Dark blueの絵日記

ハロプロ関連の記事が主。後は将棋と猫を少々

悪魔との契約 最終章七

猫は妖怪


「悪魔は、絶対に人間を愛してはいけないのよ」

悪魔と人間は愛し合ってはいけない、
小鳩はその意味を測りかねていた。

「サターンが違反の第一に上げるのが、
悪魔は人間に愛情を持ってはいけない。
すなわち悪魔は人間と結婚する事を禁じる。
それを神子は犯そうとしてるの。
それでサターンの怒りをかったのよ」

「なぜ、悪魔と人間は愛し合って結婚してはいけないの」

「考えてもごらんなさい。結婚すると悪魔と人間でも
子供が生まれるのよ。悪魔の血を受け継いだ人間が
何人も地上に現れたら大混乱に陥るわ」

「それで神子は人間を愛していると言うの」

「そうよ。サターンは天上界に人間を入れたく無いの」

「わからないわ。神子は誰を愛しているというの」

「とぼけないでよ。あなたに決まってるじゃない」

 

小鳩は呆気にとられてアヤカを見て、
「嘘よ・・・こんな私なんかを愛してるはずが無いわ」

「嘘じゃないわ。確かにあなたは人間として変わってるわ。
そこが神子の波長に合ったのかもね。
神子はね、サターンに何と言ったと思う」

小鳩はわからないと首を振った。

「自分は人間になりたいから地上へ落として欲しい。
と願い出たの。元々神子はこの悪魔界に自分は合わないと
言っていたわ。他の悪魔との付き合いも避けていたし、
友達と言えるのは私ぐらいだったし」

小鳩は、そんな神子の事は初めて知った。

「神子はあなたと言う人間に出会って、あなたの隠れた
魅力を知りえたのよ。これは私の想像だけど、悪魔界に
飽き飽きして、人間としてあなたと暮らしたいと
考えたのだと思うの」

「私は神子の事が好きよ。神子がいなくなって辛くて苦しいの。
でもそれが愛情だとは思えない。神子は私に色々なものを
与えてくれた。でも私は神子に何も与えていないわ」

「あなたは神子に勇気を与えたのよ。サターンに逆らうなんて
普通の悪魔は恐ろしくてとても出来ないことなの。
あなた達は間違いなく愛し合ってるのよ。

でもあなた達は女の子同士だから子供は生まれないけどね」

 

神子が自分の事を愛してるなんて信じられない。
そして自分は神子を本当に愛してるのかと自問したが
まったく自信は無かった。

ただ、このまま神子と別れるのは死ぬほど辛い事だった。


「ここで私が大暴れした事がサターンに知れたら
神子にとって不利になるの?」

アヤカは黙っている。 それは肯定の意味だと思った。

「もし神子が査問委員会で有罪となったらどうなるの?」

「もしそうなれば、神子はすべての身分を剥奪されて、
下天に落とされるの」

「下天とは何?」

「人間界にも悪い事をして死ぬと地獄へ落ちると聞いた事が
あるでしょ」
小鳩はうなずいた。

「悪魔や天使が下天に落とされる事に比べれば、人間の地獄なんて
天国みたいなものね。

下天には、下等な悪魔や、魑魅魍魎の巣窟なの。こいつらは
天上界の神や天使達から蔑まれているのを恨みに思っていて、
罰を受けて下天に落とされた上級悪魔や天使達を嬲り者にするの。

建前として、下天に落ちた悪魔や天使は妖怪達の指導者として
監督という立場だけど、そんな規則や戒律は下天では
あって無きが如くでやりたい放題で特に、女神やニンフが
落ちてくれば寄ってたかって性の慰みものになってしまうの
それが何千年何万年も続くのよ・・・」

小鳩は難しい言葉はよくわからなかったが、下天に落とされた
神子が、つまり化け物みたいな連中に何万年も汚されてしまうのを
理解して体が震えた。 

「それはすべて私が原因なのね」

アヤカは黙って小鳩を見詰めた。

「私さえいなければ、神子は下天に落ちる事は無いのね」
小鳩は後ろに手をまわして、腰のサックからナイフを取り出した。

「私さえいなくなれば、神子は救われるんだ」
小鳩はナイフの切っ先を自分の首に当てた。

「やめなさい!」

眼を硬く閉じ、ナイフを首に突き上げようとした。

その瞬間、ナイフは弾ける様に手から飛んで、数メートル先に落ちた。
先ほどの女がそのナイフ拾って部屋から出て行く。

茫然と床に座り込んで小鳩に、アヤカ近寄ると肩に手をやり、

「あなたが死んだら、一番悲しむのは神子なのよ。
あなたは神子を救おうと死んで楽になるかもしれない。

でも、悪魔の神子は死ぬ事が出来ないのよ。
そのまま永久にあなたの事を背負って生きて行くのよ」

小鳩の瞳から涙がこぼれ落ちた。

「神子のために生きなさい。それがあなたの努めよ」


アヤカは男性を呼ぶと、小鳩へ、
「あなたはもう帰りなさい。何でここへ来たの?電車?」

車で来たと言う。
アヤカはうなずいて、
男性に小鳩の車を運転して送りなさいと言う。

小鳩は倒れている2人の男が運び出されて行くのを見て、
「ごめんなさい。あの二人は大丈夫なの」

「大丈夫。一応はあの二人は悪魔の使徒なのよ。
明日になれば回復するわ。それに人間に、まして女に
やられたなんて恥ずかしくて言えないわ」

男性に、
「下の階の喫茶店であの子にお茶を飲ませて待って居て」


アヤカは小鳩が出て行くと、
スマホを取り出して操作して、サターンのアカウントへ
LINEで呼び出す。


「お久しぶり。元気?」

『ああ。ぼちぼちやな。
たまには飯食いにいかへんか』

「今度ね。例のKの事なんだけど」

『あの娘には手を焼いてるよ』

「そうなの。口を出すわけじゃないけど、
今日あたり、一日でいいから家へ
帰してやったら?」

『う~ん』

「文字通りの鬼検事に毎日のように責められてるのだから
息抜きに今夜だけでも帰してやったら」

『アヤカはあの娘とは古い知合いやったな。
わかったよ。今夜だけなら』

「ありがとう。今度六本木に飲みに行きましょ」

『この件が片付いたらな』

 

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アヤカは、下の喫茶店「Hell」に降りて行く。

アヤカは、ブラック。とコーヒーを注文すると、
小鳩に、
「今夜はゆっくり眠りなさい。きっと良い事があるわ」


小鳩らを送り出した後、ゆっくりとコーヒーを飲んでいると、

スマホに電話がかかって来た。
出ると、Kからだった。

『サターンに今夜だけ家に帰って良いと言われたわ。
あなたのおかげだって。ありがとう』

「よかった。そうそう、今日支所にあの子が来たわよ」

Kは驚いていたが、
アヤカは小鳩が大暴れした事や、死のうとした事は
言わなかった。

『あの子、何て言ってた?』

「神子が急にいなくなって死ぬほど心配してるって。
今夜帰ったら、慰めてあげて」

 

つづく。