Dark blueの絵日記

ハロプロ関連の記事が主。後は将棋と猫を少々

角度


しばらくして、ようやく入り口のドアが開いて山口が
姿を現した。
山口は私の血が付いた頭の包帯を見ると、すぐに
携帯電話のようなものを取り出して、
「すぐに10階に医者を寄こしてくれ」
と連絡を取る。

そしてさゆの方を見ると、
「さゆみ様は大丈夫ですか」
さゆはうなずくと、
「私は大丈夫。友男さんが上になって庇ってくれたの」

やがて医者が来て私の治療を始める。
傷口を消毒して包帯を巻く。
「立てるか」
と医者が聞いたので、
「立てますよ。多少頭がずきずきするけど」
「では痛み止めの薬を置いておく」

立ち上がった医者に山口が声をかけた、
「爆発した8階の者はどうなった」
医者は眉をひそめると小さく首を振った。


やがて何人もの男達が部屋に入ってきてこの10階の
被害状況を調べていた。
その間私とさゆは居間のソファーに座っていた。
さゆは、気遣うようにぴったりと私に寄り添っていた。
しばらくして山口が二人の前に来て、

「一番被害の大きかったトレーニングスタジオだが、
幸い天井が落ちるような事は無い見込みだ。
しかし、当分あのスタジオは閉鎖することにする。
他の部屋は被害はほとんど無かった。
だから、さゆみ様には引き続きこの部屋に住んでいただく」
そう言うと山口は出て行った。

私は肩をすくめると、
「上と下で爆発があったというのに安全な場所に
避難もさせず、ご親切なことだ」
はき捨てるように言うとさゆを見た、
さゆは私の肩に頭をつけると、
「私は友男さんと一緒にいられるならどんな所でも
いいわ」
私はそんなさゆの肩を抱いた。

一発目のミサイルは8階の小さいトイレの窓から
飛び込んで中で爆発して、8階にいた人間を全員
死亡させた。
二発目のミサイルは屋上で爆発した。
幸い、非常に浅い角度で着弾して爆発したので
爆風はほとんど上に抜けて、私とさゆのいた
10階の天井を破ることなく、屋上に少し穴を
開けただけですんだ。

もう少し深い角度で突っ込んで来て、天井を突き抜けて
爆発したならば、私とさゆの命は無かっただろう。
ミサイルが超小型だった事と、コンピューターなどの
制御装置を積んでいたため炸薬が少なかったのだ。