起こすと、自分が何も身につけてないのに気がつく。
横には梨華が同じような姿で眠っていた。
気配で梨華も目を覚ました。


まぶしそうにあゆみを見ている梨華に、
「梨華はまだ寝てればいいわ。私は今日は
大阪で新曲のイベントがあるから、これからすぐに
家を出ないといけないの」
「そうなの、大変ね。私も起きるわ」


あゆみはベッドから降りると、朝の寒さに震えながら
下着をつけ服を着る。
鏡台に座り、手早く化粧をする。
そんなあゆみを梨華はまだベッドの中から見つめている。
あゆみは時計を見ると、
「大変もう時間がないわ、すぐに出ないと」
あゆみは急いで身支度を整えると、ベッドの梨華に
近づくと、


「じゃあ、行くわね」
そう言って、梨華のおでこに唇をあてた後、
部屋を出て行った。
「行ってらっしゃい・・・」
梨華はまだ昨夜の夢のような出来事の余韻を
噛み締めるようにシーツを握りしめていた。



それから一ヶ月ほど立ったある日、あゆみから
梨華に電話が掛ってきた。


「あ、柴ちゃん〜どうしてるの、早く会いたいなぁ」
梨華ちゃん、おととい会ったばかりじゃない』
「おとといなんて、遠い昔よ〜恋してると毎日
会いたいものなのよ。もう毎日夢心地よ」
『あ〜熱い熱い、梨華ちゃん、誰に恋してるの』
「決まってるじゃない。あゆみによ」
『もう、梨華ちゃんカップルじゃないんだから〜
あっ、もう私達はカップルなのね・・・』
「そうよ、私の恋人はあゆみ」


あゆみは、ゴホンとせき払いをすると、
『明日、梨華ちゃんのお誕生日だね、
どお、一緒に銀座にでも出かけて何か
プレゼントを買いに行かない』
「ホントに!柴ちゃん、ありがとう〜」
梨華は嬉しそうな声を上げた。


『じゃあ、明日銀座の三越の前で待ち合わせ
ということで良いわね。私は地下鉄で行くからね』
「うん、わかった」
『じゃあ、切るね』
あゆみが電話を切ろうとした時、


「あっ、柴ちゃん!」
『な〜に?梨華ちゃん
柴ちゃん、今私すごく幸せだよ・・・」
梨華ちゃん・・・私もだよ』


それが、あゆみとの最後の会話になった。


翌日、あゆみは昼間に用事があって、梨華とは夕方に
待ち合わせすることになっていた。
ラッシュとかさなってしまうが仕方ない。


地下鉄日比谷線に乗ったあゆみは、梨華の待つ
地下鉄銀座駅へ向かっていた。


すでに梨華は、銀座駅近くの銀座三越の前であゆみを
待っていた。


霞ヶ関駅で、その男はあゆみのいる車両に乗って来た。


帽子を目深にかぶり、目立たないジーンズと灰色の
ジャンパーを着て、背中には重そうなリュックサックを
背負っていた。



夕方のニュースを放送していた各局のテレビが
突然、アナウンサーの緊張した面持ちとともに
臨時ニュースを流し始めた。


「ただ今入ってきた報道によりますと、
今から20分ほど前の、午後5時50分頃、
東京の地下鉄の車両で大きな爆発が起こった
模様です!」

すぐに、次の原稿が届けられる、


「地下鉄の爆発は、地下鉄の有楽町、日本橋、それに
銀座と三ヶ所の各駅の車両内で同時に起きた模様です!

目撃者によると、地下鉄の車両は爆発で窓が吹き飛び、
火災が起きて焼け爛れているそうです!

ラッシュ時で満員の車内や駅構内では、多数の死傷者が
出ている模様です!」


 その時、銀座三越の前であゆみを待っていた梨華の前を
サイレンを鳴らしながら、何台ものレスキューの
消防車と救急車が通り過ぎて行った。


行った方向を見ると、黒い煙が高く上がっているのが見えた。
辺りのほとんどの車は止まっていて、その合間を何台もの
消防車、救急車、パトカーがサイレンを鳴らしながら走り
まわり、また大勢の人間が煙の上がっている方向に走って
行き、騒然となっていた。
その方向とは、すぐ近くの地下鉄銀座駅だった。
梨華から見えなかったが、地下鉄の出入り口から
もうもうと黒い煙が噴出していた。


様子を見に行きたいが、あゆみが来るかもしれないと
梨華はその場を離れることが出来なかった。


その銀座駅の方向とは別に、そう遠くない方向に
2ヶ所に黒い煙りが上がってるのが見えていた。
銀座駅とほぼ同時に爆発が起きた、地下鉄有楽町、
日本橋の二つの駅だった。


梨華は不安に駆られながら、時計を見ながらあゆみを
待ち続けるしかなかった。


梨華は、泣きそうになりながら、


柴ちゃん、どうして来てくれないの、早く来て・・・」



梨華は、いくら待っても来ないあゆみをいつまでも
待ち続けていた。



           

         終わり