Dark blueの絵日記

ハロプロ関連の記事が主。後は将棋と猫を少々

悪魔との契約 最終章 四

猫の冒険

 

 決行の日の早朝、まだ暗い時間に小鳩は、
いつも神子と一緒に休む寝室で眼が覚めた。
時計は午前4時だった。

シャワーを浴びて、全身を念入りに洗う。
せめて綺麗な体で死にたい。

バスタオルで拭きながら裸のまま自分の部屋に入り
灯りを点けようとした時、何かが居る事に気がついた、
暗い部屋の中にポツンと眼が光る生き物がいた。
一瞬全身が粟立つように震えたが、灯りを点ける。

それは、猫だった。全身真っ黒い猫だった。
細いしなやかな体で、長い黒い尻尾を振りながら
小鳩を見詰めている。
その黒猫はこれまで見た事が無かった。

猫は嫌いだった。

「なによ。何処から入って来たの」

ふと、ベランダへのドアが少し開いているが見えた。
安堵の息をつくと、

「蹴とばされない内に帰りなさいよ」

黒猫は少しの間小鳩を見詰めていたが、体を翻して
ドアをすり抜けてベランダへ出て行った。

すぐにドアを閉めて鍵を掛ける。
20階とはいえ、いつも用心のため鍵を掛けていたのに。

ふとあの黒猫はまったく鳴かなかったなと気がつく。
あの猫とは初対面だからかもしれない。


夜が明けたので、綺麗な下着を着けると動きやすいように
上下ぴったりした服を着け上からホームセンターで買った
作業着を着ける。

そして持って行く物を揃える。殺されるにしても
只では死なないために、武器になる物をという事で
よく警備員などが持っている警棒を入れて置く。
使う時に長く伸びるやつだ。

かなりの荷物を抱えてエレベーターで地下の駐車場へ
降りてロードスターに乗り込む。

首都高へ乗り入れて六本木を目指す。

この神子が買ってくれた車で一度だけ二人で

海を見に行った日の事が脳裏をよぎったが、

頭を強く振ってそれを振り払う。

首都高を降りて、そのビルの近くに到着して、近所のコイン式の
駐車場に停める。
ビル内にも駐車場があったが、外の駐車場の方が自由が利く
だろうと思った。
おそらく、戻って機械にコインを入れて帰る事は無いかもしれない。

そしてロードスターに別れを告げて駐車場を出た。
ふいにかすかに車のホーンが鳴ったような気がして
思わず振り返った。ロードスターは静かに小鳩を見送っていた。
たぶん何かの幻聴だろうと思う。


ビルの入り口に向かう。

2階のオフィスの受付カウンターへ行き、前もってネットで
調べて置いた別の会社の名前を出し、
自分は水道屋で水漏れの修理の為に来たと告げる。
以前水道屋でアルバイトをした事があり、その水道屋
身分証明書をPCで偽造した物を掲示する。

詳しく調べられたら露見するのだけど、その時はその時だと
腹をくくる。
幸い、それが通りビル内の通行許可証を貰う事が出来た。

それからエレベーターで一気に屋上の展望台まで上がり、
それから階下へ降りて、SaturnNetの事務所を探す事にした。

SaturnNetの事務所らしきオフィスらしき部屋は見つからず
困っていると、通りかかった事務服の女性にSaturnNetの事務所が
何処かと尋ねたが、女性は首をかしげていたが、

「ああ、もしかしたらサターン通信さんですか?」

それです!と答えたら、ある部屋のドアを指差した。
そのオフィスのドアには会社名も何も書かれていない。

小鳩は、そのドアを叩いた。


つづく