Dark blueの絵日記

ハロプロ関連の記事が主。後は将棋と猫を少々

悪魔との契約・エピローグ

猫の受胎

 

久しぶりの会社の皆は、
なぜだか小鳩に優しかった。

そして、定時になると小鳩は皆に頭を下げて
会社を出た。

家までゆっくり歩いて行った。

部屋には神子がいない事がわかっていた。
まだ夕日が差して明るい部屋に入った。

にゃ~ん。とあの黒猫が部屋にいた。
やって来て、小鳩の足に体を擦りつける。

座った小鳩の膝に前足を掛けて乗って来る。
小鳩の眼をじっと見詰めて、またにゃ~んと鳴いた。

気がついた、その鳴声が神子の声に似ていることに。

「神子ね。お前は神子ね。神子が戻って来たのね」
小鳩は黒猫を抱きしめた。

 

アヤカの元へ神子がやって来た。

「いらっしゃい。どうやら判決が出たようね」

「ええ。やはり人間になりたいと言う悪魔は
許されないわけ。下天落ちが決定よ。
でも、百年間の執行猶予がついたけど」

 

「よかったわ。これからどうするの?」

「もう地球から追放よ。百年間銀河系の惑星

でお勤めよ」

「そうなんだ。じゃあ人間のあの子、小鳩とも会えないのね」

「私自身は会えないけどね。小鳩との約束があるから
私の分身を小鳩の元に残したいの」

「ふ~ん、あなたの分身をどうやって残すの?」

「それは、アヤカはガブリエル大天使の事は知ってるよね」

「もちろんよ。ガブリエル大天使は私達の大先輩で
あの『受胎告知』で有名な、トップクラスの大天使よ」


ガブリエル大天使と言えば、聖書によると、聖母マリアの元に

降り立って、マリアが処女のままイエス・キリストを身籠った事

を告げる事を、『受胎告知』と言うのだけど。


「だいたい、セックスの経験の無い処女のマリアがなぜか
エスを懐妊するというのがおかしいと思わない?」

「そうだけど、そこは偉大な神の仕業じゃないの」

「それが違うのよ。私は二千年前にガブリエル大天使に聴いたの

だけど、
実はねガブリエル大天使こそ、マリアを妊娠させた張本人なのよ」

「はああああああ?!ってどういう事?」

「ガブリエル大天使はマリアの腹に子種を仕込むよう密命を
受けてマリアの元に降り立ったのよ」

「ってガブリエル大天使はマリアとセックスをしたの?!」

「ノーノー!ガブリエル大天使は、セックスなんてはしたない行為を
するわけ無いじゃない。だいいち大天使は男でも女でも無いし」

「じゃあ、どうやってマリアを妊娠させたのよ」

「それは大天使の血液に秘密があるの。大天使の血液に男の精子
同じ成分があって、その血をマリアに飲ませればマリアの体を
巡って子宮の中の卵子に入って懐妊させるという寸法なの。
ガブリエルは赤ワインに自分の血を入れてマリアに飲ませたの」

「なるほどね。でも、それと神子が小鳩に分身を残す事と
どんな関連があると言うの?」

「私はガブリエル大天使に習って、マリアにした事と同じ事を
小鳩に行なったの。わかるでしょう」

アヤカは少し考えていたが、
「あっ!わかった!神子は小鳩を妊娠させるつもりね」

「そうよ。私達悪魔の血液にも精子と同じ成分が入ってるのよ。
それで小鳩に私の血を飲ませたの」


神子はアヤカを見て、
「小鳩は初めて愛した人間の女の子よ。
彼女も愛してくれた。サターンに逆らったせいで
別れる事になってしまったからには、どうしても
私の分身となる子供を小鳩に産んで欲しかったの。
悪魔の遺伝子は強いから子供は99%私の遺伝子を
引き継ぐ事になるわ」

アヤカはうなづくと、
「ガブリエル大天使は、男の子のイエスをマリアに産ませた
けど、私の勘では小鳩は女の子を産むような気がするわ。
小鳩は一生あなたの遺伝子を受け継いだ女の子と幸せに
暮らせると思うな」

神子はアヤカに近づくと抱きしめた。
「私はサターンに会う事を禁じられてるけど、
アヤカが小鳩と子供に会う事があったら、二人を
見守ってあげて」

アヤカは大きくうなづいて、
「もちろんよ。あなたが羨ましいわ。愛する人に自分の子供を
産ませるなんて、あなたは悪い子ね」

神子は顔を上げてアヤカを見て、
「あなたも昔好きな人間の女の子がいたわね。
YUという子。あの子に血を飲ませたりしたらダメよ」

 

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 アヤカは咳き込むと、
「本当にあなたは悪い子ね。あの人間の女の子は今も好きよ。
もし今あの子が私の元に現れたら、どうなるかわからないわ」

アヤカはもの憂げに天上を見上げた。
神子はそんなアヤカを抱きしめた。


終わり。