Dark blueの絵日記

ハロプロ関連の記事が主。後は将棋と猫を少々

大天使

後光


かみこが無謀にも車がひっきりなしにかなりの速度で
通行している片側四車線の広い車道を突っ切ろうと
してるのを見て小鳩は悲鳴を上げて両手で顔を覆った、

しかし、何の物音がしないので恐る恐る見ると、
奇跡的な光景が目に飛び込んで来た。

上り下りの片側四車線の何十台もの車が一斉に
止まっていた。

道路の真ん中に、横断する形に丁度車一台分のスペースが
出来ていて、そのスペースの中をかみこが歩いて渡っている。

かみこは取り立てて急ぐ様子も見せずに、その広い道路を
渡り切っていた。

一種異様な光景だった。

普通信号も無い道路にいきなり人が飛び込んで行ったら、
急ブレーキとクラクションの音が一斉に鳴り響くはずだ。
それがまったく何の音もしなかった。

かみこが渡ってしまうと、車は静かに走り出して行った。

かみこは向かいの高層ビルの中に入って行った。
小鳩は少し離れた信号のある交差点に向かった。

あれは何だったのだろうと考え込んでしまう。
まるで、かみこを通すために何十台、何百台もの車が
示し合わせたように止まってしまったのは奇跡としか
思えない。

それは、ほんの十数秒の短い出来事だったので歩道を
歩いてた人のほとんどは気がついていなかったようだ。

しかし、近くの高層ビルの十五階のレストランで食事を
していた一人の女性が目撃していた。

突然通行していた多数の車が、すぅーと止まり、
まるで割れるように出来たスペースを渡っている少女を
目撃した女性はその少女が普通の人間では無い事を
直感していた。

「何を見ているの?」

向い合せに食事をしていた憂佳がアヤカに聞いた。

アヤカは首を振ると、
「何でもないわ。ただ少し珍しい光景だったわ。
たぶんあの子は人間では無いわ。もしかすると
私達の仲間かもしれないわ」

「その仲間って、私も入れて?」

アヤカは首を振って、
「違うわ。憂佳は普通の人間だから」

「ふ~ん」と憂佳はあまり気にもしないで食事を続ける。

二人は食事を続けた。
憂佳が、
「ねえ、この後どうするの?」
「そうね。この上のホテルを予約しているの。
ちょっと休んでいかない?」

「そう。その、ただ休むだけ?」
アヤカは笑って、
「もちろん違うわ。知ってるくせに」

その時、かみこはその十五階のレストランの入口に
着いた。そこが目的の場所だとわかっていた。

入ろうとした時、制服の男に止められる。
「ここは会員制のレストランです。会員以外のお方は
入れません。会員証か会員の紹介状を・・・」
そう説明していたらその少女は、ふっといなくなっていた。
あれ?と辺りを見回したが見失ってしまう。

アヤカは出入口の見える場所に座っていたが、
一人の少女が自分に向かってやって来るのが見えた。

その白い服の少女は、真っ直ぐにアヤカの方を見て
ぐんぐんと歩いて来る。

すぐ近くまでやって来て立ち止まる。
憂佳もアヤカの視線に気がついて振り返って少女を見る。

アヤカと少女は対面して向かい合い、見詰め合う。

その少女は腰を降ろし、片膝を床につくとアヤカの方へ
手を差し出した。

アヤカも自然に手を差し出した。
少女はその手を握ると、その甲に唇をつけて口づけをする。

憂佳が不思議そうに二人を見まわした。

少女は顔を上げてアヤカを見ると、

「あなたは、大天使様ですね」

アヤカは、それに対して否定はしなかったが、

「なぜ、わたしが大天使とわかったの?」
かみこは、
「このビルを見たら、天から一筋の光がこの階の窓へ
差しているのが見えたからです」

その時、入り口を見張っている制服の男が無断で
入り込んだかみこを、ようやく見つけて排除しようと
やって来た。

かみこの腕を掴もうとした時、アヤカがその男に
向かって手の甲で払うようにして振り上げた。
『来るな。向こうへ行け』と威厳を持って命令
するように睨みつけた。

男はびくっと動きを止め、戸惑っていたが
アヤカがもう一度手で払うようにすると、
すごすごと立ち去って行った。

アヤカはかみこに向き直ると、

「それで、あなたはこのレストランに入って来て、
私の事がわかったみたいに、真っ直ぐに私に向かって
来たわね。どうして私が大天使だとわかったの?」

かみこは、アヤカの上方の空間を指差すと言った。
「それは、あなたの頭に輝く後光が差しているのが見えたの。
だから、あなたが大天使だとわかったの」

それを聞いた憂佳が、さっとアヤカの頭の上を
見たが、もちろん彼女には後光は見えない。

アヤカは別に後方を振り返りはしなかった。
地上へ降りている時は後光のたぐいは、
人間には見えないようにしているのだけど、
それが見えるこの少女は普通の人間では無いと
言える。

「あなたはさっきこのビルへ来る時、道路を横断するために
全ての車を止めてしまって渡って来た女の子ね。
どうやって車を止めたの?」

「それは・・・車がとまって。と念じていたのだけど
まさか止まるとは思わなかったのだけど」

アヤカは、まさに悪魔の仕業だと感じた。

「あなたの何者なの?名前を聞かして」

「わたしは、かみこ。と申します」

「かみこ。ですって。あなたの母親はもしかして
小鳩さん」

「はい。そうです。小鳩はわたしのママです」

「それでわかったわ。あなたの顔に見覚えがあるわ。
それでわたしに会いに来たのはなぜなの」

「私をこの世に生み出したマザーは、大天使だと
ママに教えられたのです。それで大天使のマザーに
ひと目会いたいと、あの光の差しているここに来たのです」


続く。